●W杯敗退から一夜明け行われた会見

FIFAワールドカップカタール2022でサッカー日本代表はラウンド16敗退という結果に終わった。鎌田は初の大舞台を経て、マインドに劇的な変化が訪れたという。ベスト8という未開の景色を見るためには、今大会で不本意なパフォーマンスに終わった鎌田大地のリベンジは不可欠だ。(取材・文:元川悦子【カタール】)
————————————–

 カタールワールドカップ(W杯)ラウンド16の死闘で、南野拓実、三笘薫、吉田麻也の3人がPKを決められず、クロアチア代表の壁に跳ね返された。歴史に残る一戦から一夜明けた6日、日本代表は現地最後の活動である総括会見にのぞんだ。

 前日4時頃まで選手同士で語り続けた吉田は目が真っ赤。声もガラガラでいまだ興奮状態にあることがあることが窺えた。高熱で決戦を欠場した久保建英も「まだ体調はよくないけど、今ここでメディア対応をしないと後で場を設けないといけないので、今日やったほうがいいよと言われた」と表情を曇らせながら登場。選手によって様子はまちまちで、敗戦翌日のムードというのは、前向きだったこれまでとは全く異なるものだった。

 こうした中、4試合すべてに先発し、チームの絶対的中心と位置付けられた鎌田大地も淡々と言葉を紡いだ。

「昨日はホントにすごく悲しかったですけど、まあもうある程度、切り替えられてるなっていう感じですね」と本人は話を切り出した。昨季UEFAヨーロッパリーグ(EL)王者の彼も、W杯8強進出が一筋縄にはいかないことを改めて痛感したという。

 そしてこう続ける。

●鎌田大地が感じたクロアチア代表

「昨日(クロアチア代表戦)に関しては、自分たちは間違いなくできることをした。今までと違って前半を捨てずにプレーしたし、トライもしたと思う。ただ、後半に運動量が少し落ちてセカンドボールを拾われたりして、なかなか前に行けないっていう状態が続いた。

 そこで、クロアチアにはモドリッチ、コバチッチ、ブロゾビッチという選手がいた。日本には彼らのようなクオリティを持っていて、時間を使えて、余裕を持たせてあげる選手がいなかった。そこは大きな差。これからの4年間はどれだけいいチームでプレーする選手が出てくるかが大事だと思うし、自分たち次第でね、そういうふうなチームになれるのかなと思います」と彼はしみじみと語っていた。

 厳しい現実を突きつけられたわけだが、鎌田自身の中では「かつてない感情」が生まれたのも事実。「4年後には自分が代表を引っ張っていける存在になりたい」と強調。これまで「CL優勝を狙えるようなビッグクラブでやりたい」と“クラブファースト”の傾向が強かった彼のマインドは、初めてのW杯を経てガラリと変わったと言っていいだろう。

「きっかけはいろいろありますけど、3〜4回W杯に出ているベテラン選手の存在。(川島)永嗣さんは今回試合に出てないですけど、チームミーティングで思いを伝える時に涙を流したりする姿を見て、代表ってすごいところだなと。ああいう先輩たちが今までいろいろやってきて、それが今につながっているのが分かるし、上の人たち今回に賭ける思いや姿を見て、自分の感覚は変わったなと思います」

●長友佑都から受けた影響

 2016年のリオデジャネイロ五輪直前に初めてU-23日本代表候補に招集されるまで、鎌田は日の丸とは無縁のキャリアを過ごしてきた。となれば、各年代でエース級だった南野拓実や堂安律とは自ずと意識が違ってくるし、「自分はクラブで結果を出して這い上がるしかない」と考えるのもよく理解できる。

 ただ、彼の場合は2019年にA代表に入ってからもずっと意識が変わらなかった。EL制覇直後の今夏も「自分が移籍先を選択するのに半年後にW杯があることは関係ない」といった発言をしていて、「2010年南アフリカW杯に出るために試合に出られる環境に行った」という松井大輔ら先人たちとはずいぶん考え方が違っていた。

 松井も「今では欧州移籍のハードルも下がったし、CLを目指したいと考える選手が多いのよく分かる。でも4年に一度、日本中から応援してもらえるW杯はやっぱり特別。自分の人生を賭ける価値がある。それを今の選手も理解できるんじゃないかな」と期待を込めて語っていたほどだ。

 その先人の言葉通り、川島や長友佑都、吉田のような「代表のために全てを注いできた先人たち」の一挙手一投足を目の当たりにしたことで、鎌田の心は揺さぶられた。とりわけ、同じ愛媛県出身の長友には多大なる影響を受けたようだ。

「佑都君といると日本人同士って感じじゃなくて、ラテンの選手と一緒にいるような感覚になる。ピッチで言い合ったりもしたし、ケンカもしたけど、それは別にサッカー選手として普通のこと。彼には自分をさらけ出したし、それを受け止めてくれた」

●4年後へのリベンジ

「最終予選の時も自分がうまく行っていない時にジョギングの時に寄ってきて話をしてくれたこともあった。チームや周りのことが見えている彼と一緒にやれたのは自分にとってすごく幸せな時間だった。ホントに偉大な人だなと思いました」

 長友もかつて中澤佑二や中村俊輔から代表の矜持を学び、15年間それを大事にしてきた。EL制覇、今季のCLでも3ゴールと実績を積み上げる鎌田の才能を買ったからこそ、あえて厳しいことも言ったり、ケンカもしたりしたのだろう。そういう中で鎌田が「自分は代表のエースになる」という自覚を強めたのなら、本当にポジティブなこと。今後の日本代表、日本サッカー界にとってもプラスと言える。

 正直言って、カタールW杯の鎌田は物足りない出来だった。特にコスタリカ代表戦はミスが多く、自分自身も「信じられない」と呆然としていたほどだ。それがW杯の難しさ。かつて香川真司も2014年ブラジルW杯で急に走れなくなり、精細を欠いたが、4年後のロシアでリベンジした。背番号15をつける日本代表の新エースもそういう奇跡を歩めばいいのだ。

「僕はそんなにスター性はないので(苦笑)。ホントにサッカーで認められたい。今年1年はホントにファンタスティックだったし、信じられないシーズンを過ごしている。これをどれだけ継続できるかだと思うので、頑張っていきます」

 カタールでぶつかった壁を乗り越えた時、彼は欧州ビッグクラブ移籍とW杯8強のけん引役という2つの成功を手にするはず。スケールの大きなアタッカーの4年後の大いなる飛躍を楽しみに待ちたい。

(取材・文:元川悦子【カタール】)