福島市のJR福島駅西口に立地するスーパー「イトーヨーカドー福島店」は6日、開店から39年の歴史に幕を下ろす。「ワクワクする施設だった」「感謝の気持ちしかない」。閉店が間近に迫った大型連休中の同店には、長年親しまれた"西口の顔"との別れを惜しんで詰めかける大勢の買い物客と、最後まで出迎える関係者の姿があった。
 テナント「感謝最後まで」
 「ここに来れば心が躍った。閉店後はどこに行けばいいのか」。福島市の渡部喜代美さん(83)は、開店当初から職場の同僚と月に1〜2回ほど足を運び、一緒に食料品や衣料品などの買い物を楽しんでいた日々を思い返す。「ほかのスーパーに行く気は起きない。きっと温かい雰囲気がいいんでしょうね」。店内を目に焼き付けるように、最後の買い物を満喫した。
 連休で帰省した娘の希望で同店を訪れた福島市の主婦辛島淳子さん(53)は、「西口といえばヨーカドー。当たり前にあったのでものすごく寂しい」と惜しむ。福島店閉店後の跡地利活用について具体的な方針は決まっていない。福島市や福島駅東口地区市街地再開発組合などは駅東西口一体となったまちづくりを進めたい考えだが、東口の再開発事業も難航しており、東西駅前の空洞化は避けられない状況だ。辛島さんは「閉店後に注目している。活気が生まれる施設ができてほしい」と願う。
 一方、福島店の店舗関係者も特別な思いを抱いて店頭に立つ。開店当初からテナントとして入る生花店「花の店 伊東」。この店で30年以上花を束ねてきた菅野里美店長(51)は「お客さまに支えられてここまで来ることができた。感謝の気持ちしかない」と感慨に浸る。
 菅野さんにとって同店は「自然と元気になれる場所」。客の喜ぶ顔のために親身になって花を選ぶ丁寧な仕事ぶりに、リピーターは多い。だが、そんな店で過ごす日々も残りわずか。最近では、常連客らが連日、差し入れや手紙を持ってあいさつに訪れるという。「閉店は悔しいが仕方ない。自分にできるのは、お客さまに感謝の思いを伝え続けること」。シャッターが下りる最後の日まで、笑顔で店に立つつもりだ。
 26日には郡山店も閉店し、県内からイトーヨーカドー全店が撤退する。郡山店は、ヨークベニマル(郡山市)が店舗を引き継ぐことが決まっている。