2018年9月15日に75歳で亡くなった女優の樹木希林さん。樹木さんは生前、子どもたちが自ら命を絶つこと、特に新学期を迎える9月1日に自殺が増加することに心を痛め、NPO法人の取材に応じたり、関連するイベントに登壇するなどして命の尊さを訴えていました。不登校新聞編集長・石井志昂さんと希林さんの娘で文筆家の内田也哉子さんが、希林さんが9月1日に対してどんな思いを抱えていたか、あらためて話し合いました。

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母の目の前にあった“死”

石井:どうしても聞いておきたいことがありまして。先ほども言った通り、樹木さんが“9月1日”を気にかけていたというのは本当に驚きだったんです。

というのも、当事者と会ったのも一回きり、白書のデータ(2015年7月に内閣府から発表された「9月1日に子どもの自殺が多い」というもの)を見たのも一回きりで、ご本人の当時の様子からしても、そこまで心を砕いていたようには見えなかったんです。

だから普通に考えれば、実は家族の誰かがそのことで苦しんでいたんだとか、樹木さんなりに連想させる何かがあったのかなと思ったのですが……。

内田:まったくないですね。

石井:まったく、ですか。

内田:本人の中では、ですよ? だってそういう身内はいなかったから。

もちろん本人はずっと”自閉症”気味だったみたいだけど、別にそれを苦に思わないタイプだった。もしかしたら最初は世の中からズレていると、卑屈になった瞬間があったのかもしれないけど、それが自分の“個性”なんだと小学校から気づいていたみたいですし、なにより母は世間の物差しが当てはまらない図太い神経を持っていたから(笑)。

でも、この問題に対してあそこまで打ちひしがれていたというのはやっぱり、自分が今まさに”死”に向かっていたからなのかな……と思います。

その事実はお医者様からも突きつけられていたし、1か月の入院期間中に何度も危篤状態になっていましたから。