約2年前に東京から福岡に移住してきた元放送作家のきむ兄。恋焦がれた「博多祇園山笠」に、ついに初観覧が叶いました!「福岡に興味のある県外の人に、来年はぜひ遊びにきてほしい!」という切なる願いから、山笠初心者が知っておくべき魅力をまとめてもらいました。

きむ兄からの今月のひとこと
東京の皆さんへ!博多祇園山笠の魅力を解説するので、2023年7月15日はぜひ遊びに来てね!

夏真っ盛りの福岡です。東京から福岡に移住して2回目の夏を迎えていますが、福岡の夏は東京よりも暑く感じます。福岡の日の入り時間が30分ほど東京より遅いのも影響しているのでしょうね。

さて、今回は私が人生で初めて見た「本気の福岡」をレポートしてまいります。フクリパの最初の記事で「きむ兄はまだ本気の福岡を見ていないので、早く見たい」と書いたのですが、ついに福岡の本気を見ることができました。

移住してから初の追い山笠見物


福岡市民、もとい博多っ子にとって7月は特別な月です。毎年7月1日から15日にわたって行われるお祭り「博多祇園山笠」。この祭りのために博多っ子は生きていると言っても過言ではないのです。

「山笠ってあれだよね。早朝から神輿みたいなのを担いでいろんなグループがタイムレースを競う祭りだよね。テレビのニュースで見たことあるよ」という東京の人も多いのではないでしょうか。私もテレビの報道現場にいたので、毎年7月15日には博多祇園山笠のニュースを見て、「すごい祭りだなぁ」と思っていました。

これは最終日に行われている「追い山笠」と呼ばれる博多祇園山笠のフィナーレを飾る行事です。福岡市博多区を7つの流(グループ)に分け、櫛田神社から約5キロのコースを一気に走り抜けます。

「山笠って福岡市内を走り回っているんじゃないの?」という東京の方もいると思うのですが、こちらのコースマップを見ても分かるとおり、博多区を出ることは基本的にはありません。追い山笠は毎年7月15日午前4時59分に始まり、午前6時過ぎには終了します。今年は3年ぶりに追い山笠が復活しました。「追い山笠復活」のニュースを耳にしたときは、いち福岡市民として「ついにやるのかー!」と狂喜乱舞した記憶があります。


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この狂喜乱舞をするまでに、移住をしてから山笠に関する話を友人に聞いたり、博多を舞台にした青春群像劇「博多っ子純情」を昨年末から正月にかけて全巻一気読みをしたりして、山笠に関する「あれこれ」を知りました。いくつかご紹介します。

舁き手は山笠期間中、きゅうりを食べてはいけない


これは、輪切りにしたキュウリの切り口が、山笠の祭神・スサオノミコトのご神紋である木瓜(ぼけ)の花に似ていることに由来すると言われています。期間中、学校給食の献立からキュウリの文字が消えるほど、その習慣は徹底しています。

「仕事してますか?」と聞きたくなるくらい、日中に舁き手が街中を歩いている。


山笠の期間は毎年決まっているので、平日も休日も関係ありません。このため、理解のある職場であれば「山笠休暇」という制度が存在しています。「山笠の時は仕事にならん」と個人経営のお店であれば営業時間を短縮したり締めたりする光景も見られます。

転勤中のサラリーマンが山笠期間だけは戻ってくるのも、よく聞きます。それほど、博多っ子は山笠に情熱を傾けているのです。

「え、3局もテレビが生中継してる!」


テレビ番組表を見て驚きました。今年はNHK、九州朝日放送(KBC)、RKB毎日放送の3局が生中継をしていました。東京の祭りで生中継をするのは、隅田川花火大会くらいなので、いかに地元に密着している祭りかと思い知らされますね。

市長ががっつり山笠に関わっている。


追い山笠の時には櫛田神社にいましたし、山笠のことを調べているときにこの動画を見つけて、仰天しました。浅草の三社祭で東京都の台東区長が神輿担ぐようなものですよね…。


私の宣材写真を撮ってくれているカメラマンさんが現地で撮影した櫛田入りの写真。早朝5時過ぎからすごい迫力!

本来ならば、ここで博多祇園山笠の歴史や伝統、15日間の祭りの日程などを説明するのが一般的なレポートだと思うのですが、それを書いてしまうととんでもない字数になってしまうので、その辺の説明は福岡の観光サイトや博多祇園山笠関連のサイトを見ていただければと思います。

この記事で、東京の皆さんに伝えたいのは「動く山笠は何としてでも生で見てほしい!」という、きむ兄の情熱的な思いです。

山笠一色になる博多の街は熱すぎる!


私が博多祇園山笠を知ったのは20年ほど前です。キッカケは何を隠そうマンガ「部長 島耕作」。島耕作が本社の部長から福岡の支社に出向になり、福岡での生活が描かれていたんです。その中で、島耕作が舁き手(山笠を担ぐ人)になって、博多祇園山笠の歴史や山笠の仕組み、舁き手としての心得などを体得していきます。これが非常に良くできたお話だったこともあり、いつかは追い山笠を見てみたいなぁという気持ちに火がついたのです。

余談ですけど、外から来た人が舁き手になるのは、流のしきたりなどで基本的には不可能と言っていいでしょう。このあたりはマンガならではですね(笑)。

さて、待ちに待った2022年の博多祇園山笠。前年から先に復活していた飾り山笠が博多・天神の各地にどどーんと披露されました。飾り山笠もざっくり説明すると、「いま博多祇園山笠、やってるよー!」と皆さんにお知らせする物だと思ってもらえればと。これを見るだけでも「博多に夏が来たぜー!」という気持ちにさせられます。


九州最大の歓楽街・中洲のど真ん中にも飾り山笠が!

15日間の期間中、「舁き山笠」と呼ばれる動く山笠が見られるのが7月10日頃から。7つの流それぞれが細かい路地を、地元の皆さまにご挨拶をするかのように山笠が動き回ります。これを見るのも迫力があるのですが、追い山笠を見るために東京から来るのであれば、7月12日午後3時59分から始まる「追い山笠馴らし」、13日午後3時半から始まる「集団山見せ」を見るのもオススメします。

追い山笠馴らしは、言葉の通り15日の追い山笠の予行演習的な行事で、本番より1キロほど短い4キロのコースを駆け抜けます。集団山見せは舁き山笠が博多区を出て川を挟んだ中央区天神に入り、天神の福岡市役所前までがコースです。早起きしたり夜更かししたりする自信がないという方には、こちらを見るのもいいかもしれません。追い山笠の日は通常、地下手鉄も臨時列車を運行しているのですが、今年は新型コロナの影響で運転しませんでした。来年は運行してくれることを願いましょう。

超プレミアム!桟敷席の券を頂きました


きむ兄は今回、追い山笠を沿道で見るつもりでスケジュールを立てていました。福岡の友人女性に「中洲流」の人がおりまして、「沿道を走りながら山笠を追いかけていくから、絶対スニーカーで来てね」と言われていました。

ところが、です。前日の14日になって友人側の都合で一緒に沿道走りができなくなってしまいまして、「じゃあ、適当にぷらぷらしながら追い山笠を見ようかな」と思っていたんです。すると、件の友人から「あのさー、親戚が追い山笠に行けなくなってさ、追い山笠の桟敷(さじき)席の券が1枚余ってしまったから、もらってくれない?きむ兄は最初の追い山笠だから、桟敷席で見たほうが絶対いいと思うんよねー」と言ってくれたんです。


後で知るのですが、この券、超プレミアムなものでした。

せっかく頂けるのならと、きむ兄は桟敷席の券を頂き、自宅で仮眠を取って櫛田神社に向かいました。「4時までには必ず御入場下さい」と券に書かれていたので、3時半過ぎに来たのですが、すでにほぼ満席の状態。自由席だったので、後から2番目の席にて、朝4時59分まで待機です。ちなみに、追い山笠が終わった後、録画した追い山笠のテレビ中継を見返したところ、桟敷席は櫛田神社でしか対面販売しておらず、販売してすぐに売り切れるそうです。桟敷席の券を買うべく30時間以上並んだ人もいたそうです。そんなプレミアムチケットを頂けるなんて、幸せ者のきむ兄です。

4時を過ぎてもお客さんが入っており、4時半頃にはこんな感じになっていました。わかりにくいのですが、階段部分にもお客さんが座っていて、もはや下に降りるのがほぼ不可能な状態になっています。この時、お酒を飲まないでいて良かったと心の底から思いました。(お酒を飲むとトイレが近くなるので、多分我慢できなかった)


一歩も動けませんでした

この頃からだんだんと雨脚が強くなってきました。福岡の友人たちに聞くと、「追い山笠の日は雨が多いんよね」とのこと。カッパを持ってこなかったので、いい感じに金髪も濡れていきます。

境内では4時59分に向けたカウントダウンが始まりました。「10分前」のアナウンスが流れた瞬間、櫛田神社の空気が変わります。「5分前」「4分前」と1分刻みのアナウンスが「30秒前」「20秒前」「10秒前」「5秒前!」に。その瞬間。

「おいさっ!おいさっ!」

今年の一番山笠「恵比須流」の櫛田入りです。櫛田入りはタイムレースになっていて、櫛田神社の清道(境内)に山笠を舁き入れて、境内にある旗を回ってから境内を出るまでの時間を競います。競うと言っても、山笠の重さも違うし、舁き手の人数も流ごとに違うので、あくまでも自分たちが納得するタイムを出せるかどうかがポイントのようです。ちなみに、タイム計測は、櫛田入りのほかに約5キロのコースでも競います。

「廻り止め」と呼ばれるゴール地点は、須崎町の石村萬盛堂本店前。お店の前には各流のタイムが書かれています。

一番山笠は毎年持ち回りで、一番山笠には櫛田入りの際、「博多祝い唄(祝いめでた)」を披露します。


引用:山笠ナビYouTubeチャンネルより

祝い唄を聞きながら、きむ兄は涙を流していました。元々山笠は、疫病退散の祈願を起源とした祭りです。それが皮肉にもコロナという疫病に阻まれて、3年も山笠を動かせなかった。それが今回、ようやく山を舁くことができた。その3年分のエネルギーが櫛田神社中にあふれていました。命を懸ける男たちの3年分の想いを受け止めたら、勝手に涙が流れていました。

福岡に来て、一番心が揺さぶられた瞬間でした。

2023年の追い山笠は土曜日!ぜひ博多に来てください!


元々、山笠に関心があって、移住してからは福岡の街が好きになっていたので、他の移住者の皆さんよりは山笠に思い入れがあったからこそ、今回はこのような形で追い山笠を見ることができたと思っております。本当にありがとうございました。

今回、なぜここまで東京の皆さま(特に私の友人たち)に向けて山笠を熱く書いたかというと、実は来年、2023年7月15日は土曜日なのです。ということは、金曜日の仕事をちょっと早く終わらせて、夕方から飛行機に乗れば19時過ぎには福岡空港に着いちゃいます。

そのままホテルにチェックインして仮眠を取って追い山笠を見に行くもよし、中洲や天神の街に繰り出してずっと飲み続けながら、追い山笠を迎えるのもアリです。早めに博多の宿を取って、この迫力ある追い山笠を楽しみましょう!

最後に、現地にいたカメラマンに隠し撮りをされた桟敷席にいるきむ兄を見つけてもらいながら、締めくくりとさせていただきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

著者:きむ兄(木村公洋) (移住系ライター)