■業績動向



2. 2023年8月期第2四半期のセグメント別業績動向

USEN-NEXT HOLDINGS<9418>の2023年8月期第2四半期のセグメント別業績は、コンテンツ配信事業が売上高38,605百万円(前年同期比10.9%増)、営業利益3,323百万円(同3.8%増)、店舗サービス事業が売上高30,630百万円(同8.3%増)、営業利益4,730百万円(同1.8%増)、通信事業が売上高26,456百万円(同4.7%増)、営業利益2,839百万円(同1.7%増)、業務用システム事業が売上高9,366百万円(同4.4%減)、営業利益1,270百万円(同27.6%減)、エネルギー事業が売上高30,288百万円(同70.8%増)、営業利益1,068百万円(同325.2%増)と、経済正常化への過渡期のなかでまちまちな業況となった。ただし、コロナ禍においてコンテンツ配信事業や店舗サービス事業を中心に積極投資を続け、グループ経営によるシナジーと事業ポートフォリオマネジメントの効果は十分に発揮されたと考えられる。



(1) コンテンツ配信事業

コロナ禍から経済が正常化するなかで行動制限が解除され、外出機会の増加、テレワークから出社へのシフト、リアルなライブコンサート・イベントの回復などがあり「巣ごもり」需要は収まりつつあるなかでも、「U-NEXT」は課金ユーザー数が堅調に増加して2023年8月期第2四半期末時点で292万人(前年同期比34万人増)となった。視聴者の囲い込み競争やコンテンツの開発・調達競争が激化したものの、「カバレッジ戦略」に加え、「ONLY ON戦略」をグレードアップし、新作・話題作や「PGAツアー」「JLPGA女子プロゴルフツアー」「BELLATOR MMA」といった注目度の高いスポーツコンテンツの独占配信や、音楽コンテンツのライブ配信などの強化に取り組んだことも奏功した。さらに、「映画館で映画を観る体験」を重視し、「映画館に送客できる動画配信サービス」として「U-NEXTポイント」で映画チケットを購入可能にしたことも効果的だったと思われる。



原価面では、為替相場は前年同期比では引き続き調達に不利な円安基調にある。販促コストは、年末年始の投入が上期の利益率に影響してしまうのは例年どおりだが、TVCMからイベント協賛やTVer、TikTokへのスポット広告へとシフトしたため前年同期比で減少した。しかしながら、売上高は2ケタ増収を確保したものの、前述した円安によるコンテンツ調達コスト増の影響もあり、上期の営業利益は1ケタ増益に留まった。



(2) 店舗サービス事業

「お店の未来を創造する」をミッションに掲げて新たな視点による店舗経営を提案し、店舗運営に必要な店舗DXをトータルでサポート、フロント業務からバックオフィス業務までのあらゆるオペレーションのDXをパッケージにした。サービス導入からアフターフォローまでを万全にサポートすることで、顧客の業務効率化、省人化、非接触化を推進した。特に配膳ロボットに関しては、ウィズコロナにおける人手不足の解消、生産性の向上といった顧客の課題を解決し、非接触で安心かつ効率的な接客を実現できるため、飲食店への導入を積極化した。このほか、地域コミュニティの役割を担う全国100拠点の「こども食堂」に「USEN MUSIC」を無償で提供して施設の環境改善支援を開始した。「食べログ」も取り扱う飲食店向け集客支援サービス「ヒトサラ」では顧客店舗がコロナ禍前の状態を取り戻しつつあり、訪日外国人向けグルメサイト「SAVOR JAPAN」では海外旅行者の受け入れ解禁により予約数が大幅に伸長した。2022年9月にグループ入りしたバーチャルレストランでは、グループの販売チャネルを生かした加盟店獲得の促進や新規の飲食ブランドの開発に注力した。



この結果、契約件数は、1〜2月に閉店解約が増加したものの、新規契約が順調に拡大したことで、前年同期比・前年同四半期比とも順調に増加した。利益面では、順調な売上増に対して、人件費や減価償却費に加え一括償却資産の償却負担と貸倒引当が増加したため、微増益に留まった。ちなみに、新規契約は1契約で店舗DXの複数契約が多くなるため顧客単価が高く、1解約をカバーしてなお収益貢献が大きくなる傾向がある(閉店サポートとして同社は居抜き仲介やサブリースも行っている)。また、コロナ禍の影響で与信が厳しくなった業務店などに対して家賃保証サービスを行っており、提供店舗は拡大している。



(3) 通信事業

ウィズコロナにおいてもリモートワークやオンライン会議が定着している。このため業務効率化や省人化ツールを導入するニーズが一段と高まり、オフィスワーカーとリモートワーカーが混在する社内コミュニケーションの在り方が課題となっている。これに対して同社は、ツール活用を含めた新たなサービスなどの提案に取り組んだ。業務店向け自社光回線「USEN光plus」では顧客の新規獲得が安定的に増加し、ワンショット型の手数料獲得モデルからランニング収益獲得モデルへのシフトが進んだ。また、リモートワークの環境整備のみならず音楽や動画配信などインターネットを活用したライフスタイルへのニーズの高まりを受け、個人向け光回線サービス「USEN光01」の提供も開始した。売上高は、中小規模事業者向けの通信回線やネットワーク、セキュリティサービスなどの新規獲得が引き続き堅調に推移したため、1ケタ半ばの増収を確保することができた。一方、法人向けICTで収益認識基準変更により前年同期にあった増益効果がなくなったこと、2023年8月期第1四半期に売上総利益が低い工事が発生したことなどから、営業利益は横ばいとなった。



(4) 業務用システム事業

ウィズコロナのなかで、これまで人による「おもてなし」をサービスの中心としてきた施設においても、人手不足や非接触・非対面ニーズが生まれ自動精算機など同社製品への需要が高まっている。同社は、これを大きなビジネスチャンスととらえ、営業を積極化してきた。全国旅行支援による国内旅行の増加や入国制限緩和による訪日外国人の回復により、宿泊客数が拡大しているホテル向けには、人手不足や非接触・非対面など様々な課題解決へ向けた製品・サービスを提供した。病院/クリニックにおいては、人手不足や非接触・非対面ニーズに加えて省スペースニーズにも対応する、業界最小の最新型セルフレジ「FIT-B for Clinic」の販売を開始した。



病院/クリニックに対しては、JA三井リース(株)との協業により、開業や機器導入時の資金調達から次世代KIOSK端末をはじめとするDX機器の導入までをワンストップで支援するサービスを開始した。厚生労働省よるオンライン資格確認導入原則義務化は一部の対象施設に限り猶予期間が設けられたが、引き続き医療機関全体のDX促進に向けて顔認証付きカードリーダー「Sma-paマイナタッチ」の導入に取り組んだ。しかしながら、コロナ禍の補助金による押し上げがなくなったこと、2024年の新紙幣発行に備えた買い控え、猶予期間が設けられたことによる病院/クリニックの様子見、ホテルでは全国旅行支援の再開やインバウンドの回復で急に繁忙となって投資が遅れたことなどにより、減収減益となった。ただし、四半期比較では回復トレンドに入ってきたと言える。



(5) エネルギー事業

エネルギー市場は発電コストが高止まりし、大手電力会社が規制料金値上げ申請を行うなど不安定な環境が続いている。このため、取次モデルの「USENでんき(高圧)」で一定の解約が続いているものの、市場連動型/ハイブリッド型の自社調達モデル「U-POWER」が、解約した顧客や、新電力各社が新規受付を停止するなかで電力会社との契約の目途がたたない企業の受け皿として、契約件数を伸ばすことができた。加えて燃料費調整単価の上昇もあり売上高は増加した。営業利益は増売効果及び高採算の「U-POWER」の構成比上昇により売上の伸びを上回り、第2四半期で通期予想の7億円を大きく超えた。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)