なでしこジャパン長谷川唯が知った「世界との差」。「自分の好きなスタイルで」世界最高峰で活躍できる理由【パリ五輪コラム】

フットボールチャンネル7/25(木)7:20

なでしこジャパン長谷川唯が知った「世界との差」。「自分の好きなスタイルで」世界最高峰で活躍できる理由【パリ五輪コラム】

【写真:Getty Images】

●異質だった東京五輪から3年

 現地時間25日、なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)はパリオリンピック(パリ五輪)でスペイン女子代表と対戦する。世界最高峰のリーグで実績を積み上げてきた長谷川は、司令塔として牽引するなでしこジャパンが世界で勝つために何が必要かを肌で感じている。(取材・文:折原亘)

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 なでしこジャパン(日本女子代表)は悲願の金メダル獲得へ向けてパリ五輪に臨む。現在のなでしこジャパンの中心選手であり、イングランド・ウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)の強豪マンチェスター・シティでプレーするMF長谷川唯は今の代表チームをどう見ているのか。

 長谷川にとっては2度目の五輪となるが、ホスト国として臨んだ前回大会とは全く異なると言っても良いだろう。東京五輪では予選を経験せず、開催国として参加。さらに、2020年に予定されていた同大会だが、新型コロナウイルスの影響で1年の延期となり、試合も無観客で行われた。当時は検査なども厳しく、選手たちにはいつも以上に負担がかかった。

 前回の東京五輪に関して長谷川も「コロナ禍で観客が入らない状況だったので、五輪という感覚が味わえたかと言ったらそこまでだった」と語るように、4年に一度の祭典は異質とも言える大会だった。それでも「小さい頃から目指してきた舞台」と長谷川が目指してきた特別な大会でもある。

 なでしこジャパンは東京五輪でイギリス女子代表、カナダ女子代表、チリ女子代表と同組のグループEに入り、1勝1分1敗の3位で決勝トーナメントに進出。準々決勝ではスウェーデン女子代表に1-3の敗北を喫して、メダル獲得を逃している。

 東京五輪での敗戦から19日後の2021年8月18日、ACミランからウェストハムへの移籍が発表された。加入当初から主力としてプレーした長谷川は2021/22シーズンで17試合に出場2得点2アシストを記録し、ウェストハムの過去最高順位となるリーグ6位入りに貢献した。

 そして2022年9月、長谷川が成長のために選んだチームはマンチェスター・シティだった。2023年のFIFA女子ワールドカップ、そしてパリ五輪を見据えての大きなステップアップとなった。

●マンチェスター・シティでの2年間。長谷川唯が目の当たりにしたもの

 怪我の影響もあり、シティへの移籍後すぐには出場できなかったが、2022年10月16日のレスター戦でデビューを果たすと、いきなりの初ゴール。慣れないアンカーでのプレーながらも、ペナルティエリア付近からミドルシュートでゴールを決めた。その後も主力として活躍を続け、2022/23シーズンはリーグ戦20試合に出場し、1得点1アシストを記録した。

 そして、長谷川は2023年7月にオーストラリアとニュージーランドで行われたFIFA女子ワールドカップに出場。準々決勝で日本の前に立ちはだかったのは、またしてもスウェーデンだった。試合は2点を失う厳しい展開となり、終盤に林穂之香のゴールで1点を返したものの、1-2で惜しくも敗戦。女子サッカー最高峰のリーグでプレーし、成長を遂げていた長谷川だったが、世界の頂にまたも届かなかった。

 2023/24シーズン、長谷川はシティでリーグ戦の全試合に先発出場。前年度4位だったチームは最後までチェルシーとの優勝争いを繰り広げ、2位で来季のUEFA女子チャンピオンズリーグ(WCL)予選への出場権を獲得した。「勝負所で勝てなかったのが凄い大きいかなって思う。自分たち(の力)で優勝できるっていうところで、逃してしまったと思うので、そのラストの経験っていうのは足りなかったのを感じた」とあと一歩のところで優勝を逃した理由を挙げつつも、「昔からクラブでWCL(UEFA女子チャンピオンズリーグ)に出たいっていうのがあって、本当に自分の好きなスタイルで世界で戦えるっていうのは楽しみ。自分のプレーがイングランド国内だけでなくて、欧州内でどれだけ通用するか、試すっていうのも凄い楽しみ」と意気込みを語っている。

●アンカー長谷川唯が発揮する持ち味

 それまでインサイドハーフやトップ下など攻撃的なポジションでプレーすることが多かったが、ガレス・テイラー監督のもとで長谷川は4-3-3のアンカーに起用されている。多くの試合でボールを保持する時間の多いシティでの役割はパスを繋ぎ、ゲームを作ること。アンカーの位置でボールを奪われてしまうと、カウンターを受けて命取りになってしまう。それほどプレッシャーを受けるポジションでもある。

 長谷川が世界最高峰のチームで生き残れる理由の一つにパス精度の高さが挙げられる。中盤からサイドの選手へのロングボールやサイドチェンジなど、シティでは持ち前の展開力を発揮。長谷川が「縦パスの部分は日本でやっている頃から得意な部分ではありましたが、よりポジションが後ろになったことで、距離が長くなったり、みんなに見てもらえる機会が増えたのかなっていうのはひとつある」と話すように、縦へのパスは武器でもある。

 なでしこジャパンでは3-4-3のダブルボランチの一⻆でプレーし、シティとはシステムも役割も異なってくる。それでも長谷川は「クラブでの試合の時に前へ行くのを少し我慢したりとか、バランスを取るようにしているので、本来自分のプレースタイルはこの3-4-3のボランチはすごく自分に合っているんじゃないかと思うので、そこまで難しさとかはないのかもしれないです」とクラブと代表でのギャップは感じていない。

 むしろ3-4-3は長谷川本来の力を発揮でき、その力を最大限に活かすことができるシステムだ。パリ五輪に向けた日本での合宿1日目終了後に「自分自身、周りの選手の特徴に合わせたプレーは得意な方なので、周りの選手の特徴を最大限に活かせるプレーを自分ができたら、自分のプレーも活きると思う」と話した長谷川は、その言葉通りのプレーを合宿で見せた。

●長谷川唯が知る「世界との差」

 合宿3日目のヴィアマテラス宮崎とのトレーニングマッチ(30分×3本では1本目と2本目に出場し、2アシストを記録。2本目の藤野あおばのゴールをアシストしたシーンでは、高い位置で奪ってからすかさず縦にパスを供給してゴールに繋げた。「取った後のカウンターはしっかり良いボールを出せたと思う」と狙い通りのプレーができていたようだ。

 なでしこジャパンのパリ五輪初戦の相手は2023年のW杯優勝国であるスペイン女子代表だ。なでしこジャパンはW杯でそのスペインとグループ最終節で激突し、4-0の勝利を収めた。だが、長谷川は「W杯の時は正直運よくああいう形で勝てたのかなと。見ている人たちが思っているよりも、簡単な試合ではなかったので、それがもう一度できるかと言われたら、難しいところはあると思う」と振り返った。

 米メディア『ESPN』によると、W杯での日本とスペインのポゼッションは77.1%でスペインが圧倒。カウンターから4ゴールを奪ったが、「ああいう試合にならないように、入りで見せたい」と長谷川は語る。それでも「ああいう形になっても自分たちにはカウンターもあるっていう自信もついたので、メンタルの部分でどういう試合になっても、対応できるような準備をしたい」と意気込んだ。

 パリ五輪の2戦目で戦うブラジル女子代表とは今年4月に行われたアメリカ遠征で対戦。90分間の戦いでは1-1のドローだったが、PK戦の末に敗れた。田中美南のゴールで35分に先制しながらも、71分に失点。追加点を決めるチャンスを逃し続け、最後はPKで敗戦した。ブラジル戦について長谷川は「自分たちが勝たなければいけない試合だったと思いますし、こういう試合が本大会であってはいけないなと強く感じた」と振り返る。

 4月のアメリカ遠征ではFIFAランキング9位のブラジルに加え、同5位のアメリカ合衆国とも対戦できた。この2試合でなでしこジャパンの立ち位置が見えたはずだ。長谷川は「アメリカ戦は自分たちのビルドアップのところも含めて、力のなさを感じた。試合中になかなか修正できなかったところも含めて、ニュージーランド戦で修正できた部分もあるので、課題をしっかり修正した姿を五輪で見せられるようにしたい」と世界との差を感じつつも、パリ五輪へ向けての自信も示した。

 その差を感じた中で6月のニュージーランド女子代表戦では2-0、4-1と2連勝。パリ五輪のメンバー入りをかけたサバイバルレースでもあったが、チームの完成度を高められたはずだ。長谷川は「応援される上で結果を出せるチームになりたい」と語っており、パリに届く日本サポーターの応援を背に初の金メダル獲得を目指す。

(取材・文:折原亘)

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6/23(月) 14:00更新

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