「常にマスクしていないとダメと思う」は8割超

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、二度目の“マスクの夏”がやってくる。
5月16日には宮崎空港で最高気温32.7度を記録。今年全国で一番の暑さとなるなど、夏を前にすでに厳しい暑さが訪れている。

コロナ対策も大事だが、これからの季節は「着けっぱなしのマスクによって熱中症になってしまわないか?」ということもケアしなくてはならない。
そんな中、第一三共ヘルスケア株式会社が「感染症対策と熱中症に関する調査」の結果を公表した。

この調査は、熱中症に関する知識やその予防法を啓発するために行われたもの(全国の20〜50代、60代以上の各年代100名、計500名が対象・2021年4月2日〜5日・インターネット調査)。

この調査によると、「暑いと感じるときでも、人目が気になってマスクが外せない」人は74.8%、「常に(飲食時を除く)マスクをしていなくてはいけないと思っている」人は82.6%。多くの人が外出時に「マスクを外してはいけない」と思っていることが分かった。

また、「ワクチンを接種したらマスクは装着しない」という人はわずか9.6%。9割以上の人がワクチンを接種してもマスク着用を継続する意向だった。

マスク着用への意識の高さがわかる結果となったが、一方で「マスク着用にこだわり、暑さを我慢してしまう」人が多数いることも判明した。

第一三共ヘルスケアはこの調査について「コロナ下においてマスク着用や運動不足の生活が続く今夏、例年に増して熱中症への注意が必要。熱中症の正しい予防・対処法を伝えるとともに、自分の健康を守り対処するセルフケア実践のきっかけになれば」と話しているが、では、これから再びやってくる“マスクの夏”を安全に過ごすためにするべきこととは?

熱中症に詳しい、済生会横浜市東部病院 患者支援センター長の谷口英喜先生にお話を聞いた。

マスク着用で「渇きに鈍感」に…

――去年の“マスクの夏”、マスクが原因の熱中症は増えた?

マスクによる熱中症とまでは断言できるものはないです。マスクを着けていたことにより熱中症が悪化、増悪を早めた可能性があります。そのような患者は、私の調査では病院に搬送された患者の28.8%ですが、前年はほぼゼロなので、これを増えたと言って良いかは判断できません。


――「暑くてもマスクをしなくちゃいけない」…この意識があると何が起きてしまう?

(1)口渇感の消失で水分補給を怠る
口渇中枢からの刺激で唾液の分泌が減り口渇感が発生するはずが、新型コロナ感染拡大に伴いマスクを着けることで、口腔内が湿潤され口渇感が発生しなくなります。

(2)マスクをしていることで水分補給を怠る

(3)体温は大人は上昇しないが、子どもは上昇
大人は体温コントロールが呼吸以外の汗腺や皮膚血管拡張(ほてり)で十分できるが、子どもは呼気からの体温放出に頼っているので、高体温になる恐れがある。

(4)子どもは酸素化の低下
子どもの胸郭は未発達なので、マスクで呼吸の出口を閉塞することで呼吸に負荷がかかり、息苦しさと酸素不足の危険がある。


――では、大人と子どもがそれぞれ熱中症予防のため気をつけたいことは?

大人は、水分補給を意識すること。子どもは、マスクをできるだけ外せるように。運動や炎天下では着けていると危ないです。

屋外ではマスクを外すことも大切(イメージ)

谷口先生によると、マスクの着用と熱中症の因果関係は定かではないというが、マスクを着けていたことが熱中症を悪化させたり、悪化のスピードを早めてしまった可能性はあるそうだ。

マスクを着けていることで「口の中の乾き」を感じにくくなり、体内の水分が減っているのにもかかわらず、水分補給が滞ってしまう状況が起きるそう。

調査のように、人前でマスクを外すことへの抵抗感がある人も多く、また、マスクを外して水を飲み、マスクを着け直す、ということが単純に面倒と思ってしまう人もいるだろう。

さらに、子どもの場合、常時マスクを着けていることで、呼吸から体の熱を逃がすことができず、体温が上がりすぎてしまうこともあるというが、大人から「しっかりとマスクをしようね」と教わっている子どもたちは「絶対にマスクを外してはいけない!」と思ってしまうかもしれない。

しかし、大人も子どもも「マスクを外し、水分補給をすること」が熱中症予防には重要。

谷口先生によると「喉が渇いていなくても時間を決めてこまめに水分補給」を心がけることが大切だということで、「外出している時にマスクを外してはいけないと思っている方も多いようですが、熱中症にならないためには、マスクを外してもよいシチュエーションをしっかりと把握し、近くに人がいない所では、適宜外すことも必要」とのことだ。

水分補給は「冷たすぎない水をこまめに」

注意したい水分補給については「こまめに少しずつ」。
1時間おきにコップ1杯(200ml)程度を目安とし、1日に最低でも8回「自分の感覚をあてにせず、飲む時間を決めて水分補給をする」事が大切だという。

飲む水の温度は、38℃以上の高熱時は除き、冷たすぎないものが良い。マスクを外した後は冷たい水を飲んでさっぱりしたくなるかもしれないが、冷たい水が大量に体の中に入ると、体は逆に消化酵素などが働きやすい温度に戻そうとして体温を上げてしまうため、キンキンに冷えた水を一気に飲む…というのは避けた方が良いのだという。

こまめな水分補給が必要(イメージ)

これらを踏まえ、“マスクの夏”に注意したいのは以下のポイント。

・屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合にはマスクをはずす
・マスク着用時、強い負荷の作業や運動は避ける
・のどが渇いていなくても定期的に(時間を決めて)こまめに水分補給を心がける
・外出時は暑い日や時間帯を避け、涼しい服装を心がける(※周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要)

マスクの着用は大切な感染症対策だが、これからの季節は十分なディスタンスが確保できる場面では、マスクを外すことも熱中症から体を守るための大切な要素になるのだ。

マスクを着けない場面にも注意点が…

一方で、マスクを着けない屋内にも、熱中症になってしまうリスクはある。

調査の中には「暑いと感じるまでエアコンは使わない」人は全体の73.6%。20代では73.0%、60代以上では74.0%と、年代に関係なく多くの人が暑さを感じるまでエアコンを使わずにいることもわかったが、これも実は間違い。

谷口先生によると、気温がさほど高くなくても湿度が70%を超えるほど高いと汗が蒸発しにくく、体に熱がこもりやすくなるので要注意とのこと。また「特に高齢者は室温が28度を超えないようにしっかりとエアコンを使うことが大切」ということだ。

また、もう一点覚えておきたいのが「暑熱馴化(しょねつじゅんか)」という言葉。
暑さを感じたときに速やかに体温を下げられる体作りのことを指すが、マスク着用に加え、外出自粛による運動不足や外気温に触れない生活を送ることでこの「暑熱馴化」が進まないことで、今年は熱中症のリスクが高まってしまっているという。

この「暑熱馴化」は本格的な暑さがやってくる前にぜひしておきたいが、

・ウォーキングなど、汗ばむくらいの運動を続ける
・40度くらいのお風呂で毎日10〜15分の入浴

などを行うことで、熱を逃がしやすい体が作れるそうだ。


8割以上の人が「常にマスクを着けていないと…」と考えていることがわかった、今回の調査結果。まもなく2度目の“マスクの夏”がやってくるが、これらのポイントを頭に入れて、熱中症対策にも意識を向けつつ、安全に過ごしていただきたい。