盛大な引退セレモニーを行った長谷部、思い通りの形で現役生活に別れ

 元日本代表キャプテンの長谷部誠は盛大な引退セレモニーとともに、40歳で現役生活に別れを告げた。

 誰もが思いどおりの引退ができるわけではない。怪我が理由での引退なのか、それとも戦力外となっての引退なのか。どのくらい深く長くクラブでプレーしてきたのか。様々な理由が絡まり合う。そのシーズンのチームの調子や順位、立ち位置だって影響してくる。

 長谷部が34歳の頃、地元紙のインタビューで「40歳までプレーするつもりは?」と聞かれた時、「もちろん!」と答えたあとに、「(元ペルー代表FW)クラウディオ・ピサーロはまだプレーしているし、(元ブラジル代表DF)ナウドも36歳だけど全然元気」と答えていたことがある。

 シャルケなどで大活躍したブラジル人センターバックのナウドだったが、2018-19シーズンに出場機会が激減し、19年夏にフランスリーグのASモナコに移籍。だが獲得を熱望したティエリ・アンリ監督が加入直後の20年1月下旬に解任となり、新監督レオナルド・ヤルディムはほかの選手を優先して起用したため、ナウドは行く手を失ってしまった。

 当時シャルケからの移籍はドイツでも大きなテーマとして議論されていた。

「シャルケでは素晴らしい時間を過ごすことができたんだ。でも最終的に僕は戦力外の状態になってしまい、何をやっても『ここではもうプレーすることはできないんだな』って分かったんだ。選手として必要な信頼を感じることができないから移籍がしたいと伝えたよ」

 モナコとの契約が切れたあとには「いくつかのオファーはあったけど、家族の元を離れてまでやりたいと思えるものはなかった。納得のいくオファーがなかったら、それがおしまいの時だと思う」と話していたが、結局そのまま次のプレー先は見つからずに静かに引退の時を迎えた。

 そういった様々な背景を考えると、長谷部がセレモニーを盛大にやってもらえるのは、本当に限られた一握りの選手しか享受できないものだ。

 長谷部にしても、タイミングや監督との折り合いが上手くいかなければ、もっと早くに引退を決めたり、あるいは他クラブへの移籍を決意し、そこで上手くいかずに燻るパターンもなかったわけではない。思いもよらぬ怪我に見舞われることだってあったかもしれない。

 あるいは今季もっと頻繁に起用されたら、おそらく普通にいいプレーを見せていたことだろう。そうしたら1年の契約延長だってあったかもしれない。そんな可能性だってあったわけだ。

 だからあるがままを受け入れて、これからにつなげていくことがきっと大切なのだ。

「あまり悔いとか後悔がないかもしれない。こうしてね、健康な身体で辞められる。ゼップ(セバスティアン・ローデ)はね、キャプテンとして怪我なんかもあって、最後あまりチームの力になれなくてという話をしてたから、後悔のところは彼の場合あったのかなと思います。僕の場合は自分でも大丈夫かと思うくらい、淡々としているというのはありますね。僕は自分で引退時期を決められる権利をチームからいただいた。ありがたいし、それは今の心の持ちようにも影響していると思う。感謝していますね」(長谷部)

FOOTBALL ZONE編集部