現在発売中の『婦人公論』2022年10月号の表紙は、女優の松原智恵子さん。16歳で映画デビューして61年、これまで多くの作品に出演し、今年1月には喜寿を迎えた松原さん。女優として充実した日々を送るなか、この2月に50年連れ添った夫を見送りました。今、この先の人生に思うことは……。本誌から、特別に記事を先行公開いたします。 (撮影=浅井佳代子 構成=福永妙子)

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年をとることを深刻に考えない

「喜寿」と言われても、どうもピンときません。女優としては祖母役が多くなるなど役柄の変化もありますし、もちろん自分の年齢は承知しています。ただ、「ああ、年をとったわ」とか「もうこんな年齢なのね」といった実感がないのです。

私はもともと、サッと気持ちを切り替えて引きずらない性格。失敗をしたり、大変な出来事が起きたりしても、落ち込むよりは次に向かって進みましょう、と思うタイプです。物事をあまり否定的に捉えないんですね。

そんな性分もあってか、年をとることもさほど深刻に考えたことはありません。たしかに、台詞覚えは以前より悪くなりました。体力だって、50代、60代の頃よりは衰えているはず。でも、そういったマイナス面よりも、仕事を続けられる喜びのほうに気持ちが向くのです。

私くらいの年齢になると、生前整理などいわゆる「終活」をし始める人も多いのだと聞きます。私も先のことを考えなくてはと思いつつ、これがなかなかできなくて……。

仕事柄、着物や洋服はたまる一方なので、最近は若い頃の着物を姪たちに譲るようにしています。空いている部屋にずらりと並べておいて、ほしい人に持っていってもらう。ただ、これは生前整理というより、着なくなったものを活用してほしいという思いで始めたことです。