昨年来からのコロナ禍の影響により、全国的に特に児童生徒や女性による自殺者が増加しています。政府ではコロナ禍による自殺を防止するために新たな緊急支援策として「孤独・孤立対策」「相談支援体制の強化」「自死遺族支援策」「公営住宅の貸し出し」などについて内閣官房室に対策室が設置され取り組みの強化が図られました。

 そこで私たちNPO法人「心に響く文集・編集局」はこの支援を受け、昨年7月から東尋坊での悩み事相談業務を開始したところ、わずか約10か月間で全国29都道府県から228人の電話、訪問、メールによる悩み事相談を受理しました。その相談者のうち66.6%の152人がうつ病などの精神疾患者であることを自ら告白して相談する人が多くいましたので、その一例をここに紹介します。

 今年3月のとある日の昼頃のことです。関西地方に住む50歳代の女性から電話で、「昨年11月に大学2回生であった一人息子が約5年間うつ病に苦しみ精神科での入退院を続け、毎日10錠以上の投薬治療を受けていましたが、薬物による自殺未遂をした挙句、とうとう自宅で頸動脈を切って自殺してしまったのです。もう私には夢も希望も無くなりました。息子がいる天国へ行こうと思っています…」との相談でした。

 この母親が言うには、息子は真面目な人間であり、生きたくて病院の先生に言われる通り、出された薬を欠かさずに毎日服用していたそうです。またうつ病に関する本を買ってきて、毎日朝陽を浴びるなどの日光浴をしても治らず、自殺してしまったのです。このことを精神科医の先生に「息子は自殺してしまいました…」と報告をしたとろ「それは事故です」と簡単に一言で追い払われてしまったというのです。

 この母親は「彼は真面目な性格で、生きたくて、生きたくて精神科の医師が言われる通りに毎日薬物治療を続けていたのに残念です。これは治すことの出来ない精神科医の先生に騙されて殺されたのと同じだと思います…」と述戒されていました。私としては、この治療医師に「最善を尽くしましたか…?」と問い詰めたい思いです。

 昨今、医療過誤について医療事故調査・支援センターなどによる医療事故調査制度がありますが、この制度によると「医師において患者の死亡が予期できた事故」については国に報告する義務は無いことになっているとの事であり、治療を受けていた患者さんが自殺をしても何も調査されずに闇の中に葬られている現実を見てしまったのです。

 今年4月3日「社会的孤独・孤立化防止対策」の委員さんでもあります国会議員と福井県議会議員の先生から、自殺防止に取り組んでいる私たち現場の者と意見交換をしたいとの申し入れがあったためお受けしました。その時に今回事例を紹介し、現場からの提案として、うつ病患者さんなど精神障害者を自殺に追い込まないために、各府県にある指定医療機関で、薬物療法以外の「認知行動療法」「環境調整」「物理治療」を行うために常設の場所を整備し、医師が薬物治療以外の幅広い治療をすべきであると、義務付けされた法整備をして欲しいと強く提案させて頂きました。

 生きたいと治療に励むわが子を失ってしまった母親の苦しみを思えば、最善の治療を受けられる環境は絶対に必要だと思わずにはいられません。

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 福井県の東尋坊で自殺を図ろうとする人たちを少しでも救おうと活動するNPO法人「心に響く文集・編集局」(茂幸雄代表)によるコラムです。

 相談窓口は電話=0776817835