福島県郡山市の高齢者向けパソコン教室「パソコン寺子屋安積野」代表の佐藤久男さん(77)は、11年間で100人以上の生徒を育てた。受講料はとらず、丁寧で粘り強い指導を心がける。「教室を通し、生徒の人生を豊かにできたらうれしい」と決意を新たにしている。

 教室には現在、15人ほどが通う。「もう一回やってみよう」。部屋にはシニアの受講者に操作法を伝える佐藤さんの穏やかな声が響く。

 50代だった27年ほど前、使い道のないデスクトップパソコンが自宅にあったのがきっかけで機器に詳しくなった。「使わないともったいない」。図書館で操作法が書かれた本を読み込んだ。独学でホームページ(HP)を作るまで腕前を上げた。

 蓄えた知識を生かし、当時務めていた郡山観光交通のHPを立ち上げた。さらに県内のシダレザクラを番付表で格付けする「枝垂れ桜花番付」を作成し、HPで公開。大きな反響を呼んだ。

 退職後、デジタル社会に順応できていない高齢者の役に立ちたいと2013(平成25)年に友人らと教室を開いた。当初は近隣住民だけが参加する小さな教室だったが、徐々に評判が広まった。市外からも生徒が集まるようになった。

 電源を入れる、切るなど初歩的な操作から、複合的な技術が求められるWord、Excelの使い方まで幅広く教える。何度同じ質問をされても決して怒らない。繰り返し説明し、身に付くまで指導する。「誰でも気軽に質問できる環境づくりに励みたい」。生徒の疑問に耳を傾け、持つ知識を惜しみなく伝えるつもりだ。

(郡山版)