福島イノベーション・コースト構想推進機構など福島県内の企業・団体は連携し、相双、いわき両地方の沿岸部に県内初となるドローンの公共的な飛行ルート「ドローン航路」の整備に乗り出す。政府から航路の認定を受ければ物流業者など運航者は飛行の度に必要な承認申請が省力化される。今年度中に航路の運営主体となる管理者を決定し、早ければ2025(令和7)年度中に運用を開始する。相双地方では生活物資や医薬品の搬送、いわき地方ではアワビなどの密漁監視や魚群探知などでの使用を想定している。


 イノベ機構、県、福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム)、ドローン製造を手がけるイームズロボティクス(本社・南相馬市)の4者が取り組む。イームズロボティクスはドローン物流の本格化に備え最大6キロの荷物が積載可能の新型ドローン「E6150TC」を製造した。4月上旬に航空法に基づき第二種型式認証を取得。これにより、ドローンは必要な措置を講じれば申請なしで目視外飛行や夜間飛行(目視内)、人口集中地区上空の飛行などが可能となった。

 相双、いわきの両地方の沿岸エリアで想定される航路のイメージは【地図】の通り。相双地方では福島ロボットテストフィールド(ロボテス)のドローン用滑走路が南相馬市原町区と浪江町に整備されている点を生かす。両滑走路間の約14キロの区域で飛行コースを設定。ドローンから車両などに搭載した荷物を移し替える「モビリティ・ハブ」を両拠点と中間地点の南相馬市小高区の村上排水機場周辺に設ける計画。同地方では商店や医療機関が少ないことから、生活物資や医薬品などの配送を主要事業に掲げる。モビリティ・ハブから民間の物流業者などが商品を注文した人の自宅などに配送する。

 いわき市沿岸エリアでは、小名浜港と久之浜港を結ぶ海岸線約25キロのコースを想定。両港の他、塩屋埼灯台と沢帯排水機場の計4地点をモビリティ・ハブとする。ウニやアワビなど高単価の海産物を狙う密漁の被害が後を絶たず、夜間でも飛行可能なドローンによる監視体制の強化が期待される。魚群探知は漁業関係者から委託を受けた事業者による展開が想定される。この他、両地域では橋りょうや港湾施設などインフラの点検、災害発生時の物資輸送、被災状況の把握なども事業候補に挙がっている。

 航路の運営主体となる管理者は今後、選定する。公共性の高い団体や企業か、複数の団体や企業で構成する共同企業体(コンソーシアム)のいずれかが担う方向で調整を進める。将来的には航路を仙台エリアや県内全域に拡大させる方針だ。

 政府は3月末にデジタルライフライン全国総合整備計画を策定。計画では2025年度以降のドローン航路の海岸線などでの整備の模索やテスト環境としてのロボテスの活用などが記載されている。