日本代表が”愚かな失敗”を繰り返さないために。3バック云々だけではない、真の重要点【英国人の視点】

日本代表が”愚かな失敗”を繰り返さないために。3バック云々だけではない、真の重要点【英国人の視点】

必要不可欠なフレキシビリティ

森保一監督が率いる日本代表は16試合を戦い、12勝2敗2分という成績を残した。6月のキリンチャレンジカップ2019では、新たな戦術を導入した日本代表だが、9月には3年後のワールドカップに向けたアジア予選が始まる。今後の日本代表が成功を収めるに必要なものは、戦術だけではない。(取材・文:ショーン・キャロル)

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 森保一監督はこれまで日本代表で16試合の指揮を執ってきた。50歳の指揮官にとって“ハネムーン”の時期はもう過ぎ去ったが、次回のワールドカップに向けた新たなサイクルが迫り来る中、サムライブルーは順調な前進を遂げている。

 サンフレッチェ広島元監督の率いるチームは派手な戦いぶりで新体制のスタートを切ることに成功し、インテンシティの強い攻撃的スタイルで印象的な結果を残してきた。2列目の中島翔哉、堂安律、南野拓実のトリオが攻撃の中心に定着し、最初の5試合で15得点を叩き出した。

 新監督の下で新戦力も加え、日本代表は新たな活力を得たように感じられた。アジアカップでも、決勝では過小評価されていたカタールに残念な完敗を喫したとはいえ、スロースタートから期待を上回る戦いぶりを見せた。

 だが現在はやや落ち着いた状況となったように感じられる。3月にはコロンビアに0-1で敗れたのに続いてボリビアには1-0で辛勝。6月5日にはフルメンバーに程遠いトリニダード・トバゴを相手にゴールを奪えなかったが、その4日後にはやや持ち直しエルサルバドルに2-0で快勝を収めた。

 ここ2試合の話題の中心となったのは3-4-2-1システムの導入だった。だが、フォーメーションの変更はもちろん注目に値する部分ではあるとしても、必ずしも理論上の選手配置のみがチームの姿を決定づけるものではないということも忘れてはならない。

 現代サッカーにおいてはフレキシビリティが必要不可欠である。試合中の困難な状況への適応に苦戦することが過去に何度もあった、日本代表のようなチームであればなおさらのことだ。

過去の教訓

 例として、過去3回のワールドカップを振り返ってみよう。

 2010年の南アフリカ大会では日本は下馬評を覆して決勝トーナメント進出。岡田武史監督は大会直前に戦術の修正を行い、遠藤保仁と長谷部誠の後ろに、もうひとりの守備的MFとして阿部勇樹を加えた。

 これにより安定した守備が見事に機能し、本田圭佑の牽引するチームはカメルーンとデンマークを撃破。だがラウンド16では、明らかに勝てる相手であったパラグアイに対してより積極的なスタンスを取ることができず、結局PK戦で敗れる結果に終わった。

 その4年後のブラジル大会では、初戦の相手コートジボワールが途中交代で投入したディディエ・ドログバのフィジカルの脅威に対抗できず敗戦。続くギリシャ戦では10人になった相手に対して勝負に出ず、0-0で満足するかのような戦いに終始した。

 同じ攻撃パターンを何度も何度も繰り返しつつ、異なる結果が出ることを期待する日本の姿は愚かさを体現するかのようだった。望む結果は得られず、当然のグループステージ敗退に終わった。

 続いて昨夏のロシア大会でもチームは新たな問題を経験した。大会のダークホースとみられたベルギーに対してラウンド16の試合で2-0のリードを奪い、準々決勝進出に向けて順調かに思えた。だが西野朗監督のチームは勝利に向けて、戦い方を調整して試合のペースを変えられなかったことが敗因となった。

 ラストプレーでカウンターからナセル・シャドリに許したあの悔しい失点も含め、最後の21分間で3ゴールを奪われて敗退する結末となった。

代表とクラブで異なるマネジメント

 こういった前例を念頭に置いた森保監督は、賢明にも、3年後のカタール大会に向けた予選が始まる前の段階から、今のうちに異なる戦い方を導入しようとしている。

 代表チームはクラブチームとは異なり、基本的に4年ごとのワールドカップでの結果が成功の尺度となることを考えれば、可能な限り有機的なチーム作りを進めていくことが欠かせない。4年に一度の大会に向けては、現在のチームにいない新戦力の台頭はもちろん、選手たちの調子や状態も今から予測するのは不可能だからだ。

 選手たちは、それぞれの所属クラブでは日々の練習の中で複雑なフォーメーションやプレーパターンに取り組む機会もあるが、代表チームにおいてそれほどの緻密な準備は不可能である。そのため監督は、毎回の試合のたびに、招集可能な選手たちの長所を引き出すことができなければならない。

 だからこそ、選手たちが複数のフォーメーションを経験し、適応を可能にしておくことには大きな意味がある。相手や試合中の状況に応じてどのようなシステムが必要になったとしても、よりスムーズに対応することができるようになるだろう。

 ワールドカップ予選の最初のラウンドでは、日本代表はトリニダード・トバゴやエルサルバドルが見せたのと同じような戦い方をしてくる相手と直面することが見込まれる。

 ボールに対する守備に人数をかけ、日本が試みるパスワークでの組み立てを阻むことを試みるとともに、試合の流れを断ち切るためにピッチ上で“負傷”の手当てに長い時間を費やそうとしてくる。

 選手はそういった場面で攻守両面における集中力を維持し続けることが重要となる。不格好な失点や簡単なはずの得点チャンスでの失敗などに繋がる不注意なミスが生じてくることを避けなければならない。

精神面がミスの原因の場合が多い

 そういうミスがあると選手たちはシュート練習により力を入れようとするが、むしろ技術面ではなく精神面がミスの原因となっている場合が多い。だからこそ、日の丸を身につける試合でも戦術面・心理面の両方で普段どおりのプレーができるようにしておくことが重要だ。

 アジアカップにおいては、冨安健洋や堂安のように海外で成長した選手たちが、国際舞台のプレッシャーに対処できる力を見せていたのが印象的だった。久保建英もピッチ内外で18歳とは思えない成熟ぶりを見せつけている。チームの成長の新たな段階が本格的に始まろうとしている今、そういった選手たちが集中力と冷静さを持ち続けなければならない。

 ワールドカップ予選を突破することはもちろん最大の目標ではあるが、より重要なのはチームがその戦いの中で成長を続けていけるようにすることだ。そのことを意識しつつ、戦術適応力とメンタルの強さを高めていくことが、本大会にたどり着いたチームが成功を収めるチャンスを掴むための鍵となる。

(取材・文:ショーン・キャロル)

【了】


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