ナノキャリア<4571>は12日、2023年3月期連結決算を発表した。売上高が2.02億円、営業損失が12.46億円、経常損失が11.04億円、親会社株主に帰属する当期純損失が13.10億円となった。2022年3月期において、連結財務諸表を作成していないため、2023年3月期の対前期増減率を公表していないが、2022年3月期単体数値と比較すると研究開発費は前期19.23億円から42%減、当期純損失は18.81億円から30%減と赤字幅が縮小した。



同社は、2023年1月、ビジネスモデルを転換。mRNA医薬の創薬に集中し、知財獲得を進めるなど、非臨床段階で製薬企業にライセンスアウトを行うmRNA医薬の創出を担うバイオベンチャーとして生まれ変わる。既に、mRNA医薬の研究開発に6年以上に亘り取り組んできた経験と実績及びこの間に築いた豊富なネットワークに、アクセリード社傘下企業との協業をブースターとして加え、複数のmRNAパイプラインを同時進行でインキュベートし、効率的にmRNA医薬のIPを創出するIP Generatorへと変貌するとしている。



mRNA医薬パイプラインであるRUNX1 mRNAは、既にアクセリード社と共同でPrimRNAを設立し、今年度中の医師主導第I相臨床試験開始に向け研究開発を推進している。軟骨組織の修復を促進し、変形性膝関節症の進行を抑制するとともに疼痛の軽減も実現する局所組織再生薬を目指す。本プロジェクトは、AMEDの医療研究開発革新基盤創成事業に採択されている。



mRNA医薬以外のパイプラインについて、コムレクス(R)耳科用液1.5%(開発コードENT103)は、新規耳科用抗菌薬で、セオリアファーマと共同で行った国内第III相臨床試験において主要評価項目を達成し、同社が2022年4月に外耳炎及び中耳炎を対象に製造販売承認申請を行い、2023年3月、国内製造販売承認を取得した。今後、薬価収載を経て、2023年度前半の販売開始を見込んでいる。

TUG1は脳腫瘍の中で最も悪性度が高い膠芽腫を対象とした医師主導第I相臨床試験実施に向け、非臨床安全性試験において良好な成績を得て、現在治験薬の準備などを進めている。本プロジェクトは、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との共同研究であり、AMEDの革新的がん医療実用化研究事業に採択されている。



2024年3月期通期の連結業績予想について、mRNA創薬ビジネスを推進することにより、売上高が前期比29.0%減の1.43億円、営業損失が10.42億円〜13.82億円、経常損失が9.95億円〜13.35億円、親会社株主に帰属する当期純損失が10.29億円〜13.69億円を見込んでいる。