ステイホームの時間が増え、ずっと家の中というのも息が詰まる。目が届く場所ならと、子どもを家の前で遊ばせる姿を目にすることが増えた一方で、その声や騒音に苦しむ人も──。いま、全国で「道路族」が問題化している。道路族とは、まるで公園で遊ぶように道路で遊び、騒音やものを壊すなどの迷惑をかける子どもと親たちのことだ。考え方の違いから、不幸にも法廷にまで持ち込まれたご近所トラブル、その当事者が体験を語る(取材・文 樋田敦子)

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それは新興住宅地、12戸の区画で起こった

関西地方に住む松本香さん(仮名、パート・45歳)は、ご近所トラブルに巻き込まれて8年になる。家の前で立ち止まった近隣の住人ににらみつけられる。目の前で車やバイクのエンジンをふかされる。卑猥な言葉を投げつけられる……。一時はナイフで刺されないようにと、出かけるときはバッグにまな板を入れて歩いていた。

「身の危険を感じました。ストレスがひどくて夫も私も心療内科に通いましたが、根本的な原因が解決されないので、現在も薬を飲んでいます」

なぜこんなことになってしまったのだろうか。

2009年、松本さん一家は新興住宅街に引っ越してきた。袋小路にコの字を描くように12軒が立ち並び、隣家との距離は約70センチメートル。同時期に入居した11軒の家には、乳児から幼稚園児までの子どもがいた。松本家の長男は小学1年生、他家の子よりも少し年上だ。引っ越した当初は新しいご近所同士、仲良くやっていこうという雰囲気で、何軒か集まるお茶会に参加したこともある。しかし数年後、松本さんはこの住宅地の数人から嫌がらせを受けるようになる。

入居してすぐ、新興のこの地区からも町内会の役員を出すことになった。子どもが小さいなどの理由でなり手がいなかったため、松本さんが引き受けた。一般的に役員は持ち回りが多いが、翌年も同じく人選は難航。仕方なく松本さんが再び引き受けた直後、夫にがんの疑いが。検査や治療のため、辞退を申し出た。ところが役員を選び直す際に、「松本さんに投票しよう」と投票先を申し合わせる一斉メールが届いたのだ。町内会長の助言で負担の重い三役は逃れられたものの、やむなく他の役員として手伝うことに。

松本さんはパートで働き、夫の入院先に通い、子どもの世話、さらに町内会のメインイベントである祭りの準備にも参加した。精神的にも肉体的にもパンク寸前で役目を終えたとき、「来年度も」と頼まれたが、「もう無理」と町内会を退会することを決めた。