W杯アジア2次予選の戦いを総括、チームの「規律の高さ」「メンタルの強さ」を評価

 日本代表は15日、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の最終戦でキルギス代表に5-1と快勝し、8戦全勝、46得点・2失点という圧倒的な成績を残して9月から始まる勝負の最終予選へと駒を進めた。森保一監督が率いるチームの2次予選での戦いぶりを、元日本代表の識者はどのように見たのか。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、2次予選で見せた森保ジャパンのパフォーマンスと、最終予選に向けたキーポイントを語った。

   ◇   ◇   ◇

「現在の日本代表はU-24代表のメンバーも含めて、本当にチーム全体の規律が高く誰が試合に出てもサボることがない。特に浸透しているのは、ボールを取られた後の守備への切り替えの早さで、これは『スーパー』と言ってもいいレベル。誰が出てもしっかりとやり抜く。その規律の高さは森保監督が作ってきたものだし、途中出場でピッチに立った選手にも当たり前のように体に叩き込まれてあって、表現してくれている」

 金田氏に現在の日本代表の印象を訊くと、真っ先にチームとしての“規律の高さ”を挙げた。これは森保監督が2018年ロシアW杯後に就任してから約3年、限られた活動機会のなかでチームに植え付けてきたもの。特に新型コロナウイルス感染拡大後は、選手やスタッフ同士でコミュニケーションを取れる機会が限られており、ホテルの部屋にそれぞれが閉じこもらなくてはいけない状況下で、「チームの中に規律と緊張と競争を植え付けるうえで、見えないところで監督やコーチが選手たちに様々な配慮をしていたのだろう」と、試合やトレーニング以外の時間も含めたマネジメント力を称えた。

「とにかく今の日本の選手からは、メンタルの強さをすごく感じる。欧州組はもちろん、それぞれがプライドを持って自分が選ばれる価値のある選手だと証明しようとしていて、チャンスを与えられたJリーグの選手たちも『日本代表でやっていくんだ』という強い覚悟を見せてくれた」

 だからこそ金田氏は、「残念だったのは……」と言葉をつなぎ、今回の日本代表の活動における物足りなさを口にした。

2次予選の戦いでは確認できなかった、最終予選に向けた“2つの不安要素”

「日本は本当に力をつけてきている。だがW杯アジア最終予選、その先の本大会を見据えた時にさらなる成長を求めたくても、残念ながら2次予選ではレベルの差がありすぎて強化にならない。それを補うために親善試合を組んだとしても、コロナ禍で本当によく来日してくれたけど、残念ながらセルビアも、U-24代表と対戦したガーナもジャマイカも日本が成長の手応えをつかめるような対戦相手ではなかった」

 2次予選の結果を受け、7月1日にW杯アジア最終予選の組み合わせ抽選会が実施され、いよいよ9月2日からカタール行きを懸けた10試合の戦いがスタートする。6チームずつ2グループに分かれるなか、各組上位2チームがW杯出場権を獲得し、3位がプレーオフに回る。金田氏は「最終予選が2次予選のようにいかないことは、選手はもちろん、監督やコーチの誰もが分かっている。最終予選の緊張感、対戦相手のチーム力や個の強さは比較にならない」としたうえで、「しかも開幕する9月は、現在の日本代表メンバーの大半を占める欧州組にとっては新シーズンがスタートして間もない時期。実際にレギュラーとしてゲームに出られている保証などなく、当然、選手個々のコンディションにもバラつきが出てくる」と、最終予選開幕時のチーム作りの難しさを指摘する。

 こうした困難が待ち受けることが予想されるが、金田氏は今年に入ってから国内で行われたW杯アジア2次予選と国際親善試合を観て、「強度のあるゲームが想定できない悲しさ」を感じ、最終予選に向けて次の2点を不安要素として挙げている。

「当然のことだが、毎試合のように大勝する2次予選では“1点の重み”はどんなに意識していても希薄になる。例えばキルギス戦の前半終了間際に守田が与えたPKは、ペナルティーエリア内であることを考えれば、相手に完全に振り切られたあの状況で後方からスライディングタックルに行くべきではないし、最終予選では致命傷になる。あそこは割り切って、中の選手がマーカーを捨ててズレて寄せに行くか、マンマークでしっかりと固めて守り抜くのか。そういう細かな共通理解の積み重ねをしていくべきだろう。

 そしてもう一つは、日本が先制点を相手に取られる状況を今年に入ってから一度も経験していないこと。先制点を奪われ、必死になってその1点を守ってくる相手をどう崩すかというのは、そうした状況を経験しなくてはトレーニングのしようがない。監督の采配が問われるような力が対戦相手になかったため、試したいことが試せないジレンマは森保監督にもあったはずだ」

森保監督の采配面での評価は「隠れているだけで判断できない」

 2019年2月のアジアカップ決勝カタール戦(1-3)や、昨年11月の欧州遠征でのメキシコ戦(0-2)のような状況下になってこそ問われる指揮官の“采配力”。悪い流れを断ち切って1点を取るために、森保監督がどんな指示をピッチ上の選手に送り、選手交代やシステム変更によってメッセージを送るのか。W杯アジア最終予選に向けて、「緊迫した状況での采配がないのは少し不安」と語る金田氏は、昨年のメキシコ戦などで感じた攻撃をどう構築していくのかという采配面での物足りなさは、現在チームが大勝し続けていることで「隠れているだけで判断できない」としている。

 最後に「最終予選のキーマン」について問うと、金田氏はDF吉田麻也、MF遠藤航、そしてMF鎌田大地の3人の名前を挙げた。

「最終予選の厳しさ、ディフェンスの統率力がもっと必要になってくる時、鍵を握るのはやはり吉田になるだろうし、中盤のコントロールタワーとして柴崎や守田など誰と組んでもハイレベルなパフォーマンスを見せる遠藤の存在は大きい。

 そして攻撃面ではもちろん、南野や大迫、伊東もチームに不可欠なプレーヤーだが、誰と組んでもその特長を引き出せる鎌田の影響力は確実に高まっている。さらにプレー面だけでなく、チームとしてなんのためにプレスをやっているのか、奪った瞬間に何を第一優先にするのか、真っ先に縦へボールをつけてほしいといった“発信力”でも存在感を高めている。チーム全体で同じ絵を描くうえで、キーマンの1人になるはずだ」

 金田氏は改めて、選手の能力を見ても、チームの規律を見ても「すごく良いチームに仕上がっている」と森保監督のチーム作りを評価したが、最終予選の戦いはやはり“別物”であり、一抹の不安を覚えているようだ。

[PROFILE]
金田喜稔(かねだ・のぶとし)

1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

Football ZONE web編集部