食事の際に気をつけなければならないマナーはたくさんありますが、「私は完璧!」と自信を持って言い切れるという方は少ないのではないでしょうか。今回は私の友人A子さんから聞いた、器の扱い方に関するエピソードを紹介します。

高級な器を使用する料亭でのアルバイト

学生時代を京都で過ごしたA子は、お座敷遊びも楽しめるような料亭で仲居のアルバイトをしていました。その店ではコースによっては料理を盛り付ける器に、陶芸家や美食家など超有名人が作った高級な器を使用しており……。そのため、A子たち仲居も器の取り扱いに細心の注意を払っていました。

器を重ねるのはマナー違反!?

A子が働いていた料亭では、お客様も見るからにお金持ちの方が多く、和食のマナーを心得た方がほとんどでした。しかし、中には食べ終わったあと、器を重ねる方もいて……。

実は、食後の器を重ねられると、お店側は困ってしまいます。特に、料亭と言った高級な器を扱う店では、器は繊細なので、重ねることで傷がついてしまう可能性があるからです。

器を重ねる行為に店側はヒヤヒヤ

お客様からしたら、善意で器を重ねてくださっているかもしれませんが、店側にとってはヒヤヒヤもの。店にとっては、器も大切な商売道具です。お客様が器をいくつか重ねる際に手を滑らせてしまったり、重ねたことで少しでも器が欠けてしまったりすれば、次からはその器は使えなくなってしまうからです。

大人数の会食では重ねてくる傾向が

ある日、料亭で大人数での会食があったときのことです。「ほら、器を重ねてあげて」「仲居さんに渡してあげてね」と気遣ってくださる複数のお客様が!

A子が笑顔で「お気遣いありがとうございます。そのまま置いておいてください」と言う声も虚しく、器はどんどん重なっていってしまいました。

そのままにしておいてほしい……

店側としては食べたあとの器は、重ねたり移動させたりせずそのままにしておいてもらうのが一番ありがたいのが本音。しかし、最初から「器を重ねないでください」とわざわざ伝えるのもお客様に失礼にあたるのではないかと思っていたA子。心の中で「重ねないで〜」と訴えることしかできませんでした。

忙しそうな仲居さんたちを見ていたら、お客様も手伝ってあげたくなったのかもしれません。器を重ねるのはお客様からの気遣いだったようですが、意図せずマナー違反になってしまったようです。食べ終わった後は、片付けはスタッフの方にお任せするのが良さそうですね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:ichika.K