【J番記者コラム】残留を争う柏と対戦、先制点がポイントのなか前半は慎重な戦いに

「リスクを冒さないことこそ、最大のリスクだ」

 どこかで聞いたことのあるセリフだが、それが当てはまる展開となった2021明治安田生命J1リーグ第32節の柏レイソル戦。20チーム中4チームが降格する厳しいレギュレーションの異例のシーズンも残り7試合となり、残留争いの対象チームも「リーグ戦における勝ち点差が残り試合数を上回ると逆転残留は難しくなる」という定説から言えば、現在勝ち点34で13位の柏までの8チームで残留を争うことになる。清水エスパルスが勝ち点32の15位ということで、この試合は清水が勝利すれば柏との順位が入れ替わる戦いでもあった。

 柏はここ2試合で前半の早い時間帯で失点して先制点を奪われていることもあり、DF古賀太陽は「とにかく慎重に入るというか、失点をしないところはより意識した」と話したように、前線からプレスに行かず、ある程度清水にボールを持たせてカウンターを狙う形で試合を進めた。一方の清水もカウンター攻撃を警戒し、攻撃に人数をかけずにロングボールを柏DFの裏へ入れる戦い方でお互いにリスクを冒さない単調な前半となった。

 そもそもこの2チームの今シーズンの勝ち点の取り方が酷似している。柏は31試合中、先制した場合は9勝1分で、逆に先制されると1勝2分17敗。0-0の引き分けは1試合のみ。清水も先制すれば6勝6分1敗。先制されると1勝3分12敗で、0-0の引き分けは2試合。

「先制点」がカギとなり、お互いに逆転勝ちが1試合しかないことを考えれば「先に失点をしない」と慎重にならざるを得ないことは理解できた。ただ、両軍ともにミスが多く、セカンドボールは清水が拾えていたが、決定的なチャンスは両チームを合わせても前半16分、MFマテウス・サヴィオが抜け出し、GK権田修一との1対1からのシュートの場面ぐらいだった。

先制点を奪われると勝ち点獲得率30%の清水、選手を投入して反撃に出るも…

 動きがなかった前半から一転して後半は立ち上がりから激しいゴール前での攻防となった。後半2分、MF竹内涼からの浮き球をFWチアゴ・サンタナがヘディングでそらすと、ペナルティーエリア内でDFエメルソン・サントスに当たってゴール前にこぼれた。そこへMF西澤健太がフリーでシュートを放ったが、枠を捕らえることはできなかった。すると同8分に柏が清水陣内の左サイドのスローインからボールをつなぎ、逆サイドまで展開。そこへエリア内まで侵入したDF三丸拡が左足を振り抜き、GK権田も反応できないシュートが清水ゴールに突き刺さった。

 三丸は試合後、「確かにリスキーな部分もあるが、行くことで逆にチャンスになる」と話し、結果を恐れずにリスクを冒して攻撃参加したことで勝ち点獲得率100%の先制点を得ることができた。この場面では清水の選手の戻りとポジショニングに問題があったかもしれないが、三丸の思い切りの良いシュートを褒めるべきだと感じた。

 先制点を奪われると勝ち点獲得率30%となってしまう清水は、後半15分に8試合ぶりにメンバー入りしたMF中山克広と6試合ぶりにメンバー入りしたMF河井陽介を投入。同25分には2試合ぶりに出場となったMFベンジャミン・コロリを入れて反撃に出た。

 中山のスピードと河井の配給、そしてB・コロリの攻撃力で決定機を作るが、柏ゴールを割ることができなかった。さらに同40分には左サイドバックのDF片山瑛一に代えてFWディサロ燦シルヴァーノを送り出す。それによりアクセントになっていた中山をサイドバックに下げることを選択したが、あの場面ではリスクを冒し3バックにして、前線に人数をかけても良かったのではないかと感じたが、試合はそのまま0-1で終了し、残留争いを一歩抜け出す戦いは柏に軍配が上がった。

 内容的にはそこまで良かったとは思わないが、ネルシーニョ監督はこの清水戦のために準備したことが実現でき、「攻守における戦術はほぼパーフェクトに近かった」と大きな勝ち点3に満足している様子だった。

 柏の術中にハマってしまった試合となったが、今節の結果で降格圏の20位・横浜FCと18位・大分トリニータが勝ち点3を得て、17位・湘南ベルマーレは勝ち点1を手にし、その勝ち点差は縮まったが、この試合の終盤に見せた攻撃には勝利への執念は感じられた。今後の対戦相手は清水よりも上位チームが続き、簡単には勝ち点を奪えない戦いが予想されるが、選手たちには仲間を信じ、強い気持ちを持って試合に臨んでくれることを信じている。

サポーターも一緒に残り6試合を戦ってほしい

 最後に、この試合で清水サポーターの一部が「Jリーグ新型コロナウイルス感染症ガイドライン」に違反する「声出し」と「指笛」の禁止行為を行ったとして、クラブが公式サイトに注意喚起を掲載した。

「静かなるコンキスタドール」のロティーナ監督でさえ試合後に警告を受けるほどのフラストレーションが溜まる試合であり、声を出したい気持ちも分からないではないが、新型コロナウイルスの感染が終息したわけではない。

 チーム成績同様に、まだまだ我慢をしなければならない日々は当分続くことになるが、何よりもここからはチームに対して1人でも多くの後押しが必要になるだけに、違反行為での入場禁止や再びの無観客試合など厳しい処分を受け、サポートすることができなくなることは避けなければならない。

 拍手だけの応援でも清水のサンバのリズムは選手たちの勇気となっているはずだ。まずはJ1残留を後押しし、来シーズンこそ選手たちとスタジアムで歓喜の声を上げられるようにサポーターも一緒に残り6試合を戦ってほしいと思っている。

Football ZONE web編集部