「まさか…」と、驚きにのまれる。暮らしの場に埋もれた歴史に触れた瞬間も、そうだ。古里への愛着が深まり、いつもの風景が違って見える▼福島市中心部にある信夫山の下を東西に走る市道がある。学法福島高の北側で、急に南側に回る。カーブせずに直進すれば、国道13号と合流するので便利なのに―と感じる市民もおられよう。なぜ曲がっているのか。先日、放映された競馬の衛星放送「グリーンチャンネル」が、一つの可能性を示してくれた。明治時代にあった競馬コースのコーナー部分に当たるのではないかと▼「福島競馬場100年史」によると、現在の橘高の辺りに1周800メートル、幅20メートルの馬場が設けられた。信夫山には招魂社(現・福島県護国神社)があり、戊辰、西南の役で犠牲になった本県出身者らを祭っていた。奉納競馬が行われ、一レースで4、5頭が競ったという。その後途絶え、大正時代に現在の場所に新たな競馬場が造られた▼全国に名だたる福島競馬は、戦没者の慰霊がルーツだったのか。感慨深い歴史が浮かぶ。新緑まぶしい県都のシンボルの麓を駆けてみる。往時に思いをはせつつ。沸き上がるのは、郷土の先人への限りない敬意だ。<2024・5・22>