86年メキシコW杯での一戦で主審を務めたアリ・ビン・ナセル氏が当時を回想

 アルゼンチンの英雄ディエゴ・マラドーナが25日に60歳で亡くなった。1986年メキシコ・ワールドカップ(W杯)でマラドーナ氏が決めた伝説の”神の手”を見逃したチュニジア人主審アリ・ビン・ナセル氏がその試合のことを回想。歴史的一戦で主審を務めたことを「光栄に思う」と振り返った。英公共放送局「BBC」が報じている。

 マラドーナ氏はアルゼンチンがイングランドに2-1で勝利したこの試合で2つの伝説を残した。1つは後半4分にGKピーター・シルトンとの競り合いのなかで手を使ってボールを押し込んだ”神の手ゴール”。そして、そのゴールからわずか4分後、センターライン付近からドリブルで相手選手を次々に抜き去って決めた”5人抜きゴール”。いずれもマラドーナ氏の代名詞ともいえるゴールをW杯の大舞台、それも同じ試合のなかで決めてみせたのだ。

 この試合で主審を務めたのがビン・ナセル氏だ。同氏は神の手ゴールについて「マラドーナはピーター・シルトンと同時に宙に飛び上がった。彼らは2人共私と反対を向いていた」とボールがマラドーナ氏の手に当たったかどうかは見えなかったと語っている。

「私は初め躊躇していた。ピッチの中央に戻り、ゴールを確認していた(アシスタントレフェリーの)ドチェフを見た。彼はハンドボールの合図を出していなかった」

 ビン・ナセル氏はアシスタントレフェリーの判断を尊重し、神の手を見逃したという。「試合前にFIFAが明確な指示を出していた。もし同僚が私よりもいいポジションいた場合はその見解を尊重すべきだだった」と判定の正当性を主張している。

 そして、ビン・ナセル氏は2点目の5人抜きゴールについても次にように語っている。

「彼は中盤から勢いよく走り出した。私は近くから彼を追いかけた。マラドーナのような選手のレフェリングをするときは、目を離すことができない。彼ら(イングランド代表選手)はマラドーナを3度も倒そうとしたが、彼の勝利への欲求が彼を前へ押し進めた。彼がボックスに入るまで、私は『アドバンテージ』と何度も叫んだ。

 私はボックスの外で見ていたが、彼がどのように3人のディフェンダーを振り切り、50メートルも走ってきたのだろうと思っていた。私は『ディフェンダーが彼を倒すだろう』と考えていた。PKの笛を吹く準備もできていた。だが、驚いたことに彼はドリブルでディフェンダーとGKの間をすり抜け、世紀のゴールを決めたんだ。

 もし私がいずれかのファウルで笛を吹いていたら、あんなに素晴らしいものを見ることはできなかった。私が与えたアドバンテージは、最も誇りに思う成果の一つだ」

 ピッチレベルでそのプレーを目の当たりにしたビン・ナセル氏はマラドーナ氏のドリブルは想像を遥かに超えるものだったと回想していた。

Football ZONE web編集部