【月間表彰】「月間ベストアグレッシブプレーヤー」のMF山口蛍が語るキャリアの転機と五輪

「DAZN」のパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」では、各月ごとに各部門の表彰を実施している。「Football ZONE web」では、現役時代に強靭なフィジカルと戦術眼を武器に日本代表としても活躍した福西崇史氏に、その月に最もアグレッシブなプレーを見せた選手を表彰しているが、6月はヴィッセル神戸のMF山口蛍が選出された。

ボランチとして日本代表にまで上り詰めた2人だが、守備をするようになったのはプロになってからという、意外な共通点が対談のなかで明らかになった。2012年のロンドン五輪を戦ったU-23日本代表に選出されるようになってから、プレースタイルを大きく変えたという山口が、当時のチームと現在のU-24日本代表の違いを語るとともに、メダル獲得に大きな期待を寄せている。

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――山口選手は、福西さんの現役時代のプレーはご覧になられていましたか?

山口 ワールドカップ(W杯)の時とかは見ていました。フィジカルも強く、参考にする部分はたくさんありました。

福西 ありがたいですね。ただ、僕は2008シーズンでJリーグを引退して、山口選手は2009年にJリーグデビューをしているので、対戦したり一緒にプレーしたりすることができなかったのは残念ですね。体感してもらったら、もっと分かってもらえたでしょうし、逆に僕も山口選手を相手にしたら大変だったと思うんです。めちゃめちゃ嫌だなというのは、見ているだけでも思いますから、実際に対戦したら、それがもっと分かったはずです。逆に味方にしていたら、ものすごい有難みを感じられたでしょうね。

――山口選手はJリーグのトラッキングデータでも、全体で5位という運動量でした。両方のペナルティーエリア付近で決定的な仕事ができるとなれば、相手からしたら嫌な存在ですよね。

福西 それはそうですよ。ボールのあるところに山口選手がいるんですから。それは意識しないといけないですし、嫌な選手の1人ですよ。現代サッカーは、走れないといけませんからね。

山口 それは思いますね。

福西 だから、僕はその時代ではなくて良かったです。僕は周りを走らせて生きてきましたが、今は自分も走らないといけないので大変だろうなと思います。

山口 僕も、もともと走ることは得意じゃなかったんですよ。ユースの時とか、プロに入りたての時は、今のように走っていませんでした。試合に出始めてとか、自分が試合に出るためにはどうしたらいいんだろうといろいろ考えた時に、「もっと運動量を増やさないといけない」とすごく思いました。

 それが決定的になったのは、関塚隆監督の時のオリンピック代表が始動して、自分もコンスタントに呼ばれて、試合にも使ってもらっていた時です。その時にそういうプレーをしていて、「自分が生きていくためには、こういうことをしないといけないな」と思って、その時からプレースタイルを変えて、今に近いような形になっていきました。

福西 そうだったんですね。僕もFWとしてプロに入って、プロになってからボランチになりましたが、山口選手も大きくプレースタイルが変わったんですね。

山口 はい。僕もユース年代の時はトップ下とか、2トップの1枚をやっていたので、もっと攻撃的な選手でした。結構、さぼったりもしていたのですが、そのままトップに上がっても最初は全然ダメでしたね。

福西 もう僕と一緒ですね。だって守備したことなかったでしょ?

山口 はい、あんまりやっていなかったです。

福西 そういう選手は守備をしなくていいですからね。ユースとかでも。僕はもっと弱小チームだったので、もう守備なんてすることがありませんでした。プロに入ってから、すごい壁にぶつかった感じでした。

成長のための五輪から結果を出すための五輪へ、現代表は「完成している選手が多い」

――今、五輪の話も出ましたが、もうすぐ東京五輪も開幕します。先輩オリンピアンとして、何か今のチームにアドバイスなどはありませんか?

山口 アドバイスはないですね。僕たちが出たロンドンの時と今の代表チームでは、戦い方を含めて全然違います。それこそあの時は、全員が走って戦うようなサッカーで、一体感を持って全員で勝っていたようなチームだったので。今の代表はやっぱり個で打開できる選手がたくさんいるので、当時とは全然違うのでアドバイスはありません。オーバーエイジを含めて、すごく良いメンバーが揃っているので「やってくれそうだな」という期待しかないですね。

――今の五輪代表選手のなかにも、山口選手のように所属チームと違うプレーが求められて、新たなプレースタイルを見つける選手も出てくるかもしれませんね。

山口 どうですかね。今のU-24日本代表の選手たちは、所属クラブで試合に出ているじゃないですか? 僕らの世代はオリンピックの前の年まで、あまり所属クラブで試合に出ている選手がいなかったんです。僕は本当に試合にあまり出ていなくて、オリンピックイヤーの年のJリーグから試合に出始めたので、今のU-24の選手は海外でやっている選手も多く、経験もたくさん積んでいる選手が多いので、もう完成しきっている選手が多いのかなとは思います。

福西 それは思いますね。以前は成長のためのオリンピックでしたが、今はもう結果を出すためのオリンピックチームみたいな感覚ですよね。だから、世界に近づいた感じはしますし、自国開催ですからメダルを期待したいですね。

 今日は貴重な話をありがとうございました。後半戦も山口選手には、今のプレーを続けて、背中でチームを引っ張っていってほしいですね。実績を含めて、それができる選手だと思っています。あとは、もっと前面に出てきていいかなと思います。今のプレーをやりながらも、黒子に徹するのではなく、「これはこういう意図があってやったんだ!」というのを示して、影の支配者的になってほしいなと思います。

山口 なかなか難しいですが、頑張ります(笑)。チームとしては今、神戸は3位でAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場圏内にいるので、この順位をキープして、シーズンが終わる時にACL出場権を獲得できたらいいなと思っています。やっぱり昨年のACLはすごく楽しかったですし、ACLがもたらすチームへの影響も大きいと思うので、また来年その舞台に立ちたいと思うので、チームとして一つの目標を持って戦っていきたいと思います。

福西 分かりました。本日はどうもありがとうございました。

山口 ありがとうございました。

[プロフィール]
福西崇史/1976年9月1日生まれ、愛媛県出身。95年にFWとしてジュビロ磐田に加入すると、プロ入り後にボランチへコンバートされ黄金時代を迎えたチームの中盤を支えた。J1通算349試合62得点の成績を残し、Jリーグベストイレブンも4度受賞。日本代表としても国際Aマッチ64試合7得点を記録し、2002年日韓大会、06年ドイツ大会とワールドカップに2度出場した。04年アジアカップでは優勝を経験している。

Football ZONE web編集部