須賀川市のふくしま森の科学体験センター「ムシテックワールド」の入館者は、2001(平成13)年の開館から23年を経て先月、130万人に達した。昆虫と科学に焦点を当てた公共施設は全国的に珍しく、体験や学習メニューを充実させ、理科教育の拠点としての機能を強化するよう求めたい。

 ムシテックワールドは、うつくしま未来博のパビリオン「なぜだろうのミュージアム」の中心施設の一つ。市が引き継いで整備し、ふくしま科学振興協会が運営している。昆虫の生態や科学の原理、ものづくりなどを学べる。学習指導要領を踏まえた自然体験、科学実験など学年別の125プログラムを用意し、常駐する教員4人らが講義などを担当している。

 世界のカブトムシやクワガタなどが飼育され、週末ごとにユニークな実験、工作、自然体験プログラムを楽しめる。昆虫ブームもあって、子どもたちが目を輝かせて虫や水生生物に触れている。

 入館者は年間5万〜6万人を数え、2019年度は過去最多の7万915人を記録した。翌年度は新型コロナ禍で3万人台に落ち込んだが、昨年度は6万3958人にまで回復し、1日平均208人が来館した。授業の一環で訪れた小中学生は全体の17・9%を占めている。県中・県南地方を中心に県北地方にも利用が広がっている。

 一般の来館者は半数を占め、家族連れのリピーターも多い。関東圏から月に1度は訪れているという親子もおり、観光施設としての集客力も保っている。

 今後、県内はもちろん県外への発信力を高めるべきだろう。田村市の「ムシムシランド」は、自然の中でカブトムシの生態を観察できるドームを備え、昆虫採集を体験できる。同種の施設を生かし合えば、相乗効果による魅力向上が期待できる。連携した観光プログラムや事業を実施してはどうか。昆虫の聖地づくりを共に推進することで、広域的な誘客にもつながるはずだ。

 ムシテックワールドは、高校生ら24人がボランティアで運営を支えている。理科系の大学に進み、学びを深めている学生もいる。魅力的な展示物やプログラムを増やし、理科系の人材育成にも結び付けてほしい。(安島剛彦)