政府の「次元の異なる少子化対策」を具現化する改正少子化対策関連法が今国会で成立する見通しとなっている。若年人口の急激な減少を反転させるため、育児に関わる財政支援が大幅に拡充される。しかし、こうした外面的な制度のみで少子化に歯止めがかかるかどうかは未知数だ。子どもの夢に寄り添い、地域社会が一体となって実現を後押しする整備づくりが求められるだろう。

 改正法に基づき、児童手当の拡充、妊婦の支援給付の創設、ヤングケアラーに対する支援強化などさまざまな取り組みが順次進められる。2030年代に入ると若年人口の激減が見込まれるとして、政府は総力を挙げて対応する方針を示している。

 2018(平成30)年〜2022(令和4)年の5年間の合計特殊出生率は全国で1・33となり、前5年を0・1ポイント下回った。本県は1・37で0・19ポイント下がり、内堀雅雄知事は先月22日の記者会見で「大変厳しい状況にある」と危機感を語った。少子化は国家的課題と指摘されてきた。国の対応は遅きに失した感は否めず、国民的な理解を得ながら強力に各種施策を進めるべきだ。

 ただ、追加財源として年間3兆6千億円が必要とされる。新たな国民負担が子育て世代にも及ぶ矛盾への批判も聞かれる。金銭的な後押しとともに、子どもが豊かに成長でき、保護者が育児の喜びを実感できるソフト面の施策が欠かせない。

 大手化学メーカーが新入児童に将来就きたい職業を聞いたところ、今年は男子がスポーツ選手、警察官、消防・レスキュー隊、女子はケーキ屋・パン屋、芸能人・歌手・モデル、保育士が上位を占めた。子どもの希望をかなえるため、職業体験制度を地域ごとに低学年から導入してはどうか。勤労意識が養われ、古里への愛着が湧くきっかけになる。「異次元」を掲げるならば、例えば米大リーグや欧州サッカーリーグの試合を観戦したり、世界的なパティシエの味を体験したりする機会を設けるのもいい。

 あす5日は「こどもの日」。子の喜びは親の喜びでもある。従来型の支援策の枠を超え、子育て世代が、わくわくできるアイデアを社会全体で考えたい。(菅野龍太)