●レアル・ソシエダは痛恨のドロー

 ラ・リーガ第15節、オサスナ対レアル・ソシエダが現地時間2日に行われ、1-1のドローに終わっている。日本代表MF久保建英はフル出場を果たしたが、またもゴールを奪うことができなかった。しかし、仕方のない結果と言えるだろう。久保に課されたミッションは超ハードモードだった。(文:小澤祐作)

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 オサスナのホームに乗り込んだレアル・ソシエダは1-1で試合を終えた。3日前に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ第5節のザルツブルク戦で数名の主力を温存できていたことを考えても、ここで勝ち点3を奪えなかったのは非常に悔やまれる結果だ。

 ソシエダが勝ち点2を取り逃がした主な理由は2つある。

 まずは、試合開始からわずか2分で先制ゴールを献上してしまったこと。これにより、撤退守備に傾倒したオサスナを崩すことがより一層難しくなってしまった。ソシエダは前半のうちになんとか同点に追いついたものの、不調の中でとにかく勝ち点1でも稼ぎたいオサスナの姿勢は変わらず、逆転に持ち込むことは叶わなかった。

 もう1つの理由は主力の負傷だ。ソシエダは16分、足首を痛めたアンデル・バレネチェアがプレー続行不可能となり、アルセン・ザハリャンとの交代を余儀なくされている。そのザハリャンは全くと言っていいほどオサスナの脅威にはならず、ソシエダは左サイドの攻撃が停滞。ただでさえ引いて守りを固めるオサスナを相手に、痛恨のアクシデントだったと言わざるを得ない。

 勝ち点1を奪うに留まったソシエダは、現地時間3日にゲームを控えるベティスの結果によっては7位に後退する恐れがある。いずれにせよ、1試合未消化の4位バルセロナ、2試合未消化の3位アトレティコ・マドリードとの勝ち点差が現時点で「5」あり、来季のCL出場権獲得に向け早くも厳しい状況に追い込まれている。

●不調? 久保建英はまたも…

 そんなオサスナ戦で、日本代表の久保建英は先発入りを果たしている。ザルツブルク戦で温存された1人だったため、予想通りの結果だった。

 前節のセビージャ戦では決定機がありながらゴールネットを揺らせなかった久保だが、今節はチャンス自体が少なかった。61分にはブライス・メンデスからのパスを受け、ボックス外やや右の位置からミドルシュートを放つも、GKセルヒオ・エレーラの好セーブに遭う。これが枠をとらえた唯一のシュートだった。

 これで久保は公式戦11試合連続ノーゴールとなっている。今季前半戦の勢いを考えると、物足りなく映るのは仕方ないことだろう。

 しかし、絶不調かと言えばそうではない。ドリブル、ゴール前でのアイデア、キープ力、守備の献身性などは相変わらず非凡なものがあり、オサスナ戦でも両チーム合わせて最多のドリブル成功数4回をマークしている(スタッツはデータサイト『Who Scored』を参照)。個で勝負できる久保がいなければ、ソシエダの攻撃はもっと静かなものになっていただろう。

 今や久保はソシエダの核で、ラ・リーガでも恐れられるアタッカーとなった。それゆえ毎試合のように結果が求められるのは無理もないが、彼はリオネル・メッシではない。1人ではどうしようもない場合もある。オサスナ戦は、まさにそのパターンだった。

●久保建英と連動しない味方

 久保がボールを持つと、やはりオサスナ守備陣は2人で囲んできた。それでも久保は卓越した技術を武器に打開することもあったが、撤退守備を敷く相手は中央に人が密集しており、その後がなかなか続かなかった。

 そんなオサスナの強固な守備をこじ開けるには前線の素早い連動が不可欠。しかし、ソシエダには肝心の“それ”が欠けていた。

 左WGのファーストチョイスであるバレネチェアは仕掛けて引きつけたところで久保に預けるプレーもできるが、彼の代役を務めたザハリャンは先述の通り機能しなかった。そのため、左で仕掛け、久保がゴール前に入り込んで仕事をする機会というものが、そもそも多くはなかった。

 そしてCFのウマル・サディクだ。彼は一瞬の爆発力があり、前節セビージャ戦同様、オサスナ戦でも強烈なミドルシュートを叩き込んでチームに勝ち点をもたらした。その一方で味方との連係プレーを得意としておらず、ボールを持っても顔が上がらないためフリーの味方を確認できず、収めたり散らす作業の精度は不安定。DFとの駆け引きなど、動き出しにも工夫がないため出し手との呼吸が合わない。オサスナ戦ではサディク1人で3度もオフサイドにかかっている。

 7分には、相手のバックパスが弱くなったところをサディクが拾い、GKと1対1の状況を作り出した。この時久保が斜めマイナス方向に入る良い動きを見せており、パスが出ればそのままゴールに流し込める状況を作ったが、サディクは自らシュートを選択。これはGKに弾かれ、こぼれ球をバレネチェアが外すなど、決定機を逃した。前節同様、サディクのエゴに泣かされた久保は両手を広げ、怒りを露わにしている。

 加入直後に怪我をし、これが実質ソシエダで過ごす最初のフルシーズンとなっているサディクは、まだチームプレーではなく、自らをアピールすることを優先している。それはWGやIHという質の高い選手たちと連動して攻撃を繰り出すソシエダ向きでないことは明らかだ。彼の先発が続くことは、久保の超ハードなミッションが続いていくことも意味するかもしれない。

(文:小澤祐作)

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