J1残留が安泰とは言えないガンバ大阪

明治安田生命J1リーグ第32節、浦和レッズ対ガンバ大阪が16日に行われ、1-1の引き分けに終わった。J1残留を決められていないガンバは貴重な勝ち点1を獲得したが、課題は未だ解決されぬまま。「足りないものは数えきれないくらいある」という選手の言葉が、その実態を示しているのかもしれない。(取材・文:元川悦子)
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 2021年J1も終盤戦に突入。川崎フロンターレの2連覇が秒読み段階と目される中、残留争いの方もヒートアップしている。目下、降格ゾーンにいるのはベガルタ仙台、大分トリニータ、横浜FC、湘南ベルマーレの4チームだが、徳島ヴォルティスや清水エスパルスも安全圏とは言えない。

 昨季2位で、今季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)にも参戦したガンバ大阪もまだ安泰とは言えない状況だ。開幕直後の3月に新型コロナウイルスのクラスターが発生して活動休止に。その後は凄まじい超過密日程を強いられた。

 5月には宮本恒靖前監督が解任され、松波正信現監督が後を引き継いだが、急浮上とはいかなかった。5月末と7月末には2度の連勝があったものの、8月以降は再び負けが込み始め、31節終了時点で勝ち点33の14位に甘んじていた。

 直近の10月2日のコンサドーレ札幌戦は5失点を喫して大敗。この現状を踏まえ、指揮官はインターナショナルブレイク中に守備の修正に着手して、16日の浦和レッズ戦に合わせてきた。浦和とは松波監督就任初戦だった5月16日に対戦し、0-3で破れているだけに、彼自身も何とかリベンジを果たしたかったに違いない。

 昌子源、三浦弦太というDF陣の主軸が離脱中で、韓国代表から戻ったばかりキム・ヨングォンも先発を外れた中で、ボール支配に優れる相手をどう封じるのか。それがこの一戦の重要ポイントだった。ガンバの基本布陣は4-4-2。最終ラインは高尾瑠、佐藤瑶太、菅沼駿哉、藤春廣輝という並びでスタートした。

耐えるガンバ大阪、前向きな要素は…

 4バックをベースにしつつ、攻撃時に3バックを併用する可変性システムの浦和に対し、ガンバは序盤から対処に苦慮した。長短のパスを使い分けながらサイドを攻略し、前線の明本考浩、江坂任らに合せてくる相手のやり方を分かってはいたものの、出どころに効果的なプレスをかけられない。結果としてズルズルとブロックを下げざるを得ず、防戦一方の展開を強いられた。

 得点の可能性が感じられたのは、27分のウェリントン・シウバのシュートシーンくらい。右寄りの位置から山本悠樹から宇佐美貴史へパスが入り、そこからパスを受けた背番号28がペナルティエリアライン付近から右足を振り抜いた。しかし、それ以外の攻撃は単発的な印象が拭えず、頼みのウェリントン・シウバも対面にいる酒井宏樹の守備に阻まれ、決定的な仕事をしきれなかった。前半の支配率は浦和の59%に対し、ガンバは41%。シュート数も13対1。数字上にも苦戦ぶりが明確に表れていた。

 浦和の決定力不足に助けられる形で迎えた後半。松波監督はJ1初スタメンの白井陽斗に代えてパトリックを投入。これで前線が多少なりとも活性化し、宇佐美もシュートへの意欲を見せ始めた。

 飲水タイム後にはケガで長期離脱していた福田湧矢が5か月ぶりにJ1の舞台に登場。サイドでアグレッシブな姿勢を見せ、39分には惜しいシュートを放つなど、気迫を押し出した。依然として浦和に主導権を握られてはいたものの、「何とか耐えて勝ち点を取る」という強い意識がチーム全体から感じられたのは、前向きな要素だった。

 これが終盤の展開につながったのかもしれない。

「11人がしっかり意思統一して守備ができた」

 86分の菅沼が江坂をエリア内で倒したプレーがハンドの反則を取られ、ガンバはPKで1点を失った。が、直後のリスタートから岩波拓也のハンドを誘い、瞬く間にPKをゲット。パトリックがゴール左隅に決めて1-1の同点に追いつく。そして長いアディショナルタイムタイムの末にタイムアップの笛。最終的には敵地で貴重な勝ち点1を得るに至った。

「今日はホンマ11人がしっかり意思統一して守備ができた。今まで結構、失点しましたけど、みんなでしっかりってところは今日はできたんじゃないかと思います」

 好セーブを連発した守護神・東口順昭も前向きにコメントしたが、この内容でドローというのは確かに幸運だった。降格圏にあえぐチーム同士がつぶし合いをしてくれたこともあり、ガンバは一歩、残留に近づいた印象もある。

 しかしながら、直近10戦を2勝2分6敗という黒星先行状態から完全に抜け出せたわけではない。浦和戦もシュート数は20対6と大きく上回られ、迫力あるサッカーができたとは言い難い。ラスト6戦の相手には横浜F・マリノスや川崎フロンターレなど上位陣が多いだけに、耐えて失点ゼロに抑えるのは容易ではない。堅守を維持しながら、攻撃の厚みを加えていくことは、今後の重要テーマと言っていい。

「足りないものが多すぎる」

「奪った後の攻撃のスピードを上げたり、ボールを握った攻撃をもう少し構築していくことが課題。個人個人はボールを持てる力もありますし、攻撃が好きな選手たちなんで。やっぱり先に先制するために、もう少しボックス近くの質を上げていければと思います」と松波監督は話す。ボール保持率を上げ、敵陣深い位置に侵入する時間を長くしなければ、フィニッシュの回数も増やせない。

 宇佐美がゴール前に顔を出すシーンが少ないのは、今のガンバを象徴する現象の1つと見ていい。特に浦和戦前半の彼は下がって組み立てに忙殺されており、切れ味鋭いフィニッシュが影を潜めた。それが今季の4ゴールという数字にも表れている。

 パトリックの得点数が今回のPKによって9となり、2桁まであと1つに迫ったのは朗報だが、他の得点源が少ないのはやはり問題。彼らの総得点26というのは大分、仙台に次いでリーグで3番目に少ない。この問題をクリアしない限り、早期のJ1残留決定、そして名門復活への布石は打てないだろう。

「たぶんJリーグ屈指のあれだけすごいメンバーがいるのに、足りないものが多すぎるからこの順位にいるわけで。足りないものは数えきれないくらいあるんで」

 福田がそう言ったように、宇佐美や倉田秋、井手口陽介ら日本代表経験のある面々はみな歯がゆい思いをしているはず。彼らを見守っているサポーターもそうだろう。だからこそ、彼らは必ずJ1にとどまり、復活へののろしを上げなければいけない。

 浦和戦で手にした勝ち点1をムダにしないためにも、プレスのかけ方やチーム全体の立ち位置など守備面での問題点を改善しなければいけない。支配率を引き上げ、宇佐美やパトリック、ウェリントン・シウバらアタッカー陣の迫力がより発揮できるような形に持っていくこと。そしてゴールという結果を残すこと。それが彼らに課された緊急課題である。

(取材・文:元川悦子)

【了】