人生100年時代において、「老後ライフ」の設計は大切。『婦人公論』の読者アンケートで「理想の老後ライフ」を聞いたところ、「夫婦の時間を楽しむ」と答えた人も。夫の定年を老後の始まりと捉え、共通の趣味を見つけたり、旅行の計画を立てたりしようと考えている人もいるのでは。しかし、さあこれからという時に、先が思いやられるような出来事が起きてしまうこともあります。清水多喜子さん(仮名・66歳・主婦)は、単身赴任先から帰ってきた夫と暮らすうち、「私の知っていた夫とは違う」と違和感を覚え始め……

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「指図ばかり!」と突然キレて

この地に住んで三十余年、ついに町内会長の大役が回ってきました。私の住む地区では、特別な事情がないかぎりお役を受けなくてはなりません。定年退職した夫に切り出すと、「おれがやる」とすんなり引き受けてくれたのですが、夫は2年前まで大阪で単身赴任生活を送っていたので、ご近所の人の顔も名前もわからないまま。月2回の会合に顔を出し、なんとか仕事をこなして半年が経ちました。

今年の夏のある日、夫から「**団地の役員宅に届け物に来たんだけど、どうやら間違えて別のお宅に置いてきたらしい。ここがどこかわからないから、迎えに来てくれ」と電話がありました。聞けば、夫が迷っているのはわが家の窓から見えるような場所。

大手建設会社に40年勤務していた夫は全国各地の工事現場を歩き回っていたので、地図や地理にも詳しいはず。なのに、たった5軒への届け物すらできないのです。定年後、朝から晩までテレビの前で過ごしていたから、脳の働きが鈍ってしまったのでしょうか。

定年を機に再び同居を始めて2年、「私の知っていた夫とは違う」と感じることが増えていました。車に乗っているとき、助手席で私が「この道を右に曲がって、次を左に」とナビをしたら、「いちいち指図ばかり!」と突然キレたり、珍しく風呂掃除をすると言うので横で見ていたら、監視されているとでも思ったのか、不機嫌になってぷいとやめてしまったり。

結婚後、きちんと同居したのはわずか3年ですが、仕事熱心で、優しい人だと思っていました。たまにぶつかることはあっても声を荒らげるようなこともなく、娘たちのこともよく可愛がってくれたと思います。

単身赴任のときは毎晩のように電話をしましたし、夫婦としては会話が多いほうだと思っていたのに……。いまでは、話を切り出したり何かちょっとした頼みごとをするのにも、「こんな言い方をしたら怒らせやしまいか」とビクビクしています。