11月13日に逮捕された、「煉獄コロアキ」こと杉田一明容疑者(40)。
杉田容疑者は2023年9月、帝国劇場付近で18歳の女性に「チケットの不正転売をしている」と詰め寄る動画を撮影し、それをモザイクをかけずにYouTubeに投稿した。しかし、女性に転売した事実はなく全くの無実で、女性の名誉を毀損(きそん)した疑いがもたれている。
警察官ではない一般の人が、犯罪の容疑者を現行犯で逮捕。その様子を撮影・投稿する“私人逮捕系YouTuber”は、どのように生まれ、世間に受け入れられていったのか。
「バズるかなと」「大きい声の方が良い感じに」
そもそも“私人逮捕系”動画とは、どんなものなのか。杉田容疑者が投稿していたのは…
(逮捕事案とは別の“私人逮捕系”動画)
杉田容疑者:
お姉さんダメだよ。ねえ、ダメだって、お姉さん!チケットの不正転売は1年以下の懲役、100万円以下の罰金、またはその両方だから。行こうか、お姉さん。警察行こう、お姉さん。おい!逃げんなって!
チケットを不正転売しているとして逃げる女性を執拗に追いかける杉田容疑者。さらに…
(逮捕事案とは別の“私人逮捕系”動画)
杉田容疑者:
おい!店売り100万だろ、お前!おい、転売ヤー待て!おいおい待てって。おいおい、おーい転売ヤー!
こうした動画を投稿する理由について、逮捕前、FNNの取材に答えていた杉田容疑者は次のように語っていた。
杉田容疑者(逮捕前のインタビュー):
まあ、ワクワクですよ。なんとなくバズるかなぁと思ったんですよね。撮れ高できますよ、もめると。結構大きい声の方が動画としても良い感じになるんですよ。もっと怒っても良いと思うんですよね。
20代でデイトレーダーに…母親に毎月“仕送り”
18日、Mr.サンデーの取材に答えたのは、杉田容疑者の母親。杉田容疑者が“私人逮捕系YouTuber”になったきっかけを明かしてくれた。
杉田容疑者の母親:
大検を受けて、その後、司法書士の勉強をしてました。将来弁護士になりたかったんでしょうかね。
しかし、司法書士の試験に受からなかったという杉田容疑者は、投資ブームが起きると20代でデイトレーダーになったという。
杉田容疑者の母親:
私には毎月、結構くれてましたけどね。ウン十万とかくれてましたよ。
一度ね、私と一緒に博多に行って、博多の地下街で200万円おろしたんです。で、半分にして、私に半分くれたんです。
羽振りがよく、毎月数十万円を仕送りし、母親が住むマンションの家賃も支払っていたという杉田容疑者は、一時は億を超える金を手にしたこともあったという。
しかし、株がうまくいかなくなると…
杉田容疑者の母親:
株で負けたらさ、部屋のもの、携帯投げたり、もの投げたりね。テレビも2回ぐらい壊しましたよ。
そして、30代まで続けたデイトレーダーがうまくいかなくなると、コロナ禍には、反マスク・反ワクチン活動に参加。SNSには「マスクは感染症対策にならない マスクを燃やせ!」などと投稿していた。
杉田容疑者(逮捕前のインタビュー):
株でちょっと負けたんですよ。借金とかいろいろできて何しようかな?ってなって。こういうYouTuberとかインフルエンサーになろうと思ったんですよ。
トレーダーで退場すると、結構しんどいですよ。なかなか普通の仕事できないですね。
“私人逮捕系YouTuber”は「お金のため」
次第に過激な発言が目立ち始めると、2022年、新型コロナに感染したことをきっかけに、「煉獄コロアキ」という名前で活動を開始した。
世間のブームに敏感に反応し、興味を持てば突き進む――そんな生き方のように見える。
そして2023年4月には、武蔵野市議選に出馬。政治の世界に挑むも落選した。その後、たどり着いたのが“私人逮捕系YouTuber”だった。
なかでも、杉田容疑者がこだわりを持っていたのは…
杉田容疑者(逮捕前のインタビュー):
僕はモザイクかけないですからね。気にしないです。訴えられたら訴えられたらで仕方ないんだと思うんですよ。ノーモザイクの方が、結構褒められたりもするんですよ。
過激な“私人逮捕系”動画を投稿すると、再生回数が大きく伸びたという。
杉田容疑者(逮捕前のインタビュー):
結構伸びてますよ、かなり。ツイッターのインプ(表示数)とかも6万ちょっとで。
最近この転売(の動画)とかやり出して、だいぶインプ伸びましたね。
実際に“私人逮捕系”動画を見ている人に話を聞いてみると、「実際ね(私人逮捕を)見たことないから、気になって好奇心で見ちゃうよね」「スカッとするような部分が大きいんじゃないかなとは思いますね」「非日常感というか、一種自分では体験し得ないスリルみたいなのが、動画を通して味わえるっていうところなんですかね」といった反応が返ってきた。
動画を通じて味わうのは、悪いことをしている人を懲らしめる“非日常感”や“爽快感”だった。
一方、杉田容疑者は、その動機をこう断言した。
杉田容疑者(逮捕前のインタビュー):
正義とか世の中の役に立ちたいとか、あんまり言わないですよね、僕は。
(目的は)もちろんお金です。生活のためですね。
「逮捕されるようなことはしないで」母の切なる思い
金目当てのために、私人逮捕という名目で無実の人の顔をさらした杉田容疑者。息子の逮捕を受け、母親は…
杉田容疑者の母親:
一明って、優しかったですよ。本当。でもね、本当、逮捕されるようなことしたらいけないよね。逮捕とかされるようなことは、もうしないでって言いたいですね。
元警察官僚の澤井康生弁護士は、杉田容疑者の違法行為についてこう指摘する。
澤井弁護士:
今回のケースについては、二重の意味で違法な行為だと思います。無実の人を勝手に現行犯逮捕だと言って逮捕してしまっている行為がまず違法。YouTubeにあげてその人の名誉を毀損しているので、その点でも違法だと思います。
(「Mr.サンデー」11月19日放送より)