最初の難関

2022年1月。わたしはパンデミックを経て2年がかりで、やっとニューヨークに辿り着いた! 肌を刺す冷たい空気と、心地よい緊張感。迎えの車が走り出すと、はるか先にマンハッタンが見えた。10歳の息子は長旅の疲れで寝てしまっていた。かたわらで夫が、興奮して車窓から写真をとり続けていた。その姿を見て胸が熱くなった。思えばこの2年、私たちは行方の知れない小舟に乗ったような毎日だった。パンデミックで出入国が制限され、留学予定の大学も閉鎖されオンラインになってしまった。

いつの間にか私は50歳になり、周囲に何度も渡米の延期を伝える度に「50歳で子連れ海外留学なんて無理だよね」と自虐的になった。そして、夢を何度も見た。何度も挑戦して、何度もダメになる夢。だから飛行機に乗った後も、ニューヨークに着くのか疑心暗鬼だったし、JFK 空港に降りたあともこれが現実だと信じるまで時間がかかった。今日から家族でこの街で暮らし始めるのだろうかと。

時間を少しさかのぼる。オトナの子連れニューヨーク留学を決めて、密かに英語の勉強をしてフルブライト奨学金を得たのが2019年の暮れ。最初の難関は、留学に夫が同意してくれるかだった。

我が家は夫婦で同じ仕事をしており、家事も金銭面の負担もほぼ平等。夫に許可を得なければできない案件は基本的にない。だけど今回は海外留学だ。子どもは小学生だし、夫の同行は必須だ。さらに高齢の義母と実母についてもケアが必要だった。