権力争いに冷めた視線を送りつつ、一本気で情熱的な人間味も見せる――。のちに「学問の神様」と称される菅原道真の若かりし日々を、月城かなとが熱演。田渕大輔が舞台化した本作は、灰原薬による人気歴史漫画ならではのテンポの良さと、人の心のありようまで問いかける月組の芝居力により、最後の一瞬まで目が離せない (撮影=岸隆子 取材・文=小野寺亜紀)

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サスペンスばりの物語を軽妙に

大学寮で学ぶ文章生でありながら屋敷で書を読み耽る菅原道真は、政争が続く京の都から、はるか唐の国への憧れを抱くが……。

日本物に定評ある月城かなとが、雅びやかな衣装を着こなし、サスペンスばりの物語を軽妙に運ぶ。

ラストの歌は月組トップスターの心意気にも重なり感動的だ。

◆『応天の門』のあらすじ

平安初期、京の都では人々が百鬼夜行の噂に怯えていた。治安を守る検非違使の長・在原業平(鳳月杏)は、帝にこの怪事件の解決を約束。才気を見込んだ道真(月城)に、捜査への協力を依頼する。しぶしぶ従う道真は、唐人の女店主・昭姫(海乃美月)の助けも得て、鬼の仕業に見せかけた権力者たちの陰謀に迫ってゆく


写真を拡大 満月の夜、不思議な縁で引き合わされた道真(月城)と業平(左・鳳月)のユニークなバディが見もの。右は道真の学友・紀長谷雄(彩海せら)


写真を拡大 朝廷での権力拡大を企む藤原基経(風間柚乃)と、業平への想いを断ち切れぬ基経の妹・藤原高子(天紫珠李)