福島県警OB3人が集会所などでそばを振る舞い、食事をしながら防犯意識を高めてもらう場をつくる。防犯などに関する身近な情報を共有し、安心安全なまちづくりに向けた意識高揚につなげる。住民同士で困りごとや悩みを相談し、日頃から声かけなどが積極的に行われる関係性の構築を目指す。23日に双葉町でスタートする。

 いわき市の菅野伸是(のぶゆき)さん(74)が考案した。駐在所に勤めていた際、「子どもが泣いている声が聞こえる」「無免許運転の人がいる」などの情報を住民が把握していても、警察など周囲に伝わって来ないケースがあった。事前に相談があれば防げたと感じる事案もあり、住民主体で安全への意識を高める重要性を感じていたという。

 菅野さんは県内のそば店や関係団体でつくる「うつくしま蕎麦王国協議会」で会長を担うなど長年そばの普及に務めており、住民同士の〝つなぎ〟にそばを選んだ。食事をしながら気兼ねなく話してもらうとともに、そばの魅力も伝えたいと振る舞いを決めた。そば打ち仲間で元警察官の古川茂さん(73)=二本松市=、管野友春さん(71)=田村市=に声をかけると、「地域のためになるなら」と二つ返事で応じてくれた。

 初回はJR双葉駅西側にある町営住宅「駅西住宅」で開催する。住民帰還が徐々に進んでいるものの、居住者は多くない。大きく変化したまちの日常生活に不安を抱えている人もいると感じた。住民主体で防犯への意識を高めてもらい、帰還する人が一人でも増えるよう安全な場所にしたいとの思いから、双葉町を選んだ。20〜30人が参加する予定で、そばを味わいながら生活の困りごとや防犯について気軽に話し合う。

 駅西住宅に暮らす双葉町浜野行政区長の高倉伊助さん(68)は「悩みや不安を話すことで少しでも楽になる町民もいるはず。町外に避難している町民が集まるきっかけにもなり、交流を深めていく場になればうれしい」と歓迎する。

 双葉郡内を経て、県内各地での開催を目指す。月1〜2回ほど実施する計画。地元の警察署員にも参加してもらうなど、住民の悩みや地域の情報が現役警察官に届くよう活動する計画。警察や行政機関への相談を促すなど、元警察官ならではの視点で助言もする。

 菅野さんは「住民全員で暮らしやすい地域について考えてほしい。安心安全への思いをつなぎにしてそばを打ち振る舞っていく」と意気込んでいる。

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 各地の公民館や集会所などで開催し、地域住民の参加を募る。当面は無料で振る舞う考え。開催希望など問い合わせは菅野さん 電話080(5577)3387へ。