【増嶋竜也氏インタビュー|前編】兵藤慎剛や松本光平らが参加のプロジェクトを発案

 昨季、ジェフユナイテッド千葉で現役を引退したDF増嶋竜也氏が新たな挑戦に臨んでいる。「#Reback -もう一度Jの舞台へ-」と題して、現在未所属となっている元Jリーガーたちの練習を支援するプロジェクトを発案。公式ツイッターを通して、自身の思いを綴ったところ、賛同者が現れ、今では16人の選手とともに大阪・Jグリーン堺で“ミニ合宿”を行っている。横浜F・マリノスなどで活躍したMF兵藤慎剛や、オセアニアのクラブを中心にプレーし、昨年“失明危機”に陥ったMF松本光平らが参加。引退直後から現役選手のために活動している増嶋氏が「Football ZONE web」のインタビューに応じ、その理由などを語った。(取材・文=Football ZONE web編集部・小杉 舞)

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「チームがなかなか決まらない選手からたくさん連絡をいただいた時に、ぼそっとツイッターでつぶやいた。1月末ぐらいだったけど、そのつぶやきを見た賛同者から『ぜひ一緒にやりませんか』という連絡をもらったのが最初だった」

 今回のプロジェクトを立ち上げたきっかけは自身の現役引退だった。かつての仲間たちから続々と「引退お疲れさまです」とメッセージをもらうなか、増嶋氏のもとには「チームが決まらずに中学校で練習しています」「高校で練習させてもらっています」など、コロナ禍で苦境に立たされている声も届いた。「何かできないかな」。この思いが増嶋氏を突き動かした。

 まずはツイッターで自身の思いを明かした。Jリーグに復帰するために支援をしたいこと、そのために練習場所を提供してあげたいこと。賛同者が現れてからは2週間ほどでミニキャンプスタートにこぎつけた。

「まずはどうやったらチームとか関係者が気にかけてくれるのか、見てくれるのかと思った時に、みんなが同じ練習場所で練習したら見に来てもらえるし、みんなを見てもらえるかなと思った。選手のモチベーションも、バラバラで練習していたら映像も見られないし、行動に移すのは難しいと思う。みんながコンディションの良い状態の姿を一つの場所で見られれば、少しでも可能性が高まると感じてこういうアイデアになった」

 慌ただしく準備をするなかで、最初に集まった選手は3人ほど。ツイッターでスタッフと同時に参加選手も募集をかけ、徐々に増えていった。開催の1週間前には10人以上集まり、今では16人。監督にはガンバ大阪などで活躍したMF武井択也氏が就任し、スタッフも全員で4人となった。施設との話し合い、試合のセッティング、目まぐるしく日々を過ごすなかで、気付いたこともあった。

「思いが強いと意外と伝わるのかな、反応してくれるのかなというのは今回のプロジェクトで感じた。僕自身、めちゃくちゃいろんな人に電話した。どういう選手がいて、どういう状況に置かれているか知ってもらうために。チームが決まらない選手に対して、何をしているんだろうと不安になるサポーターもいると思うので、発信しないとこのまま終わっちゃうのは悲しすぎると思った」

「ゼロの知識の状態からスタートして…」手探りで進んだ今回のプロジェクト

 キャンプは計3週間にも及び、7日に予定されているFC TIAMO枚方との練習試合で終了予定。今ではJ3やJFL、地域リーグからの視察もあり、選手たちは懸命にJ復帰を目指している。

 増嶋氏自身、昨季悩んだ末に引退を決意。今年はセカンドキャリアを考えるうえで向き合う1年にしようと決めていた。

「コーチとかしたくてどこか入ってみたいと思っていたけど、発表が(昨年)12月20日ということもあって、どこもほとんど編成も決まっていた。だから2021年はどこかにねじこんでもらうというより、一番は体を休ませようと。好きなことをやって家族との時間も大事にしたかった。だからあんまり仕事、仕事とはならずにリラックスしながらいろんな世界を経験しようと思った。今では、指導者の道もいいなと思うけど、今回のプロジェクトをやってみて、いろんな企画をするのも大変だけど面白いなと思う。すごく勉強になった」

 プロジェクトを進めていくうちに、現役時代に知らなかった側面を知ることもできた。裏方の大変さ、スケジューリングの難しさ、選手へのフォロー……。増嶋氏にとって何もかもが初めてで、経験となった。

「ゼロの知識の状態からスタートして、いろんな人に助けてもらっていたけど、段取りができていなかったり、ご迷惑をかけることも多くて反省している。ちょっと甘く見ていた部分もあった。スムーズにいくこともあるかなと思ったけど、選手一人ひとりの感情があったり、施設の時間があったり、お金をどういうふうにやりくりするのか、というところも」

 昨年の現役引退後、すぐに行動へ移し、プロジェクトを発案した増嶋氏。セカンドキャリアも、指導者という一択から自身で新たな可能性を広げた。J復帰を目指す選手たちと手を取り合い、次なる挑戦の場を目指して突き進んでいる。

Football ZONE web編集部