金融経済の知識を競う「エコノミクス甲子園」に出場した福島市などの高校生有志が、お金の知識を小中学生に伝える活動に乗り出す。スマホや交流サイト(SNS)が身近になり、金融関連のトラブルの多発化と低年齢化が懸念されているため、動き出した。年齢の近い高校生は子どもに親近感を与えやすく、難しいイメージのある金融について興味や関心をかき立てると期待される。第1弾のイベントを6月15日、市内のまちなか広場で催し、紙幣や税金の仕組みをクイズやゲームで学んでもらう。


 高校生有志は福島高2年の八木沼愛莉さん(16)を中心とした福島高、情報会計科がある福島南高の2〜3年生計9人。「アンプレクエスト福島支部」として活動している。

 今年2月のエコノミクス甲子園がイベント開催のきっかけとなった。ともに福島高1年だった八木沼さんと鳥海那月さん(16)が県代表として大会に臨み、各地から集まった生徒と金融経済の知識や時事問題などを競った。

 「金融経済の知識は社会全体で求められているんだ」。八木沼さんは全国の精鋭たちとの交流を通じ、暮らしを支えるお金に関する学びの大切さを実感した。

 大会で結ばれた絆を大切にしたい―。互いに切磋琢磨(せっさたくま)する関係を続けようと、出場者で有志団体「アンプレクエスト」を結成した。そんな時、詐欺被害が年齢に関係なく相次いでいるニュースを見聞きすることが多くなっていた。「小中学生がお金について考える機会をつくりたい」と企画を思い立ち、友人らに声をかけ、福島支部を立ち上げた。

 イベントでは、税金や保険などを含めお金に関する知識を学ぶクイズやゲームを多数用意する。7月に発行が迫る新紙幣にも理解を深めてもらう予定だ。エコノミクス甲子園県大会を主催した東邦銀行などの協力を得て準備を進めており、当日はSNSなどで募った高校生ボランティアも運営に携わる。

 福島市市街地整備課によると、高校生主体のまちなか広場での催しは珍しいという。

 団体名のアンプレクエストは「アントレプレナーシップ(起業家精神)」から名付けた。八木沼さんは「イベントを通じ、親子で楽しくお金について知ってほしい」と意気込み、支部としての今後の活動も模索していく。

 アンプレクエスト福島支部のメンバーは次の通り。

 八木沼愛莉、吾妻弘望、遠藤由深、大竹裕人、鳥海那月、藤田香凜、谷代宙希、矢部ひかり(福島高2年)隅田耀仁(福島南高3年)


■未成年の金融教育に広がり

 未成年の身の回りには、課金制スマホゲーム、フリマアプリを使用したオンライン売買など金融トラブルに発展しかねない環境があり、金融教育の重要性は高まっている。

 2022(令和4)年度からの高校の新学習指導要領では、トラブル回避や経済的に自立した生活のために金融商品や資産形成を学ぶ内容を拡充した。

 東邦銀行も小中高校での出前講座などに力を入れてきた。広報・社会貢献課の松本佳菜子さん(34)は「お金について学べる活動が広がれば、県内の金融リテラシー(金融や経済に関する知識、判断力)の向上につながる。生徒自らが理解を深める機会にもなるはず」と高校生の活動を後押しする。同様の取り組みが他県にも広がるよう期待している。


 イベントは6月15日午前10時から午後4時まで。雨天決行。入場無料で事前の申し込みは不要。問い合わせはアンプレクエスト福島支部 メールenprequest.fukushima@gmail.comへ。