■成長戦略



ワコム<6727>は、4ヶ年の中期経営方針「Wacom Chapter 3」(2022 年3 月期〜2025 年3 月期)に沿った取り組みを推進しており、2023年3月期は2年目となる。



「Wacom Chapter 3」では、「ライフロング・インク」のビジョン※を継承するとともに、これまでの取り組みをさらに発展・進化させるべく、改めて「5つの戦略軸」を設定した。その実行に当たっては「6つの主要技術開発軸」を定め、コーポレート技術ロードマップとして運営し、具体的な価値提供と持続的な成長につなげる方針である。また、コーポレート・ガバナンス改革等を通じた経営の質の向上、同社独自のアプローチによる社会・コミュニティへの関わりにも取り組む方針である。



※「お客様と社会に対して、ワコムの技術に基づく『人間にとって意味のある体験』を長い長い時間軸で、ご提供し続けていきます」というもの。





1. 5つの戦略軸の設定

(1) テクノロジー・リーダーシップ

引き続き、同社の提供価値の源泉である技術革新に注力し、圧倒的な技術優位を維持・展開していく戦略である。クリエイティブ(デジタルコンテンツ制作)や教育分野をはじめ、各種ワークフローDX(行政窓口手続き、書類申請、業務フローでのPDF 書き込み、電子投票等)への寄与、様々な最新機種やデジタル文具等への搭載、スマートホームソリューションへの組み込みなどに取り組んできたが、今後もハードウェア、ソフトウェア、サービスにまたがる技術開発により、最高の「ペンと紙とインク体験」を提供していく考えだ。



(2) コミュニティ・エンゲージメント

同社だけではなくコミュニティ(パートナー)と深く連携し、価値ある体験を形成していく戦略である。具体的には、ピクシブ(株) との共同による大規模オンライン作画フェスの開催※、教育分野などで広く導入されているChromebook 対応認定商品やアンドロイド対応、リモート環境での創作ワークフローの構築などで連携を図っている。



※直近では、2022 年6 月18 日と6 月25 日に、世界中のクリエイター約1 万人が参加する大規模オンライン作画フェス「Drawfest(ドローフェス)」の3 回目を共同開催した。





(3) 新しいコア技術、新しい価値創造

既存のコア技術に加え、新しいコア技術をもとに新しい価値を創造する戦略である。既存技術と親和性の高いAI、XR、Security の3 分野を選択し、新コア技術と新しいビジネスモデルで新しい価値提供を実現していく考えだ。例えば、デジタルインクとAI による新しい教育体験※1の創造や、ブロックチェーン証明による著作権の保護※2、XR 空間での描画体験※3などについては、すでに他社との協業によりプロジェクトが動いている。



※1 Z会グループとの教育分野における「手書き×デジタル」の利用に向けた包括的な業務提携契約を締結したほか、エスディーテック(株)とは「手書き×デジタル」のAI 利活用に向けた共同開発などに取り組んでいる。

※2 デジタル署名認証技術を用いて、デジタルアート作品やその証明書に署名を組み込んで作品証明とし、制作者の権利を保全して流通させる仕組み。

※3 複数・遠隔地のクリエイターとの共同作業や2D と3D を自由に行き交う新たなクリエーション体験など。





(4) 持続可能な社会へ貢献する技術開発

環境ケアに貢献する技術開発と商品開発により、持続可能な社会発展への貢献を目指している。すでに気候変動イニシアティブ(JCI)への参加や環境ケア技術開発部門の設置により、同社ならではのサステナビリティを意識した技術革新を進めている。また「使い続けていく」ことを体現する企業活動にも取り組んでおり、例えば廃材で作られた「コネクテッド・インク」※で使用されたステージを家具へ再利用する団体の活動支援なども行っている。



※同社が主催するオープンイベントであり、東京、北京、デュッセルドルフ、ポートランド等の会場で毎年開催されている。人間の創造性の源に思いを馳せ、アート、教育、テクノロジーなど多様な領域のパートナーと共創する「創造的混沌」がテーマとなっている。同社のコミュニティエンゲージメント(社会への貢献)が体験できるイベントであり、同イベントで紹介したプロジェクト以外にもパートナーとの様々な取り組みや同社の新たな挑戦を垣間見ることができる。「コネクテッド・インク 2022」の内容は同イベントのホームページから閲覧できるようにしている。





(5) 意味深い成長

経済的な成長(財務側面)をしっかり確保しながら、顧客・ユーザー、社会・コミュニティ、関連する個人など多面的側面での「意味深い成長」を模索する方針であり、長期的な視点での持続的な成長を目指す。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)