7月1日を迎えたことで、欧州サッカーは暦の上では2024/25シーズンを迎えた。新シーズンへと移り変わる中で、2023/24シーズン限りで所属クラブを契約満了となり「無所属」となった選手もいる。今回は、現在フリーの30歳以上の選手10人をピックアップして紹介する(データは7月3日現在)。

MF:チアゴ・アルカンタラ(元スペイン代表)
生年月日:1991年4月11日
前所属:リバプール(イングランド)
23/24シーズン成績:1試合0得点0アシスト

“天才”チアゴ・アルカンタラも所属先がない選手の1人だ。今夏に4年間在籍したリバプールを退団している。

 バルセロナの下部組織出身のチアゴは、トップチームで公式戦100試合に出場した後、2013年夏に恩師ジョゼップ・グアルディオラを追いかけてバイエルン・ミュンヘンに加入した。2019/20シーズンには不動のレギュラーとしてUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝に貢献するなど、計17のタイトル獲得に大きく貢献。スペイン代表としても46試合に出場しており、国際経験も豊富だ。

「足技で勝てる選手はいるのか」というほどに上手い選手で、ドリブルでのキープ力に視野の広さと正確なパス技術が合わさった展開力は世界随一だろう。それでもフリーとなった理由は明確で、あまりに怪我が多いのが彼の課題だ。

 チアゴが怪我で離脱をしなかったシーズンはデビュー以来なく、2023/24シーズンはたった5分間の出場に留まった。太ももや膝、ふくらはぎ、臀部、股関節とあらゆる箇所を痛めており、フィジカル的な消費が激しいプレミアリーグでこれ以上キャリアを続けていくのは難しかった。

 近年はまともに試合に出場することすら、ままならない状態が続いており、こうした事情を踏まえると、チアゴをチームの中心として獲得するクラブは限られてくるだろう。高い給与もネックで、新天地を見つけるにはいくつか乗り越えなければいけないハードルがある。

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DF:セルヒオ・ラモス(元スペイン代表)
生年月日:1986年3月30日
前所属:セビージャ
23/24シーズン成績:28試合3得点0アシスト

 セルヒオ・ラモスにとって自身2度目のセビージャでの旅は1年で終わりを告げた。スペイン代表史上最多キャップを誇る38歳のDFは今夏に再び新天地を探すことになる。

 2003/04シーズンにセビージャでプロデビューを飾ったセルヒオ・ラモスは、2005/06シーズンにレアル・マドリードへと移籍。通算671試合に出場し、イケル・カシージャス退団後は主将も務め数々のタイトル獲得に大きく貢献した。

  DFながら通算101ゴールを記録したことからもわかるように得点力に優れており、2013/14シーズンのアトレティコ・マドリードとのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝での試合終了間際の同点ゴールを筆頭に、セットプレーから何度もチームを救うゴールを決めてきた。

 2021/22シーズンから2年間のパリ・サンジェルマンでのプレーを経て、昨夏に18年ぶりとなるセビージャ復帰を果たした。レアル・マドリード移籍後に挑発的なパフォーマンスをしていたことから彼の加入に反発するサポーターも多く、試合後に過激なファンから罵声を浴びせられたこともあった。それでも1シーズンを主力としてプレーし続け、自らが健在であることを証明した。

 レアル・マドリード最終年の2020/21シーズンと翌2021/22シーズンは負傷が多かったが、近年は大きな怪我もない。スペイン『Mundo Deportivo』によると家族のことを優先して新天地を探すとのこと。その候補に、かつてのチームメイトであるフェルナンド・トーレスやダビド・ビジャ、アンドレス・イニエスタのようにJリーグも入ってくるのだろうか。

GK:ケイラー・ナバス(元コスタリカ代表)
生年月日:1986年12月15日
前所属:パリ・サンジェルマン(フランス)
23/24シーズン成績:4試合6失点

 2022年に行われたカタールワールドカップで日本代表の前に立ちはだかったケイラー・ナバスも今夏に無所属となる。現在37歳と大ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かっているが、その実績と実力は申し分ない。

 彼が最初に注目を集めたのがレバンテに所属していた2013/14シーズンだろう。前年に57失点、翌年に67失点を喫したクラブでナバスは37試合で39失点と大奮闘。セーブ数とセーブ率でトップに立つと、シーズン終了後に行われたブラジルワールドカップで大活躍。一気に世界的な選手に上り詰めてレアル・マドリードへと引き抜かれた。

 レアル・マドリードではイケル・カシージャスやティボー・クルトワら世界的名手とポジションを争いながらも公式戦162試合に出場。2019年夏に移籍したパリ・サンジェルマンでも後にジャンルイジ・ドンナルンマが加入したが、彼とも熾烈なポジション争いを繰り広げた。

 ナバスはブラジル代表GKエデルソンやアルゼンチン代表GKエミリアーノ・マルティネスのように、11人目のフィールドプレイヤーとして振舞える現代的なGKではないが、シュートストップの才能は随一だ。2023/24シーズンはリーグ戦4試合とあまり出番がなかったが、2022/23シーズンの後半戦にはローン移籍先のノッティンガム・フォレストで自らの実力を証明するビッグセーブを連発した。

 懸念点があるとすれば2023/24シーズンに公式戦6試合の出場に留まったことだが、試合勘に関してはそこまで問題ではないだろう。というのも、日本代表を苦しめたワールドカップの直前もナバスは全く公式戦に出ておらず、本大会が2022/23シーズンで初出場だった。それであれだけのパフォーマンスを披露できるのであれば、次なる新天地での活躍も十分に期待できる。

DF:ジョエル・マティプ(元カメルーン代表)
生年月日:1991年8月8日
前所属:リバプール(イングランド)
23/24シーズン成績:10試合0得点0アシスト

 リバプールは2023/24シーズン限りでのジョエル・マティプ退団を発表した。2016年夏から8シーズンをマージーサイドで過ごした長身CBは新たな一歩を踏み出すことになる。

 シャルケのアカデミー出身のマティプは、トップチームで256試合に出場した後の2016年夏にリバプールに加入した。シャルケ時代はボランチで出場することもあったが、リバプールではCBのレギュラーに定着し、2018/19シーズンはクラブにとって14年ぶりとなるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝に大きく貢献している。

 身長195cmのマティプは圧倒的な対人戦の強さを誇る。地上戦、空中戦ともに勝率が70%を超えるシーズンもあり、同い年のオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクとCBコンビは鉄壁だった。また、守備だけでなく、効果的なドリブルでの持ち運びも魅力的な選手で、最終ラインから攻撃のスイッチを入れる役割も担っていた。

 ピッチ上では弱点が少ない選手だが、同じく今夏にリバプールを退団したチアゴ・アルカンタラと同様に負傷癖というウィークポイントがある。リバプール加入後にフル稼働したシーズンはほとんどなく、『transfermarkt』によると8年間で16度も離脱をしたそうだ。2023/24シーズンも12月に膝の前十字靭帯断裂という大怪我を負っており、コンディション面が新天地を探す上ではネックになりそうだ。

FW:アリレザ・ジャハンバフシュ(イラン代表)
生年月日:1993年8月11日
前所属:フェイエノールト(オランダ)
23/24シーズン成績:16試合0得点2アシスト

 今年1月のAFCアジアカップ2023にて、日本代表相手に決勝点となるPKを決めたアリレザ・ジャハンバフシュは今夏でフェイエノールトと契約満了を迎えて無所属となった。

 19歳でオランダへと渡ったジャハンバフシュは、AZに所属していた2017/18シーズンに21ゴールを決めてエールディビジの得点王を獲得。その後、当時のクラブ史上最高額で引き抜かれたブライトンでは61試合で4得点とあまり結果を残せず、2021年夏にフェイエノールトに移籍する形でオランダに復帰していた。

 復帰後は右WGのレギュラーに定着していたが、2023/24シーズンは怪我とニューカッスルからローン移籍で加入していたヤンクバ・ミンテ(現ブライトン)にポジションを奪われて出場機会が激減。契約延長交渉がないままフリーで退団となっている。

 本人は6月の代表戦後のインタビューでドイツとイタリアのクラブからオファーを受けていると明かしたが、「どちらが自分にとってベストな状況なのかを見極めてから決める必要がある」と移籍先を決めるのには慎重な姿勢をみせているそうだ。

 なお、今シーズンのJリーグではリーグ史上初のイラン人選手であるシャハブ・ザヘディ(アビスパ福岡)の印象的な活躍が話題を呼んでいる。Jリーグのクラブが欧州のクラブとの争奪戦に勝つのは難しいかもしれないが、イラン代表の主将にオファーを出してみても面白いかもしれない。

DF:マッツ・フンメルス(元ドイツ代表)
生年月日:1988年12月16日
前所属:ドルトムント
23/24シーズン成績:25試合3得点0アシスト

 2023/24シーズンにUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝へと進出したドルトムントでマッツ・フンメルスは圧倒的な存在感を放っていた。そんな彼も今夏に新天地を探すことになる。

 バイエルン・ミュンヘンの下部組織出身のフンメルスはトップチーム昇格後の2008年1月にドルトムントへと移籍。ユルゲン・クロップ監督の下で、ブンデスリーガ2連覇やCL準優勝などの躍進を遂げたチームのDFリーダーとして台頭した。

 2016年夏に古巣バイエルンへと復帰を果たすと、幼少期から着ていた赤色のユニフォームでブンデスリーガ3連覇に貢献し、3年後の2019年夏に今度はドルトムントへと復帰。細かい怪我に悩まされたこともあったが、コンディションが万全の際はレギュラーとしてプレーしていた。

 彼が話題となったのが2023/24シーズンのパリ・サンジェルマンとのCL準決勝でのパフォーマンスで、1stレグ、2ndレグのどちらでもマン・オブ・ザ・マッチに輝く活躍を披露。全盛期と比較をするとスピードは大きく落ちているが、経験に基づく守備でキリアン・エンバペを筆頭とする強力な攻撃陣をシャットアウト。クロスに対するポジションや前に出てインターセプトするタイミングが抜群で、35歳となった今でもトッププレイヤーであることを証明した。

 ドルトムントで欠かせない選手の一人だったが、シーズン終了後にエディン・テルジッチ監督と同じく退団が発表された。まだトップクラブでプレーできる素質があるため、争奪戦になっても不思議ではない。

FW:アレクシス・サンチェス(チリ代表)
生年月日:1988年12月19日
前所属:インテル(イタリア)
23/24シーズン成績:23試合2得点5アシスト

 35歳となってもチリ代表のスタメンに名を連ねているアレクシス・サンチェスは、現在行われているコパ・アメリカが“就活“の場になるはずだった。ところが開幕から3試合続けてチームは無得点に終わり、まさかのグループリーグ敗退となっている。

 昨夏に1年ぶりにインテルに復帰を果たしたサンチェスは、オーストリア代表FWマルコ・アルナウトビッチとともにスーパーサブとして活躍。今年2月と3月にはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)とリーグ戦を並行して戦う関係でスタメンの機会もあり、そんな中で3試合続けて得点に絡む活躍を披露し、スクデットを獲得の一員となった。

 ラウタロ・マルティネスとマルクス・テュラムが在籍しているインテルではサブ的な扱いだったが、その前シーズンにサンチェスは所属していたマルセイユでリーグ戦14ゴールを決めるなど、クオリティを維持していると言える。

 バルセロナやアーセナルに所属していた全盛期と比較すると衰えているが、もう一花咲かせるだけの力はあるだろう。欧州だけでなく、自らが育った南米方面への移籍の可能性もある。

GK:マシュー・ライアン(オーストラリア代表)
生年月日:1992年4月8日
前所属:AZ(オランダ)
23/24シーズン成績:29試合28失点

 2023/24シーズンはAZで菅原由勢らとプレーし、日本代表と何度も対戦したオーストラリア代表GKマシュー・ライアンも今夏にフリーとなった。

 長らくブライトンで正GKを務めていたことからプレミアリーグ通算124試合出場を誇る経験豊富なGKは、2020/21シーズン途中にロベルト・サンチェス(現チェルシー)にポジションを奪われてからはやや苦戦。アーセナル、レアル・ソシエダ、コペンハーゲンと3つのクラブを渡り歩いたが、いずれのチームでも定位置確保には至らず、2022/23シーズン途中に加入したAZでようやく正GKに定着していた。

 2023/24シーズンは公式戦39試合に出場するなど、最後の砦として奮闘していたが、AZとは契約延長に至らなかったようだ。退団のリリースはないが、すでに地元メディア「AZAlerts」は退団の可能性が高いと報じており、6月に代表に招集されなかったのにも関わらず、2024/25シーズンに向けてのプレシーズンにも参加していない。恐らく近日中に退団のアナウンスがあるだろう。

 ライアンは2013/14シーズンから欧州でプレーしているためベテランと思われがちだが、32歳とまだ衰える年齢ではない。直近の代表戦は23歳のジョー・ガウチ(アストン・ヴィラ)がゴールマウスを守ったが、実績を踏まえるとまだ彼が正GKであり、今年9月から行われるFIFAワールドカップ26アジア最終予選の代表メンバーにも名を連ねることが予想される。

 ユーロとコパ・アメリカが開催されていることもあってほぼ市場が動いていないこともあり、現在は具体的な移籍先が報じられていないが、彼の実績を踏まえると引く手あまただろう。オーストラリア代表の正GKの次なる新天地はどこになるのだろうか。

MF:フアン・クアドラード(コロンビア代表)
生年月日:1988年5月26日
前所属:インテル(イタリア)
23/24シーズン成績:10試合0得点2アシスト

 2023年夏にユベントスからフリートランスファーでインテルに移籍したフアン・クアドラードは1年で退団となった。このコロンビア代表MFからすると2年続けての無所属の期間を迎えることになる。

 クアドラードは21歳の時にウディネーゼに加入して以降、チェルシーに在籍していた2015年冬から夏までの半年間を除く14シーズン半もの間イタリアでプレーしている。積み上げたセリエAでの出場試合数は372試合で、コロンビア人選手では歴代最多出場試合記録である。

 右サイドであればSBからWGまでどこでもプレーできる万能性とスピードを武器に、ユベントスでは5度のスクデットを獲得するなど、黄金期を支えるメンバーの1人として活躍。昨夏に加入したインテルでは[3-5-2]の右WBのレギュラー候補として期待されていたが、9月にアキレス腱を痛めてからはシーズンの大半を欠場。先発した試合はレアル・ソシエダとのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ最終戦の1試合しかなかった。

 この稼働率の悪さからクラブは1年の契約延長オプションを行使せずに退団となった。復帰しては離脱を繰り返したアキレス腱の問題が解決しているかどうかが来季の去就を決めることになるだろう。

DF:マルコス・アロンソ(元スペイン代表)
生年月日:1990年12月28日
前所属:バルセロナ
23/24シーズン成績:5試合0得点0アシスト

 祖父から3代続けてスペイン代表のユニフォームを身にまとったマルコス・アロンソ・メンドーサは、2023/24シーズン限りでバルセロナを退団して無所属となった。

 レアル・マドリードの下部組織出身のマルコス・アロンソは、1試合に出場した後の2010年夏にイングランドのボルトンへと移籍。そこからフィオレンティーナ、サンダーランド、チェルシーへと渡り歩き、2022年夏にバルセロナに加入していた。

 彼のベストシーズンはアントニオ・コンテがチェルシーの監督を務めていた2016/17シーズンからの2年間だろう。[3-4-2-1]の左WBとして、得意の攻撃参加から多くの得点に関与。自慢のキック精度を活かしたセットプレーでも抜群の存在感を放ち、2017/18シーズンはプレミアリーグのベストイレブンも受賞した。

 しかし、バルセロナでは得意な左SBではなく、CBや左SBで起用されたことで微妙なパフォーマンスに終わり、2年目の2023/24シーズンは背中の怪我の影響も相まってわずか公式戦8試合の出場に留まった。シーズン後半はほぼ構想外の扱いだったこともあり、契約延長することなく、バルセロナを退団することが決定している。

【了】

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