先週に引き続きニッポン放送の番組で、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんと対談した。

野口さんは著書『年金崩壊後も生き抜く「超」現役論』(NHK出版新書)で、論理的に年金破綻を警告している。私が参院議員時代に、年金改革を提言したときにもアドバイスを頂いた。このままいけば「2040年代に年金の積立金が枯渇する」と衝撃の試算もされている。

現在の賦課方式の年金制度は、現役世代から年金受給世代への仕送りのようなもので、少子化が解決されなければ、破綻は時間の問題だ。賦課方式から、積み立て方式に切り替えた方がいいのでは、と私も議員時代に考えた。

しかし、今の基礎年金は、半分を国庫が負担している。積み立て方式になれば、その半分がなくなるわけだから、国民は猛反対するだろう。ただ、賦課方式を続けていれば、いずれ年金も財政も破綻し、支払った保険料すら戻ってこない可能性がある。

野口さんは、年金制度が持続できる根拠として財政検証に触れ、「物価上昇率を考慮した実質賃金が1%以上の伸びで今後も続くという見通しが甘すぎる」と批判する。解決策として「最低でも受給者1人当たりの受給額が現在と変わらないとすれば、負担を1・33倍に増やす」、「負担を増やさなければ、給付を現在の75%に圧縮する必要がある」と試算する。

しかし、ともに国民に負担をお願いする案であり、政治は先送りにしている。とくに年金受給世代の投票率は高く、与野党ともに改革に及び腰だ。政府は年金の支給開始年齢の繰り下げをもくろむが、支給開始年齢が70歳になると、老後2000万円問題が「3000万円」問題に変わると野口さんは指摘する。資産がそれだけある世帯は1割で、9割が対応できないという。

そうなれば、高齢者が働き続ける社会作りが最も重要になってくる。「働いた方が得ですよ」とインセンティブを与える制度が必要だ。野口さんは著書で、高齢者が働く悪条件に触れ、「働いたら税率50%の税がかかるのと同じだ。医療費が3割に、介護保険の負担率も3割になる。働き続けると年金の一部もカットされる。この問題を大いに議論すべき」と力説していた。

「ワタミの宅食」でもお弁当の配達スタッフとして、約7000人の高齢者に働いていただいている。お客さまの大半も年金受給者だ。

現在、月1回の特別弁当が大人気で、先月の「大海老天重」は約5万食の注文があった。今月は土用の丑の日にあわせて「うなぎ弁当」をお届けする。少し高くても特別弁当が楽しみというお客さまは想定以上だった。財政破綻が起きれば、こうした高齢者の笑顔がなくなる。秋の自民党総裁選が注目されはじめたが、目先の権力争いではなく、年金ひとつとっても「国家百年の計」の議論を期待したい。 (ワタミ代表取締役会長兼社長CEO・渡邉美樹)