世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第19回は「一杯どうぞのコミュニケーション、いる?」です。

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一人飲みで見かける「一杯どうぞ」

「一杯どうぞ」
「いいんですか? いただきます!」

居酒屋のカウンター席で飲んでいると、こんな会話が聞こえてくる。客が店員にドリンクを一杯ごちそうしている様子だ。時には店主だけではなく、スタッフ全員に振る舞っている気風のいい客もいる。

そんな様子を尻目にしながら、自分のグラスを空ける。私も今までは店主に奢るタイプだった。

「一人で飲んでいてもつまんないしね!」

と、財布と相談しながら「どうぞ、どうぞ」と乾杯を交わす。自営業で、大好きだった祖父が「どこで誰の世話になるのか分からないのだから」と、あちこちで奢っていたという武勇伝を聞きつけ、自分も祖父のようになりたいという憧れもあった。一見客であれば「お近づきの印に」なんて言いながら、奢る人もいるだろう。

ただ最近はこの行為を一切やめてしまった。そこまでに至る経緯は今から綴っていくので、ぜひひとり飲みを楽しんでいる人の参考にしてほしい。