●激しい試合はまさかの結末に…

 ラ・リーガ第14節、レアル・ソシエダ対セビージャが現地時間26日に行われ、2-1でホームチームが勝利している。日本代表のMF久保建英は先発し84分までプレーしている。この試合のMVPには圧巻ミドルを決めたウマル・サディクが選ばれたが、久保にとって彼が勢いに乗るのは面白いことではなかった。(文:小澤祐作)

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 レアル・ソシエダにとってはぎりぎりの勝利だった。

 ホームにセビージャを迎えたソシエダは、前半のうちに2点を先行している。しかし、効果的な崩しを見せていたわけではない。アンデル・バレネチェアの意表をついたフリーキック(公式記録はGKのオウンゴール)とウマル・サディクの超絶ミドルという、いずれも可能性の低いところから生まれたものであり、やや運も味方していた。

 ただ、守備は素晴らしかった。オーソドックスな4-4-2でセットし、高い位置から連動したプレスをかけ、セビージャに自由を与えていない。これを受けたディエゴ・アロンソのチームは前線にアバウトなロングボールを蹴り込み、身体能力に長けた最前線のユセフ・エン=ネシリや右サイドのドディ・ルケバキオに無理して収めてもらうしか手がなかった。当然、その攻撃がハマるわけはなく、ロビン・ル・ノルマンやイゴール・スベルディアにことごとく弾かれている。

 ほぼ危険な形を作られず2-0で前半を終えたソシエダは後半も同じテンションで臨んだ。ところが、選手交代を行いながら、これ以上失うものはないと言わんばかりにギアを上げてきたセビージャにペースを握られることに。60分にはエン=ネシリについにゴールを奪われてしまった。

 その後もセビージャの勢いは続き、ソシエダはいつ同点に追い付かれても不思議ではなかったが、最後の最後でまさかの結末が訪れる。88分にセルヒオ・ラモスが1発退場を命じられると、その判定に抗議した主将ヘスス・ナバスまでもが退場処分を言い渡されることに。一気に9人となったセビージャはそこで燃え尽き、結局ゲームは2-1のまま終了している。

 相手の自爆もあって逃げ切りに成功したソシエダは暫定ながら5位に浮上。内容はともかく、インターナショナルマッチウィーク明け1発目を白星で終えたのはポジティブな結果だ。

●久保建英は残念な結果に

 日本代表活動を終えスペインに戻ってきた久保建英は、いきなりスタメン起用されている。3トップの中では最長となる84分間プレーし奮闘した。

 いつも通り右ウィングに入った久保は激しい寄せに遭ってもボールを失わず、ゴール前ではアイデア溢れるプレーも披露。シュート数は両チーム最多となる4本を数えており、存在感があった。

 とくに素晴らしかったのが守備の強度だ。4-4-2の2トップの一角として相手左センターバックのS・ラモスに猛烈なプレッシャーをかけている。久保の献身的な働きはセビージャにダメージを与えており、S・ラモスは何度もGKマルコ・ドミトロビッチにバックパスせざるを得なかった。終盤には久保が鋭いプレスでS・ラモスのミスを誘発し、決定機に繋げるシーンがあった。

 しかし、久保の総括としては残念な結果と言わざるを得ない。その理由はシンプルにゴールがなかったからだ。

 ソシエダはビルドアップ時にサイドバックが低い位置で張るため、直線関係になる両WGに良い形でボールが入る機会が少ない。とくに、今やソシエダの核となった久保は警戒されている分、よりその現象が顕著になっていて、ここ最近はゴール前で仕事を果たす機会が減少している。

 ただセビージャ戦に関してはそれを言い訳にはできない。76分、そして83分とビッグチャンスが2度訪れていた。いずれもゴールに近い場所、それも相手のマークがない中でシュートを打てていただけに、どちらかは確実に決めなければならなかった。今の久保なら、なおさらだ。

 一方で久保に同情する部分がないわけではない。もっとチャンスがあっても良かった。

●久保建英がサディクに注文!? その理由は

 この試合のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)にはCFとして先発に抜擢されたサディクが選ばれている。ゴールから離れた位置から、それもノールックで叩き込んだ強烈なミドルシュートは圧巻の一言だった。

 ゴールという結果を残したサディクは、わかりやすく勢いに乗っていた。ドリブルの仕掛けが冴え、シュートも果敢に放っている。

 しかし、ストライカーとしてエゴを出すこと自体は悪くないが、それが前面に出過ぎていた。勢いに乗っていることもあって全部を自分で解決しようとしており、おまけにボールばかり見ているためフリーの味方を活かせない。ゴールシーンでも何名かの選手がフリーになっていながら、サディクは強引にシュートを選択している。結果的にネットを揺らせたから良かったものの、外していれば大バッシングだった。

 ソシエダは両WGと中盤に強みを持っているチームで、それゆえCFにはボールを収め彼らを活かす能力が求められている。最近ではミケル・オヤルサバルがそのタスクを高質にこなしているが、サディクはタイプ的にかけ離れている。一瞬の爆発力は光るものがあるが、彼が入ることでややソシエダ本来の強みが薄れるような印象は否めなかった。

 60分には敵陣中央でボールを収めたサディクが巧みな股抜きからフェルナンドをかわすと、気を良くしたか強引にミドルシュートを選択し、ボールをゴール裏に飛ばした。この時、右の久保が開いてパスを受けようとしていたのが見えておらず、無視される格好となった久保は「空いてるよ」というようなジェスチャーでサディクの方を見ていた。

 試合終了後には久保がサディク、そしてスタッフを交え何か話している姿がとらえられた。久保の表情を見るとジョークを言っているようには思えない。久保の話を聞いたスタッフは「もういいだろ」という感じで日本人選手を突き放しており、これはあくまで推測にはなってしまうが、久保はおそらくサディクにプレー面の指摘をしていたのだろう。それを聞いたスタッフは勝った試合で、それも活躍した選手に今言う必要はないと久保をサディクから離したと見ることができる。

 いずれにせよ、サディクが勢いに乗りエゴに走るのは久保にとって面白いことではないし、長い目で見れば何よりチームのためにもならない。より効率よくゴールへの道筋を見つけられる久保だからこその試合後の行動だったのではないか。

(文:小澤祐作)

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