出さなきゃよかった…。アーセナル退団で化けた元アカデミー選手6人。クラブと代表で大成功を収めた選手たち
フットボールチャンネル8/23(金)7:00

【写真:Getty Images】
●FW:セルジュ・ニャブリ(ドイツ代表)
世界最高峰の強者が揃うプレミアリーグにおいて、アカデミー出身選手が活躍する場は限られてきている。今夏も多くの有望株が育ったクラブを離れる決断をしているが、退団してから成功を収めた選手もこれまでに多数存在する。今回はその前例として、アーセナルを退団してから大ブレイクした6人のアカデミー出身選手を紹介する。
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生年月日:1995年7月14日
現所属クラブ:バイエルン・ミュンヘン
アーセナル在籍期間:2011年夏〜2016年夏
アーセナル退団後に大ブレイクした代表例が、現在バイエルン・ミュンヘンでプレーするセルジュ・ニャブリだろう。
2011年に当時15歳でアーセナルのトライアウトに参加すると、これに合格してシュトゥットガルトユースからの完全移籍でロンドンの名門へと移籍した。続く2012/13シーズンに17歳でトップチームデビューを果たすと、翌シーズンには正式にトップチーム昇格を果たし、スウォンジーとのプレミアリーグ第6節で待望の初ゴールを決めた。
アーセナルの選手として、18歳と2か月14日でのプレミアリーグ初ゴールはセスク・ファブレガスに次いで若く、現在プレーするブカヨ・サカやガブリエウ・マルティネッリを上回る記録を残している。
このままアーセナルの主力へと定着するかと思われたが、その後は出場機会が伸び悩み、2015/16シーズンのウェスト・ブロムウィッチへの期限付き移籍でも結果が残せずクラブは放出を決断。2016年夏に500万ユーロ(約8億円)の移籍金でブレーメンへと売却された。
その後の活躍は記憶に新しいだろう。ブンデスリーガ初挑戦となった2016/17シーズンから7シーズン連続でリーグ戦2桁ゴールを達成し、バイエルンがUEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制した2019/20シーズンは同大会にて10試合で9ゴールを決めて優勝の立役者となった。
こうした活躍を受けて、アーセナル退団時に250万ユーロ(約4億円)しかなかった市場価値は急上昇し、一時は9000万ユーロ(約144億円)にまで到達。仮にアーセナルに残留していたとしても活躍できた保証はないが、ニャブリが大活躍していた期間に古巣は低迷期を迎えており、結果的に“逃した魚は大きい“形となってしまった。
出さなきゃよかった…。アーセナル退団で化けた元アカデミー選手6人 全選手紹介
出さなきゃよかった…。アーセナル退団で化けた元アカデミー選手(2)
出さなきゃよかった…。アーセナル退団で化けた元アカデミー選手(3)
GK:エミリアーノ・マルティネス(アルゼンチン代表)
生年月日:1992年9月2日
現所属クラブ:アストン・ヴィラ(イングランド)
アーセナル在籍期間:2010年夏〜2020年夏
2023年に年間最優秀GKに贈られる「ヤシン・トロフィー」を受賞したエミリアーノ・マルティネスは、今や世界最高のGKのひとりとして名を馳せている。
所属するアストン・ヴィラでは41年ぶりのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場の立役者となり、アルゼンチン代表では2021年6月の代表デビューから出場したすべての国際大会で優勝(コパ・アメリカ2回、ワールドカップ1回、フィナリッシマ1回)を経験。アストン・ヴィラとアルゼンチン代表では、挑んだ5度のPK戦すべてで勝利しており、“チームを勝たせることができるGK”という言葉が最も似合う選手かもしれない。
そんな現在の世界最高クラスのGKは2010年夏に17歳でアーセナルへと移籍した。アカデミーでのプレーを経て2012/13シーズンにトップチームデビューを飾ったがスタメン定着とはならず、その後6つのクラブへの期限付き移籍を経験。スタメンとして継続的に出場機会を確保できたのは2018/19シーズン後半戦にプレーしたレディングが最初であり、なかなか才能が開花しないまま20代後半へと年を重ねていた。
そんなマルティネスが注目を集めるようになったのが2019/20シーズンだ。現アストン・ヴィラの監督であるウナイ・エメリの下でトップチームの構想に入ると、ミケル・アルテタが監督に就任した後半戦に正GKのベルント・レノが負傷したことで一時的に正GKへと定着。その間のパフォーマンスは素晴らしく、同シーズンのFAカップと翌シーズンのコミュニティ・シールド優勝に大きく貢献した。
しかし、怪我から復帰したレノとマルティネスの二択が迫られた際にクラブは後者を放出することを決断。結果的にそれ以降のアーセナルはタイトルを獲得することができておらず、“チームを勝たせることができるGK”の放出は近年で最も痛手となった放出と言えるかもしれない。
FW:ドニエル・マレン(オランダ代表)
生年月日:1999年1月19日
現所属クラブ:ドルトムント(ドイツ)
アーセナル在籍期間:2015年夏〜2017年夏
昨シーズンにドニエル・マレンは、ドルトムント加入してから最高のシーズンを過ごした。絶対的なスタメンというよりも、スーパーサブでチームに貢献する形が多かったが、ブンデスリーガでは初となる2桁ゴールを記録(13得点)。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では古巣PSVとの準々決勝で貴重なゴールを決めて、決勝進出に貢献している。
そんなオランダ代表FWも2年という短い期間ながらアーセナルに所属していた経験がある。2015年夏にアヤックスからロンドンの名門に加入すると、1年目からU-18の主力へと定着。U-18では通算21試合で11ゴールとハイペースで得点を重ね、カテゴリーを上げたU-23(現U-21)でも活躍していた。
この活躍を受けて2017/18シーズンに向けたトップチームのプレシーズンメンバーにも選出され、実際に試合にも出場していた。ところが移籍市場閉幕間際にPSVからのオファーを受けるとアーセナルは売却を決断。移籍金はわずか60万ユーロ(約9600万円)で、その後の活躍ぶりを踏まえると時期尚早の放出となったかもしれない。
PSV移籍後のマレンの活躍は印象的で、2年目の2018/19シーズンからは3季連続でリーグ戦2桁ゴールを記録。中でもPSVでのラストイヤーとなった2020/21シーズンは公式戦45試合で27得点10アシストという圧倒的な成績を残し、2021年夏にドルトムントへ3000万ユーロ(約48億円)の移籍金で引き抜かれた。アーセナルを退団してからわずか4年で移籍金は50倍へと膨れ上がっており、後に売却をするにしても、期限付き移籍で経験を積ませて評価を高めてからなど他の方法もあったかもしれない。
MF:イスマエル・ベナセル(アルジェリア代表)
生年月日:1997年12月1日
現所属:ミラン(イタリア)
アーセナル在籍期間:2015年夏〜2017年夏
2023年は負傷に悩まされる1年間となったが、イスマエル・ベナセルがミランの主力選手であることは変わりない。2023/24シーズン終盤にパフォーマンスが戻ると、ゲームキャプテンを任された2試合でゴールを記録。復活を印象づけた。
彼も短い期間ながらアーセナルの在籍経験がある。ベナセルは2014/15シーズンにリーグ・ドゥ(フランス2部)に所属していたアルル=アヴィニョンにて、17歳という若さでトップチームデビューを果たしたが、チームは3部へと降格。この活躍に目をつけたアーセナルに引き抜かれた。
すぐにU-23(現U-21)の主力へと定着すると、初めてトップチームの試合でベンチ入りしたシェフィールド・ウェンズデイとのリーグカップ4回戦にて、思いがけない形でデビューする。先発のアレックス・オックスレイド=チェンバレンが5分、彼に代わって途中出場したセオ・ウォルコットも19分に負傷交代するとベナセルにチャンスが回ってきた。
しかし、結果的にデビュー戦がトップチームのメンバーに含まれた唯一の試合となり、この急遽のデビューがトップチーム定着に繋がることはなかった。それでもU-23ではゲームキャプテンを任されるなどユースレベルでは結果を残し、2016年9月にはアルジェリア代表デビュー。2016/17シーズン後半戦のリーグ・ドゥのトロワへの期限付き移籍も成功を収めた。
迎えた2017年夏にベナセルは当時セリエB(イタリア2部)に所属していたエンポリに100万ユーロ(約1.6億円)の移籍金で完全移籍。ここからの活躍は記憶にも新しいだろう。1年目から絶対的な主力へと定着してセリエA昇格に貢献すると、2016年夏に行われたアフリカ・ネーションズカップでアルジェリア代表の優勝の立役者となり、大会MVPを受賞した。
大会後に1720万ユーロ(約27.5億円)の移籍金でミランに引き抜かれると、2021/22シーズンのセリエA優勝を経験。名門復活への歯車の一員となり、3シーズンぶりの優勝を目指す今季も開幕からスタメンに名を連ねている。
MF:ネイサン・テラ(ナイジェリア代表)
生年月日:1999年7月5日
現所属:バイヤー・レバークーゼン(ドイツ)
アーセナル在籍期間:2007年〜2017年夏
バイヤー・レバークーゼンは2023/24シーズンにブンデスリーガ史上初めてとなる無敗優勝を成し遂げた。この快挙に欠かせなかったのは、リーグMVPを受賞したフロリアン・ヴィルツらスタメンの選手だけではない。
特に年明けは負傷者やアフリカ・ネーションズカップの影響でベストメンバーが揃わなかったが、それでも勝ち点を落とさなかったのは、ネイサン・テラのようなサブの選手たちも重要な役割を果たしたからにほかならないだろう。
主に右ウイングバックのジェレミー・フリンポンのサブとして起用されたテラは、彼が出場停止や休養で欠場したブンデスリーガでの3試合すべてでゴールに関与。ダルムシュタット戦では全2得点を叩き出し、ヴォルフスブルク戦では貴重な先制点、ボーフム戦ではアシストと、彼の活躍がなければ無敗優勝は達成できていなかったかもしれない。
そんなレバークーゼンの優勝に貢献したテラは、生粋のアーセナルユース出身の選手で、2007年から2017年夏までの10年間を同クラブで過ごした。ところがU-18からU-23(現U-21)へと昇格することができず、サウサンプトンと契約している。
サウサンプトンでも主力に定着することはなかったが、2022/23シーズンにチャンピオンシップ(イングランド2部相当)でリーグ史上最速優勝を果たしたバーンリーへの期限付き移籍が彼のキャリアを変える。ヴァンサン・コンパニ監督は彼をフィニッシャーとして活かす戦術を取り入れたことで得点力が開花し、リーグ得点王となる17ゴールを決めて優勝と昇格の立役者となった。
この活躍を受けて引き抜かれたレバークーゼンでも先述した通り、スーパーサブとして活躍しており、ブンデスリーガでは162分に1ゴールとハイペースで得点を重ねている。右ウイングバックのフリンポンの控え以外にも、ツーシャドーの一角や左ウイングバックでもプレー可能で、レバークーゼンが過密日程でもクオリティを落とさないのはこの男がサブとしてこれ以上ない働きをみせているからだろう。
MF:ユヌス・ムサ(アメリカ合衆国代表)
生年月日:2002年11月29日
現所属:ミラン(イタリア)
アーセナル在籍期間:2012年〜2019年夏
直近の5年間で、アーセナルが最も放出を後悔している若手選手はユヌス・ムサかもしれない。2019年夏にフリーでバレンシアに移籍してからすぐに才能を開花させた。
バレンシアに移籍した翌年の2020/21シーズンの開幕戦で、当時17歳ながらスタメンに抜擢されると、あっという間に主力に定着。若手選手ならではの粗さもあったが、自慢の走力をはじめとすフィジカル能力と中盤やサイドなど、あらゆるポジションでプレーできる万能性が評価され、バレンシア時代に指導を受けたハビ・グラシアやペペ・ボルダラス、ジェンナーロ・ガットゥーゾ、ルベン・バラハらすべての監督に重宝された。
迎えた2023年夏に多くのビッグクラブの間で争奪戦が起きた末にミランが1800万ユーロ(約28.8億円)の移籍金で獲得に成功した。ミラン1年目からリーグ戦30試合に出場するなど多くの出場機会を得ることに成功し、2点差を追いつく劇的な展開となった2024/25シーズンの開幕戦でも持ち味を発揮する。
73分にピッチへと入り、途中からダビデ・カラブリアに代わって右サイドバックのポジションに移ると、90+5分にクロスからノア・オカフォーのゴールをアシスト。どのポジションでも計算できる彼の万能性が活きた試合だった。
現在21歳のムサは過去に16歳でアーセナルを退団した経緯を地元誌『Evening Standard』にて「当時はアーセナルのトップチームには、そんなに早くからいることはできないと感じていた」と語っている。アーセナルからすると彼をフリーで退団させてしまったのは痛手だが、ムサのキャリアを踏まえると、16歳でロンドンを離れたのは良い決断だったと言えるだろう。
【了】
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