本大会出場決定後、指揮官が電撃辞任。サウジアラビア、新体制で狙う番狂わせ【ロシアW杯全32チーム紹介】

本大会出場決定後、指揮官が電撃辞任。サウジアラビア、新体制で狙う番狂わせ【ロシアW杯全32チーム紹介】

アジア最終予選後に監督が交代

 6月14日に開幕する2018FIFAワールドカップロシア。グループリーグの組み合わせも決定し、本大会に向けて期待感は高まるばかりだ。4年に一度開催されるサッカーの祭典には各大陸予選を勝ち抜いた32チームが参加する。フットボールチャンネルでは、その全チームを紹介していきたい。今回はグループAのサウジアラビア代表を取り上げる。(文:河治良幸)

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【サウジアラビア代表】
FIFAランキング:63位(2017年12月)
監督: フアン・アントニオ・ピッツィ(2017年〜)
3大会ぶり5回目の出場
最高成績:ベスト16(1994年アメリカ大会)
アジア最終予選グループB2位通過

 最終予選で日本、オーストラリアと同組になったサウジアラビアは苦しい試合展開でも何とか勝ち点を積み重ね、最後はすでに首位突破が決まっていた日本にホームで1-0と勝利して3大会ぶり、5回目のW杯出場を決めた。

 しかし、当時指揮をとっていたファン・マルヴァイク前監督がコーチングスタッフの解任や自身の出国制限を強要されたことなどを不服として電撃退任。前アルゼンチン代表のエドガルド・バウサが引き継いだものの、親善試合の成績不振で短命に終わった。そこから現在フリーの指導者が浮かんでは消えたが、最終的にはW杯予選でチリ代表を率いていたフアン・アントニオ・ピッツィが就任することとなった。

 スペイン系アルゼンチン人のピッツィはバルセロナやバレンシアでプレーした経験を持ち、スペイン代表として98年フランスW杯に出場した実績がある。監督としてもバレンシアや母国のロサリオ・セントラル、サン・ロレンソなど着々と経験を積み重ね、現アルゼンチン代表監督のホルヘ・サンパオリを継いだチリ代表では16年コパ・アメリカを制し、W杯の開催国ロシアで行われたコンフェデレーションズ杯で準優勝したが、南米予選で思う結果を出せずに敗退していた。

 12月末から年明けにかけて行われたガルフカップは強化担当のクルノスラフ・ユルチッチが監督代理をつとめた。クウェートに2−1で勝利したものの、元日本代表監督のザッケローニ率いるUAEと0−0で引き分け、オマーンにまさかの0−2の完敗でグループリーグ敗退した。

 ただ、FWのムクタル・ファラターをのぞき、通常は約半数を占める王者アル・ヒラルの主力選手が招集外となった中で、18歳のSBサレム・サイードや20歳のMFジャベル・ムスタファといった若手をテストするなど収穫もあったが、半年後に向けてのピッツィ監督がどうチームを組み上げていくか未知数な部分が多い。

 ユルチッチが指揮したガルフ杯ではファン・マルヴァイク時代と同じ[4−2−3−1]ながら、典型的なサイドアタッカーのモハメド・カヌーが右サイド、右利きでストライカーのサルマン・アル・モアシェールが左サイドから頻繁に中へ流れ、UAE代表の司令塔オマル・アブドゥラフマンとアフロの髪型もプレースタイルも似たアリ・アル・ネメールと2シャドーに近いポジションを取る時間が長かった。

 選手選考についてはそう大きく変えることはできないだろう。問題は主力のチョイスと戦い方だ。チリ代表ではテクニックと豊富な運動量を融合した攻撃的なサッカーを掲げたピッツィが“格上”ばかりの相手となる本大会に向け、サウジアラビアの選手たちをどう組織化していくのだろうか。

注目はACLでも活躍したアル・ファラジュ

目標:ベスト16
ノルマ:1勝

 新監督が本格的に準備できる時間は限られている。サウジアラビアの場合ほとんどが国内組であるため国際Aマッチデー以外にもキャンプやクラブチームとの練習試合を組むことは可能だが、これまでのチームを引き継ぎながらオプションを加え、A組のロシア、ウルグアイ、エジプトの対策をして本大会に備えるしかない。

 それでも初戦で開催国のロシアに一泡吹かせ、ウルグアイ戦を何とか乗り切って3試合目のエジプト戦で勝機を見出せればグループリーグ突破の可能性がゼロということはないだろう。セットプレーや後半の選手交代が“番狂わせ”を起こすカギになってきそうだ。

 注目選手は司令塔のアル・ファラジュだ。ACLでも活躍したアル・ヒラルの司令塔はパスワークの中心を担いながら機を見てドリブルを仕掛け、ミドルシュートを狙う。アル・ヒラルのチームメートであるアル・ドサリやアブドゥラー・ウタイフとのコンビネーションも申し分ない。“格上”の強豪国を相手に厳しい戦いになるが、おそらく数少ないチャンスの起点になるのは彼だろう。セットプレーのキッカーとしても期待だ。

 攻守の要となるのがボランチのオタイフだ。運動量が豊富で局面の当たりも強い。ボールを奪ってからのパスも正確で、彼がアル・ファラジュを背後から精力的にサポートできればチャンスの芽も大きくなる。前に攻め上がっての得点力は無いが、中盤の底でスペースを埋め、攻撃陣を支えられるサウジアラビアでは希少なタレントだ。

 試合を決めるべきアタッカーは何人かいるが、最もその可能性を秘めるのはファハド・アル・ムワラド(アル・イテハド)だ。予選突破を決めたホーム日本戦で決勝ゴールを決めた俊足アタッカーで、シュートの技術はチーム随一。当時はスーパーサブとして重宝されていたが、俊敏なテクニシャンを好むピッツィ監督がどう起用していくかは注目だ。

 守備陣では右サイドバックのヤシル・アル・シャハラニ(アル・ヒラル)が高い攻撃能力を備えており、組み立てから正確なクロスまで頼りになる存在だ。長身センターバックのオマル・ハウサウィとオサマ・ハウサウィは守備の生命線であり、彼らがゴール前の中央で相手FWを封じ込めれば、多少押し込まれても守備の破綻にはいたらないはず。またセットプレーの得点源としても勝負のカギを握る。

(文:河治良幸)

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