いきなり大差がつく試合に

 UEFAユーロ2020(欧州選手権)グループリーグA組第1節、トルコ代表対イタリア代表が現地時間11日に行われ、イタリア代表が0-3で勝利した。前評判の高かったトルコ代表にシュート3本しか許さず、完勝。イタリア代表はなぜこれほど圧倒することができたのか。(文:小澤祐作)

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 世界中で猛威を振るい続けている新型コロナウイルスの影響で1年遅れての開催となったUEFAユーロ2020(欧州選手権)。そのファーストゲーム、トルコ代表対イタリア代表で、これほどスコアに差がついたのは少々意外なことだったか。

 2010年、2014年のワールドカップでグループリーグ敗退に終わり、2017年には60年ぶりにワールドカップ出場を逃すなど、イタリア代表は一時暗いトンネルの中にいた。しかし、ロベルト・マンチーニ監督就任後は光を見出せるように。今大会には、27戦無敗という最高の状態を維持したまま臨むことができた。

 27戦無敗という揺るがぬ事実があったことで、アッズーリは今大会の「優勝候補」とも言われるようになった。その評価は、同ダークホース候補とも称されるトルコ代表との一戦で、確固たるものになったと言えるだろう。

 イタリア代表は立ち上がりから完璧に試合を運んでいたわけではなかった。大舞台でのプレッシャーもあったのか、若干固い入りを見せていたのだ。

 その後徐々に落ち着きを取り戻し、ボールを握って何度か良い形でゴール前に侵入した。が、トルコ代表もチャーラル・ソユンクとメリフ・デミラルのセンターバックコンビを中心に粘りのあるディフェンスを見せる。前半45分間で、0-0というスコアを動かすことは叶わなかった。

 それでも、53分にオウンゴールを誘発し1点を奪うと、66分にはチーロ・インモービレのゴールで2点目。そして79分にはロレンツォ・インシーニェにもゴールが誕生し、後半だけでトルコ代表を3-0と突き放すことに成功した。

 最終的にイタリア代表はトルコ代表に24本ものシュートを浴びせている。被シュート数は90分間でわずか3本だった。では、なぜここまでの差がついたのだろうか。

圧倒的な質を誇っていたのは…

 まず一つは、イタリア代表のハイプレッシャーがかなり効いていたことだ。とくに中盤3枚、ジョルジーニョ、ニコロ・バレッラ、マヌエル・ロカテッリが見せたプレーの質は、格別に高かった。

 トルコ代表を率いるシェノール・ギネシュ監督は試合後「我々の日ではなかった。最初からボールを失い続けてしまい、前へ出られなかった」とコメントを残していた。イタリア代表はボールを失った後素早く切り替え、攻撃的な守備で即時奪回を徹底。ギネシュ監督の言葉通り、トルコ代表の前進を許さなかった。

 最前線チーロ・インモービレを筆頭に、インシーニェ、ドメニコ・ベラルディなど、ピッチに立つ全員が高い位置からの積極的なプレスをサボることがなかったが、上記した通りトルコ代表の大きな悩みとなっていたのは中盤3枚だった。

 バレッラ、ロカテッリの両者は所属クラブでも披露している通り、豊富な運動量を武器にタフなディフェンスでボールホルダーから自由を奪った。ジョルジーニョはその2人に比べ強度という部分は劣ったかもしれないが、読みの鋭さとポジショニングの良さを駆使して何度も攻撃をシャットアウト。事実、インターセプト数4回は両チーム合わせてトップの数字だった。

 イタリア代表の中盤のフィルターが機能したことで、トルコ代表はボールを保持しながら攻めることが難しくなり、攻撃の形はほぼブラク・ユルマズへの1本のロングフィードとなっていた。ただ、単純なロングボールはジョルジョ・キエッリーニ、レオナルド・ボヌッチという百戦錬磨のCBコンビがことごとくはじき返す。そのセカンドボールもジョルジーニョらが的確に回収することで、イタリア代表はペースを握り続けた。

 レオナルド・スピナッツォーラ、アレッサンドロ・フロレンツィの両サイドバックが上がった後の裏のスペースはやや不安だったが、そもそもハイプレスがハマっているため、そこへ精度の良いボールを送り込まれることは限定的。イタリア代表はこうしてトルコ代表の攻め手を削り続け、被シュート数3本に抑えることに成功したのだ。

共通していた2得点の形

 では最後に、なぜトルコ代表の守備をここまで崩すことができたのか。

 トルコ代表は守備時、基本的に4-4-1-1でイタリア代表に対応。ただ、攻撃的SBスピナッツォーラの立ち位置によってはアンカーのオカイ・ヨクシュルを最終ラインに下げた5バックのような形になることもあった。

 トルコ代表の守備は集中しており、前半はイタリア代表も得点を奪うことができなかった。しかし、ボールの即時奪回を徹底したロベルト・マンチーニ監督のチームに対し、ギネシュ監督のチームは守備の継続性を欠いてしまった。そこを、イタリア代表は見逃さなかったのである。

 52分、カウンターに出ようとしたトルコ代表はこれが決まらず、中盤と最終ラインにギャップができたままの状態に。そこへバレッラがうまくポジショニングし、ロカテッリから鋭いパスが入る。バレッラは前を向くと、右側のベラルディにパスを捌いた。

 ベラルディがボールを受けたのはペナルティーエリア内。対峙したウムト・メラズはPKの恐れがあるためそれほど強く来ず、レフティーは比較的楽な状態でクロスを上げた。ソユンクはバレッラにパスが出た時点で最終ラインを飛び出していたため、ゴール前で壁となれず。最後はデミラルのOGが引き起こされた。

 そして2点目、トルコ代表は少し前掛かりになってまたも中盤と最終ラインが間延び。再びバレッラがそのエリアへ侵入し、ボールを持つ。そして今度もPA内のベラルディへパス。ボールを受けた背番号11はなんの問題もなくファーサイドにクロスを送り、スピナッツォーラがシュート→セカンドボールをインモービレが押し込むことになった。

 中盤のフィルターが最後まで機能したイタリア代表と、ボールを持たれ続け中盤と最終ラインの距離感が途中より曖昧となってしまったトルコ代表。このわずかな差が、結果的に3-0というスコアを生むことになったと言ってもいいだろう。

(文:小澤祐作)