今季開幕から渦巻く、〝飛ばないボール〟疑惑の真相が暴かれるのか。労組・プロ野球選手会は4月30日、各球団の選手会を通して本塁打急減に関する聞き取りを始めることを明らかにした。

4月29日時点での12球団の本塁打数は計151試合で139本、1試合平均は0・92本。昨年同日時点の137試合で179本塁打、1試合平均1・31本を大きく下回っている。選手会の森忠仁事務局長はこの日、東京都内で日本野球機構(NPB)と事務折衝。「ボールに関する話題は出なかった」というが、「これだけ騒がれているので気にはなっている。5月から各球団の選手会役員に確認したい」と、選手側の肌感覚の意見を聞き取っていく姿勢だ。

一方、事務折衝に出席した広島・鈴木清明球団本部長は「ウチもホームランはまだ1ケタ。もっと飛ぶようにしてほしいわ」とこぼしつつ、「反発係数は基準値内。それは間違いないよ」と首をひねる。公式球の反発係数は「0・4134」を目標値として、「0・4034―0・4234」の上下限が設定されているが、今季の使用球の反発係数は目標値に近いものだったという。

現場の声はどうか。ヤクルトの杉浦繁打撃コーチ(66)は「今年はオープン戦から、『行った』と思った打球がスタンドまで届かないことが多い。絶対におかしい」と違和感を隠さず。別の球団の外野手からも「『投手の実力が上がった』って話もありますけど、ここまで差が出るものですかね? 今のところ守備位置を変えるまではしてないけど、みんな『スイングの速度は同じなのに飛ばない』って言い合ってます」と異変を訴える。

2013年に統一球を密かに飛びやすくしていたことが発覚し、コミッショナーの辞任にまで発展した経緯もあり、ボールの仕様への不信感は根強い。ある球団の幹部は「ボールを分解して中身を確認する。検査データは問題ないといっても、実際に使用する段階ではどうなのか。使用済みの試合球を独自に検査してもいい」と強硬手段を唱えるほど。「飛ばない」を疑惑のままで終わらせるつもりはなさそうだ。 (片岡将)