全国的な人気を誇る「白河ラーメン」の店が立ち並ぶ白河市。しかし、有名なのはラーメンだけではない。県や市によると、「白河そば」は信州、出雲、盛岡に並び、日本四大そばどころの一つとされる。市内ではそば店が味を競い合うだけにとどまらず、地場産のそば粉を活用した6次化商品の開発も進み、新たな白河の名産品として発信する取り組みが動き出している。
 藩主が栽培を奨励
 白河そばの歴史は古く、発祥は200年以上前にさかのぼる。白河藩主松平定信が冷害に強いソバの栽培を奨励したことが起源だという。白河そばの代表的なメニュー「割子そば」は、小さめの皿に小分けにされたもりそばをイクラやナメコ、山菜などの具材で少しずつ味わうのが特徴だ。
 こうした歴史ある白河そばの新たな可能性に目を向けたのが、農業用品販売業カタノ(白河市)社長の片野仁人さん(43)だ。白河そばのそば粉を生かし「そばパスタ」と「そばクッキー」を商品化した。
 パスタは、そば粉とデュラム小麦粉を混ぜ合わせて仕上げた。口に運ぶと、もちもちとした食感とともに、ソバの香りが鼻を抜ける。さくさくとした食感が楽しめるクッキーは、ソバの香りと優しい甘さが口の中に広がる。
 片野さんは「パスタとそばの良いところ(食感と香り)を組み合わせた。クッキーは小麦粉を使用せず、食べやすい食感になるように配合を調整している」と6次化商品の魅力を語る。
 耕作放棄地解消へ
 パスタとクッキーに使用されたそば粉は、全て同市野出島地区で生産されている。野出島地区は農業の担い手不足などから耕作放棄地の拡大が課題だった。このため、地区の本宮直さん(77)らが「野出島地域活性化プロジェクト」を2010年に設立し、耕作放棄地でソバやナタネ、小麦を栽培する取り組みを始めた。
 プロジェクトの活動を知った片野さんが「持続可能な社会に向け、できることからやっていこう」と商品開発に挑んだ。本宮さんは「地元のものを使って、地元の人がブランド品を作ってくれるのが非常にありがたい」と感謝する。
 片野さんは「今後もソバに限らず、地域の食材を活用し、地域、生産者、消費者にとって『良いことの連鎖』が生まれるような取り組みをしていきたい」と決意を新たにしている。(伊藤大樹)
 直売所で販売
 そばパスタは1袋2人前390円、ギフト用の4袋入りで1700円。そばクッキーは1袋8枚入りで600円。白河市のJA夢みなみの農産物直売所「り菜あん」や、西郷村の直売所「まるごと西郷館」などで販売されている。