1968年メキシコ五輪以来となるメダル獲得を後押しする存在

 東京オリンピックへ強化を図るU-24日本代表は、12日にジャマイカ代表との親善試合を4-0で勝利し、最終登録メンバー18名の発表前の活動を終えた。候補選手たちは、自分たちの名前が最終メンバーに入るかどうか、気を揉む時間を迎えているだろう。

 その一方で、東京五輪のメンバー入りが確実となっているのがオーバーエイジ(OA)の3選手だ。5月31日からU-24日本代表に合流したDF吉田麻也(サウサンプトン)、DF酒井宏樹(浦和)、MF遠藤航(シュツットガルト)の3選手は、ピッチ内外で大きな影響をチームに及ぼしている。

 チームに合流した最初の練習から、ランニングで先頭を走っていた吉田は、ジャマイカ戦でもキャプテンマークを巻いた。その理由について横内昭展監督は、「練習中、試合の中でも常にチームの勝利のために何をしなければいけないかを行動、言葉で表してくれる。引っ張ってきてくれたと思う。それに応じて、選手たちも言われるばかりでなく自分で考える行動も出てきたと思う」と語り、若いチームに与えている好影響を口にした。

 ピッチでは、日本代表との『兄弟試合』に途中出場した遠藤が、強度の高さと落ち着きをもたらし、試合の流れを一気に引き寄せた。その2日後に行われたU-24ガーナ代表戦(6-0)では、OAの3選手が初めてそろって先発出場し、能力の高さを見せつけて、チームに安定感をもたらした。

 初めて彼らを迎えた試合後、久保は「安定感もあって、自分たちが奪って欲しいところで奪ってくれる」と、その効果を語った。「自分の一番近くには、酒井宏樹選手がいましたが、やはりモノが違うなと改めて思いました。オーバーエイジだからというよりは、あの3人はちょっと抜けている。なかでも酒井選手は体の使い方やもともと持っているモノがすごい。プラス努力があって、ああいう形になったと思います。フランスとかにいても、フランス代表の右サイドバックとやっても遜色ない」と、そのプレーを絶賛していた。

ボランチの1枚と左サイドバックを除く4人はフル代表と同じ顔触れに

 プレー以外でも、日本が5点をリードして迎えた後半26分に、MF田中碧がセンターサークル付近でアフター気味に蹴られて倒れこむと、すかさず吉田がファウルをした相手選手に駆け寄り、ユニフォームを掴んで強く抗議した。

 その理由について吉田は「僕は長谷部(誠)さんみたいに優等生ではないので、かわいい後輩が削られたらやっぱりそこは行かないといけない。テレビで観ている人は『オーバーエイジなのに大人気ない』と思うかもしれませんが、これもゲームマネジメントのひとつ。特に練習試合でのこういったシーンは、『次やったら許さないぞ』という意思表示を出さないといけない。実際にあのプレーの後は、ほとんどラフプレーもなくなったと思う。ジャッジだったり、今は無観客ですがサポーターを味方にしたりすることも、試合をマネジメントする一つの術。そういうところはみんなに見て感じてほしい」と説明した。

 プレーはもちろん、それ以外のところでも、どうすればチームが優位になるかを知り、それを実践できる選手の存在は、チームにとって間違いなくプラスになる。また、その姿を間近で見ることで、若い選手たちが学べることの多さも、今後の彼らの財産になるはずだ。

 OA枠の採用の是非については、五輪が開催されるたびに話題となる。OAの3枠が使えるのは、予選が終わってからの本大会のみ。予選を戦ったU-24年代の選手たちを可能な限り本大会に出場させたほうがいいのではないかという声も理解できる。

年   開催地    オーバーエイジ出場選手       大会結果
1996年 アトランタ オーバーエイジなし            GL敗退
2000年 シドニー  GK楢﨑正剛、DF森岡隆三、MF三浦淳宏  ベスト8
2004年 アテネ   GK曽ヶ端準、MF小野伸二        GL敗退
2008年 北京    オーバーエイジなし            GL敗退
2012年 ロンドン  DF吉田麻也、DF徳永悠平         4位
2016年 リオ    DF藤春廣輝、DF塩谷司、FW興梠慎三   GL敗退
2021年 東京    DF吉田麻也、DF酒井宏樹、MF遠藤航   ???

 今回、招集されたOAの3選手は、いずれも守備面に特徴のある選手たちだ。ここに負傷離脱した22歳のDF冨安健洋(ボローニャ)が加われば、ボランチ2人と最終ラインの4人の計6人のうち、ボランチの1枚と左サイドバックを除く4人は、そのままフル代表と同じ顔触れになる。サッカーは失点をしなければ負けない競技だ。結果を出すことを最優先に考えれば、可能な限り失点をしない戦い方を模索するのは理に適っている。

“エース”として期待の久保もOA効果に言及 「大人のサッカーになり、レベルも上がる」

 ポイントとなるのは、短い準備期間のなかでどれだけOA枠の選手たちがチームに溶け込めるかだが、今回のU-24日本代表にはA代表経験者も多く、過去の五輪代表と比較しても、その点はスムーズだ。ジャマイカ戦では、OAの3人に加えて、田中もフル出場した。その理由として、交代枠の上限やMF板倉滉不在の影響も考えられるが、攻守の軸となるボランチに入る遠藤と田中のコンビを熟成させる狙いもあったはずだ。

 4-0と快勝したジャマイカ戦後、遠藤は「まだミスは多いし、もう少し攻撃の形は作れたと思います。足が止まった部分もあるのでやりきらないといけない」と、反省を述べた。それでも田中とともにゲームをコントロールしながら、周囲と連動してU-24代表初ゴールを記録。右サイドバックの酒井も、相手の攻撃を寸断すると、豊田スタジアムからは『さすが』というような驚嘆のどよめきが起きた。U-24ガーナ戦のような見せ場はなかったが、吉田も最終ラインを統率しながら、4バック、3バックの両方に対応できる柔軟性を披露。セットプレーの際には積極的にゴールを狙い、高さが武器になることも示した。

 左サイドバックで出場したMF旗手怜央は、遠藤がゴールを決めた際、フリーランニングでマークを引きはがす役割を果たした。OAの選手たちと共演した試合を振り返り、「すごく楽しくできました。多少、緊張もありましたが、オーバーエイジの選手、A代表の選手と一緒のピッチでプレーできたのは、僕自身楽しかった。本当によかったなと思います」と、好印象を語った。

 また、ガーナ戦後もOA効果を語った久保は、「オーバーエイジ3人が入ることによって試合が面白くなるし、大人のサッカーになるし、よりレベルも上がる」「すごくレベルの高い3人が入ったことで、自分たちの底上げにもつながります。融合というよりは、助っ人外国人という感覚。3人の選手にはプレッシャーもあるかと思いますが、そんなプレッシャーも気にならないような試合を普段からやっていると思うので、自分たちは力を借りて、(登録メンバーに)選ばれた選手が一緒に戦えればいいと思います」と、このOA3選手がチームの軸になっていくことを歓迎した。

 ガーナ戦に続いて2試合連続ゴールを決めた堂安も「金メダルしか狙っていない」と、いよいよ近づいている本大会に向けてコメント。日本がサッカーでメダルを獲得したのは、1968年のメキシコ五輪が唯一となっている。チームの戦力を高める、頼れるOAトリオを加えた東京世代は、歴史を塗り替えることが期待される。

Football ZONE web編集部