プレゼンテーションや会議、商談といったビジネスの場はもちろん、日々の生活のなかでも、友人や家族など、自分以外の誰かに動いてもらわなければならない場面が多々あります。でも、相手を“思うように”動かすのはなかなか大変……。歴史家・作家の加来耕三さんは「その方法を教えてくれるのが、歴史上の偉人たち」と語っています。たとえば、後鳥羽上皇の挙兵を前に動揺した御家人たちを奮い立たせた北条政子の演説からは学ぶものが多いそうで――。

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北条政子の演説

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれていますが、北条の一族を中心とした鎌倉幕府の勢力が増していく中、京都にある朝廷では、徐々にその勢いを憂慮するようになります。特に三代将軍・源実朝が暗殺されたことで、朝廷と鎌倉幕府の関係はさらに不安定に。

ついに、その勢力を挽回すべく挙兵した後鳥羽上皇が“北条義時追討”の院宣(いんぜん)を諸国に出すと、朝敵とされた鎌倉の御家人たちは動揺しました。これがいわゆる承久の乱です。

一方、鎌倉幕府が編纂した歴史書『吾妻鏡(あづまかがみ)』によれば、政子は御家人たちを前に、次のような言葉をかけたといいます。

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皆さん、心を一つにして聞いてください。これが私の最後の言葉です。亡き頼朝公が朝敵を征伐し、幕府を創設して以来、皆さんの官位といい、俸禄(ほうろく)といい、その恩は山よりも高く、海よりも深いと言えましょう。皆さんも、その恩に報いる心は浅くないことと思います。

ところが今、上皇は逆臣どもの讒言に心を惑わされてしまったのか、物事の道義に反した命令を下されました。その名を惜しむ者はただちに京都に上り、裏切り者である藤原秀康、三浦胤義らを討ち取り、三代にわたる将軍の遺産を守りぬきなさい。

ただし、上皇側につきたい者は、今すぐに申し出なさい。

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