人の評判を下げることで、自分の評判を上げようとする人は少なくありません。自分をアピールしたいがため嘘の噂を流してまで、人を利用しようとする人も……。今回は、そんな自分上げしたい人に不可解な噂を流された経験のある、私の知人Mさんのお話です。

バリバリのキャリアウーマン

Mさんは、大企業でバリバリ働くキャリアウーマン。仕事に真摯に取り組む姿勢が評価され、出世コースを突き進んでいました。

「私もMさんみたいになりたいです! 」
2つ下の後輩女子はすっかりMさんに憧れていて、営業に同行したり仕事のサポートをしたりと、いつもくっついていました。

Mさんはちょっとクールな感じの美人であるため、言い寄ってくる男性も絶えません。

しかし実は恋愛経験の少ないMさんは、男性と仕事以外で接するのが苦手なため、特に親しくしている男性はいませんでした。

海外支社から来たイケメン

ある日Mさんの部署に、今まで海外支社で経験を積んできた超イケメンが上司として転属してきました。
「課長、超カッコいいですよね!」
「そう? まああなたがそう言うならイケメンなんだろねー」
後輩女子はMさんに言いましたが、ちょうどMさんは急ぎの仕事をしていたので気のない返事しかしません。

そしてイケメン上司が来てから数週間後、後輩女子とイケメン上司が付き合っているという噂が社内に流れました。

どうやら2人が一緒に食事をしているところを、誰かが見ていたようでした。

「噂になっちゃって、困っちゃいます〜」
後輩女子はさほど困っていない様子で、Mさんに言いました。
「根も葉もないなら否定した方がいいんじゃないの?」
Mさんがそう言うと、後輩女子は「どうしようかなあ〜、完全に嘘ともいえないし」と煮え切らない様子。
「まあ、私はどっちでもいいけど…… 私もそういうの経験してみたいもんだわ」
どうやら恋をしているらしい後輩女子を、少し羨ましく思うMさんなのでした。

イケメン上司からの誘い

後輩女子とイケメン上司の噂はしばらくすると、自然に薄れていきました。

一方のMさんは、仕事でイケメン上司と関わっているうちに、そのスマートさや仕事への熱意に惹かれるように。

しかし自分の後輩がイケメン上司と付き合っているのかも、と思うと、無理に自分をアピールすることなどとてもできなかったのです。

そんなある日の残業中、いきなりイケメン上司がMさんを食事に誘ってきました。
「課長、あの子と付き合ってるのでは? 私ややこしいことは避けたいんですが」
「いや、それが…… 」
イケメン上司は困った顔で説明を始めました。

イケメン上司は転属してすぐに、仕事ができてまじめなMさんのことが気になり、Mさんのことをよく知りたいと親しい後輩女子に言ったそうです。

すると後輩女子の答えはこうでした。

「Mさんは仕事が一番だから、今は男性と付き合っている暇はないらしいです〜。もうほんと、男なんかいらないって感じ。それに比べて私なんて、仕事もできないし、趣味は家事だし…… 家庭的だねってよく言われるんです」

イケメン上司は後輩女子のセリフを信じて一度はMさんのことを諦めたものの、やはり諦めきれずに誘ったとのことでした。
「え、私そんなこと言ってないですけど…… 男いらないとか」
「え、そうなの? とんだニセ情報つかまされたな。僕はずっと君のことが気になってたんだ。だから彼女に色々聞くために食事に行ったんだけど」
イケメン上司はそう言って、あらためてMさんを食事に誘ったのでした。
「ほんとに付き合ってないんですか?」
「付き合ってないよ。僕は仕事を頑張っている君が好きなんだ」

後輩女子はイケメン上司を落としたいがために、Mさんの嘘の情報を伝えたのでしょう。

その後Mさんとイケメン上司は交際を開始し、順調に愛を育んで結婚に至ったそうです。

自分の恋のために嘘の情報を流しても、いずれはバレてしまうものですね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子