『あんぱん』モデルやなせたかし秘話。<お母さんはずるく生きたつもりだったの?>戦争から帰ってきた嵩が再婚相手に先立たれた母と再会。「許してね」と告げられて…
婦人公論.jp6/11(水)12:30

『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(著:梯久美子/文春文庫)
「もっとずるくならないと」
一方、母は嵩にこう言って聞かせた。
「おまえみたいに真っ正直だと、馬鹿を見るよ。生きていくには、もっとずるくならないと」
ずっとあとになって、嵩は思った。お母さんはずるく生きたつもりだったの? でも、それはあんまりうまくいかなかったよね、と。
嵩は戦争から帰ってきたとき、何十年ぶりかで母のひざまくらで眠った。母は再婚相手に先立たれ、田舎でひとり暮らしをしていた。
顔に熱いものが落ちてきて目をさますと、それは母の涙だった。母は横を向いたまま、小さな声で、「許してね」と言った。
※本稿は、『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(文春文庫)の一部を再編集したものです。











