厚生労働省の「令和4年 人口動態統計」によると、日本人の死因第2位は「心疾患」で、23万2879人が亡くなったそう。そのようななか、「命にかかわる血管と心臓の病気も、生活習慣で予防できる」と話すのは、2012年に当時の天皇陛下(現・上皇陛下)の執刀医を務めたことで広く知られる、心臓血管外科医の天野篤先生。今回は、天野先生が「命を落とすリスク」を減らすためのアドバイスをまとめた自著『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』より、一部引用、再編集してお届けします。

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「しっかり噛む」という動作が心臓に影響を与えている

「噛(か)む=咬合力(こうごうりょく)が弱い人は心臓疾患になりやすい」という研究報告があります。

国立循環器病研究センター、新潟大学、大阪大学の共同研究チームが、大阪府の吹田市民を対象としたコホート研究(統計上、同一の性質を持つ集団への調査研究)を解析したもので、50〜79歳の一般住民のうち歯科検診を受診した1547人を追跡したところ、「噛む力=最大咬合力が低い人は、噛む力の高い対象者に比べて循環器疾患の新規発症リスクが最大5倍も高い」ということがわかったのです。

なぜ、噛む力が弱くなると心臓疾患を発症しやすくなるのかについては、まだはっきりしたことはわかっていません。

ただ、「しっかり噛む」という動作そのものが心臓に影響を与えていることが考えられます。