人生の苦難と親子の絆を見事に描いている

多くの人の心を掴んだのは、この作品が人生の苦難と親子の絆を見事に描いているからだろう。この7月から東京・大阪でミュージカル『ビリー・エリオット リトル・ダンサー』の公演もある。なのでまずは映画で予習!

さて主人公「ビリー」は、「男らしくなってほしい」と願う父親の夢を託され、ボクシングジムに通っている。しかし、このジムでクラシック・バレエのレッスンを見た途端、ビリーはバレエに魅了されてしまうのだ!

ビリー演じる少年が拙く体を動かすのを見るだけで、私たちはわくわくしてしまう。舞踊とは何という喜びに満ちた行為なのか!

同時にこの作品は、「労働争議」「組合運動」という硬派の社会問題も掘り起こしている。舞台となるのは1980年代のイギリスの炭鉱の町。長く政権を握った労働党の政策によって財政難となったイギリスは変革を必要とし、保守党が政権を握る。

かの「鉄の女」、マーガレット・サッチャーが1979~1990年まで首相を務め、新自由主義経済政策と「小さな政府」(公共事情や福祉を切る)を進めた、労働組合の組合運動を抑圧した時期である。

即ち、この映画で「労働組合の敵対する権力の中枢」にいたのがサッチャーだ。