サッカー日本代表は5日に行われるカタールワールドカップの決勝トーナメント1回戦・クロアチア代表戦に向けて準備を続けている。

 森保一監督が率いるサムライブルーは、ドイツ代表やスペイン代表と同居したグループを首位で突破。ベスト16の壁を壊し、日本サッカー史上初のベスト8に進出して「新しい景色」を見るための舞台に立てる。「森保ジャパンが発足してからベスト8を思い描いて4年間やってきた」と語るMF柴崎岳は、「ついにその挑戦権、歴史を作る場を自分たちで勝ち取ったなという思いでいます」と目標達成に向けて意欲を燃やしていた。

 ドイツ代表とスペイン代表というワールドカップ優勝経験国を破り、最初の関門だったグループステージを突破。そのうえで「慢心せず、次の最大の目標に向けて準備している最中ですし、全選手のモチベーションを非常に高く保てていると思います」と、チームの雰囲気にも手応えを感じているようだった。

 ただ、柴崎個人としては複雑な心境だろう。4年前のロシアワールドカップは日本代表の主軸として活躍し、ベルギー代表に敗れてベスト8進出を逃した試合にも出場していた。だが今大会はグループステージで1分も出番を与えられず、まだ試合のピッチに立つことができていない。

 これまでの戦いの中で、柴崎はベスト16の壁を破るために「選手層」や「チーム全体の個の底上げ」などの必要性を繰り返し説いてきた。実際、今大会ではFW堂安律やFW三笘薫など途中出場した選手たちが勝利に貢献する結果を残して日本代表の確かな成長を証明している。

 ずっと訴え続けてきたことが実っていると言えるが、一方で柴崎自身の出場機会が激減している。「現実に交代した選手が試合を決めたり、試合をそのまま締めくくったり、そういう戦いが随所に見られているのは非常にプラスなことだと思いますし、今の森保ジャパンにとって非常に大きな武器な気がしています」と述べたものの、チームのためを第一に考えて行動しながら、その現実を選手として受け止めるのは決して簡単なことではない。

 チームが結果を残している中での立場や役割と、個人として納得のいくパフォーマンスを見せられていない現状の狭間で、柴崎は大きな葛藤を胸の内に秘めながら戦っている。そうした1人の選手としての複雑な心境は、「個人的には、今それを話すタイミングではないかなと思っています」という彼の言葉からもうかがえた。

「ワールドカップが終わって、話す適切な場があれば話したいなと思います。本当に日本代表が次の試合に勝つことだけにフォーカスしているので、今はそういった気持ちでいます」

「僕は僕として、自分がチームにとってプラスになれるか、自分にとってプラスだと思っていることをやりたい。でも、そんなにきれいな作業ではないというのだけはあります。あくまで自分のパーソナリティの中でできることをしっかりやろうと。その中で、チームのことと個人のことを考えている感じです」

 日本サッカーの歴史を変えるためのクロアチア代表戦に向けて、柴崎は「チームがいい準備ができて、迷いなく試合に入っていくため」の取り組みが、自分のやるべきことの「大部分を占める」と話していた。そして、「個人的にはどんな状況であっても、いつもベストを尽くして自分のコンディションを上げるなど、何かを変えることなくやり続ける」と言葉に力を込めた。

 湧き上がってくる思いをプレーにぶつけ、日本代表を助けるチャンスはやってくるだろうか。柴崎は今、チームに全力で尽くしながら、内なる自分とも向き合って、答えを探している。その先で見せるピッチ上でのパフォーマンスは、これまでとは違う次元のものになっているかもしれない。

(取材・文:舩木渉)