■業績動向



3. 新サービスの開発・既存サービスの実績

戦略市場でさらなる成長を続けるため、Jストリーム<4308>は新たなサービスの開発に注力してきた。2023年2月には、3DCG/XR技術を用いて高クオリティな動画撮影・動画制作のできる最新鋭の撮影手法を用いた「XRバーチャルプロダクション」の提供を開始した。「XRバーチャルプロダクション」を利用することにより、現実世界には存在しない空間と実写を組み合わせた幅広い表現や演出が可能となる。企業や商品ブランドの世界観が思いのまま表現できるため、バーチャルイベント(ライブ配信)や動画制作において、ブランド訴求や差別化の有力な手法として期待されている。動画コンテンツの運用を一本化し、動画配信業務の効率化を可能にする「J-Stream メタマスタシステム」の提供も開始した。動画ファイルや動画メタデータ、画像ファイルを一元管理し、自社メディアやYouTubeなど複数のプラットフォームへの配信設定・登録・管理が可能になる。このため、様々な用途で活用が進んだことで激増した動画データや煩雑化した配信管理の効率化が期待されている。ほかに、子会社のクロスコで新たにメタバース専門の部署を発足し、企業のメタバース導入を総合的に支援するサービスを開始した。これまで提供してきたVRを用いた会議やイベントの実施・運用・コンテンツ開発(2020年開始)、メタバースポータルサービスである「METAGO」(2022年開始)などの実績・ノウハウを生かして、導入検討段階の体験利用からイベントの実施、オウンドメタバースの構築までを支援し、企業による社内外での新たなコミュニケーションを実現する方針である。



既存のサービスも順調に実績が積み上がり、評価も高まっている。動画配信プラットフォーム「J-Stream Equipmedia」は、2012年にサービス提供を開始以来、コロナ禍を経てなお、国内最大級の企業向け動画配信プラットフォームとして多くの企業から長年愛用されている。足元で「J-Stream Equipmedia」の導入アカウント数の増加ピッチが上がってきたが、これは、2022年4月に機能を拡張し、視聴者を社員や会員に限定したユーザー認証型ポータルサイトが簡単に作成・公開できる「ポータル機能」を新たに提供したことが要因である。また、「J-Stream Equipmedia」は、定評のあるSaaS表彰制度「BOXIL SaaS AWARD Spring 2023」の動画配信システム部門において「Good Service」のほか「サービスの安定性No.1」「機能満足度No.1」に選出された。初心者でも使いやすい動画配信の仕組みや管理に必要な様々な機能、途切れないネットワーク、画質の良さ、サービスの安定性などが高い評価につながったと思われる。



CDNサービス「J-Stream CDNext」の自治体への導入実績数は89(2021年12月調査)から212(2023年2月調査)へと約1年で2倍以上に拡大した。自然災害や事故発生によってWebサイトにアクセスが集中しても、Webサイトがダウンすることなく住民に安定した情報提供を続けられることが評価され、人口規模の大きな自治体だけでなく小規模の自治体でも導入が進んだことが要因である。そのほか、「第60回愛媛マラソン(2023年2月12日実施)」において、視聴者が自由に好きなアングルを選びライブを楽しめるサービス「マルチアングル配信」を実施した。同社はストリーミングサーバーやマルチアングル用プレイヤーの配信部分を担当した。また、(株)ソフマップが運営するeスポーツスタジオ「eSports Studio AKIBA」のソフマップAKIBAパソコン・デジタル館8階への移転・リニューアルオープンの際に、映像送出システムに関する技術協力など豊富なノウハウを生かした様々な支援を実施した。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)